岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

母親になって若い社員も
みんな誰かの子どもなのだと思った
だから彼らに全力でぶつかる
覚悟ができました


ひだまりほーむ 株式会社 鷲見製材 経営管理部
鷲見歩美(すみ あゆみ)さん(羽島市)

【2020年8月 3日更新】

京都府宇治市出身の鷲見歩美さんは前職で各務原市に出向していた際、90余年の歴史を持つ鷲見製材の長男である夫に出会って結婚し、入社。インテリアコーディネーターとして従事しましたが、接客スキルが評価されて営業担当に。また職場の仲間、上司からの理解や励ましに支えられて不妊治療に成功し2児を出産し、いま子育て真っ最中ながら会社にとって重要な採用と人づくりを担っています。

結婚が転機となり
価値観が真逆の建築の世界へ

 京都市内の大学を卒業後は東京で暮らし、接客が好きで販売員などをしていましたが、26歳で地元京都のリサイクル会社に就職。当時はリサイクルブームで新店のオープンラッシュが続き、私はその立ち上げ要員として各地に出向し、売上が安定するまでの約2年間、現地に赴任し仕事をしました。
 各務原市に出向した際に主人に出会い、その後松阪市や金沢市での勤務を経て30歳で結婚し、鷲見製材に入社しました。
 仕事を始めて驚いたのはその価値観。リサイクル会社では買取商品がまだ使えても売れなければ結局はゴミになってしまうのですが、鷲見製材では「地域の木を活かし、森を守り、地元職人の技を活かす地域循環型の家づくり」を理念とし、土に帰る木で家を建てて地球や次世代に負の遺産を残さないのも信条としています。この両者の価値観が真逆で衝撃的でした。
 また、身内だからこそ甘えは許されないという厳しさもあり、義理の姉夫婦も本当によく働くので、私たち夫婦もそんな2人を支えるためにも頑張らねば、と思いましたね。

男性も育休を取る時代に
みんなで臨機応変にフォロー

 建築の知識が全くない私はインテリアコーディネーター養成スクールに通い、建築の基礎を学んだ後、培ってきた接客経験を活かす営業職に就き、成約も頂くことができ、仕事は順調でした。しかし望んでいた子どもがなかなか授からず33歳から不妊治療を始めました。私はそのことを社内でオープンにすることにしました。すると休みをいただく際など、みんなが臨機応変に対応してくれるなど、励まして応援してくれました。温かく見守ってもらいながら焦ることなく36歳で長女を授かることができ、産休育休を経て復帰しました。
 また、社内には過去に大病を患った女性スタッフも在職していますが、そのときも「ここが帰る場所だよ」とみんなで支えて病気を克服し、職場復帰を果たしています。もちろん彼女が必要とされる人材であったことも重要ですが、温かな人によって温かな風土の会社が築かれているのは間違いありません。私の子どもたちは現在、小学1年生と幼稚園の年長。子育て真っ最中ですが、急な発熱や子どもの行事など、ほかのスタッフが協力的に対応してくれます。そうした会社の風土に心から感謝しています。
 現在全社員の半数が子育て世代ですがママになってから課長に昇進した社員もいます。また未婚の社員も将来は結婚することもあるでしょうし、男性社員も育休を取る時代になりましたので、その対応や環境整備を逐次進めています。

採用試験から人材育成は
始まるので気が抜けない

 その後、39歳で長男を出産。この間に営業から企画広報を行う経営企画部へ異動を経て、さらに現在の経営管理部に配属され、総務・経理・労務にも携わっていますが、一番責任を感じているのが採用業務です。
 通常業務に加えて夏のインターンの受入れ、新入社員の社保や労務の手続き、大学での企業説明会への参加などを行いますが、正直メチャメチャ忙しいですね。退社までの時間内で仕事をどうこなすか、効率化が大事です。通常業務に別の業務が加わった時の作業の優先順位を決める能力が必要ですね。私の場合、仕事と家庭・家族のことも含めて2週間先までのスケジュールを把握するようにしています。
 採用の基準は会社の理念を共感ではなく、共有できる人。私は企業説明会や面接時などの採用試験もすでに人づくりだと思っています。ですから軸がぶれている学生さんには目的、目標や道すじが見えるように寄り添って対応しますし、人としての成長につながる機会にしなければならないと考えています。実は8年前に不採用を告げた方が「面接で信頼できる会社だったから」と、ひだまりほーむの家のオーナーになったんです!きちんと理念が伝わってご縁がつながったことは感慨深く、やりがいを感じました。

子育ては伸び伸びと
新卒者も我が子に思えるこの頃

 私は子どもに「あなたもいつか社会に出て働くんだよ」、また「ママは電車の運転はできないけど、お家をつくってあげられる」と、仕事について説明しています。働く母親ですから。また子育てのモットーは「伸び伸びと」ですので、壁の落書きや床の傷などを見つけても、怒らず笑って思い出に変えるよう努めています。子どもに幸せに、心豊かに育ってほしいと願い建てた家なのに「あれはダメ、これはダメ」というのは本末転倒かな、と。
 プライベートの時間を捻出することにも長けている方だと思いますが、そのコツはやらないことを決めること。洗濯も2回を1回にすれば、子どもの公園遊びや自転車の練習にもつき合えます。夫も私がいいならいい、と理解をしてくれて、少ない時間でもいましかない子どもとの時間を優先しています。それでも友達や夫と過ごす自分の時間がいつかもう少し増えたらうれしいですね。
 母親になり、変わったことは特に新卒採用者に接するときでしょうか。みんな、それぞれの親が大事に育てた大切なお子様なのだと感じられるようになりました。ですから、きちんと向き合い、全力でぶつからないといけないと思います。彼らのお母さんになった気持ちがするので不思議ですよね。