介護エステケア協会事業、介護人材スキルアップ支援事業、人材派遣事業、居宅介護支援事業など、さまざまな事業を展開するNPO法人ひだまり創。
NPO法人ひだまり創理事長・介護エステケア協会会長の古澤由加里さんは、介護エステケアとケアプラン作成を中心に活動し、子連れ出勤や在宅ワークを取り入れた、母親の働きやすい環境作りにも力を入れています。
子育てとの両立のため転職
経験を活かしたエステケア
私はもともと、エステのインストラクターをしていました。結婚後、夜間帯の顧客が多いエステの仕事では、子育てが難しいと考えて転職を決意。介護エステケアに興味があったことから、デイサービスでの勤務を始めました。
若い人に向けたエステは、「痩せたい」「シミを薄くしたい」など明確な目的がある場合がほとんどですが、介護エステケアは「ハッピーエイジング整容」がテーマです。
加齢による外見的変化を恥ずかしく感じ、人との交流や外出が減ってしまう高齢者も少なくありません。介護エステケアでは、自分の姿を受け入れ、いたわるのが大切。美容というよりは、お話をしながら触れ合って、喜んでもらうという視点です。利用者とのコミュニケーションや、リハビリ意欲向上のきっかけ作りにも使われています。手や足もケアし、心身ともに健康な状態になってもらえるように努めます。
創業で介護エステケアを広める
作家応援のマルシェも実施
デイサービスで約5年間経験を積み、2016年に小顔&リストアップサロン「ゆかり」と、シニアエステ「有かり」を創業。「ゆかり」内にお母ちゃん応援スペース「ザッカya」を作り、子育てをしながら創作活動をする作家と、作品に込めた思いを紹介しました。アマチュア作家応援のために、作品の販売委託や出店のための用品貸出が無料の多世代交流マルシェチャレンジ市も実施しています。
同年9月に、介護エステケア協会を設立。高齢者の肌は弱い刺激でも皮下出血が起きやすいので、短い時間で気持ちよさを感じてもらうためには知識と技術が重要です。セラピスト養成講座の開講や、プロエステケアセラピストの認定で徐々に仲間を増やし、現在は4
カ所に支部があります。
11月には5年以上の実務経験があると受験できる、介護支援専門員(ケアマネージャー)の資格を取得。介護エステケアを含めたケアプランの作成に取り組んでいます。
働き手と利用者を笑顔にする
サポートプランを考える
2017年にはNPO法人ハッピー人材サポーターを設立。介護エステだけでなく、人材派遣会社と協力した就労支援も実施しました。出産、育児をして切実に感じたのは、自分と同じ世代の母親は働きたがっているということです。介護業界は人手不足。求人があって、働きたい人がいるのにマッチングできないのが残念で、それを解消したいと考えました。
当時幼い子どもがいた3人の従業員で1組のチームとなり、1人が子どもを見て、残りの2人が介護をするという制度を作りました。子どもを連れて仕事ができるのはもちろんですが、同じ環境の仲間がいて、悩みを共有・相談できるので、安心して仕事に取り組めます。
2018年にひだまり創と合併してNPO法人ひだまり創に。9月にケアマネージャー事務所、ケアプランセンターひだまり創を開設しました。2020年1月からケアマネージャーを徐々に増やし、提案力を高めていきたいと思います。
団塊の世代や、その次の世代が高齢者になれば、介護保険は今の形態では継続できません。保険外の内容も組み合わせたサポートを、どれだけ手ごろな金額で提供できるか。利用者も、働き手も笑顔でいられるプランを考えていきたいです。
在宅ワークを取り入れ
時間のロスを防ぐ
子どもを見ながら仕事ができる在宅ワークを取り入れたのは2019年、第2子を出産した後です。会社の時間に合わせると、送迎や学校行事との調整が難しく、時間のロスが生まれてしまいます。家事の合間に仕事を進められる働き方で、ロスを解消。さらに、利用者との面談でも、子どもを連れていくことで、利用者の緊張がほぐれるメリットがあります。
子育てをしながら可能な業務量を自分で調整できるように、受け持つ利用者数で給料を決める制度を作りました。業務量にも収入にも、不安なく働いてもらうためです。
意識しているのは、「やれるときに、やれるだけやっておく」こと。在宅ワーク1年目は業務と家事のバランスをうまく保てず、仕事が溜まってしまいました。現在は、夫が子どもを見られる休日に集中して事務作業をするなど、自分のペースを確立しています。車での移動が多いので、車内でコーヒーを飲むのが息抜きです。
子どもが成長したら、ケアマネージャーの勉強ができる東京の大学院で学びたいと考えています。若い世代が働きやすく、利用者にも快適な仕組み作りに生かしたいです。
出産、育児で仕事から離れてしばらく経つと、「もう一度働けるのか」と不安に感じる人がほとんどです。でも、実は家事の方が大変だと私は感じています。家事をこなす能力があれば、どこででも働けるはず。少しでも不安が解消できるように、今後もサポートを続けていきます。