岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

あたり前の生活こそが
幸せな生き方につながっていき
皆が暮らしやすい社会を作る
先人たちの習慣、知恵、作法から
その手がかりを学んでいきたい


一般社団法人ひろがるいえ 代表理事・あたり前生活研究家
眞﨑由宇(まざき ゆう)さん(岐阜市)

【2020年10月13日更新】

先人たちの習慣、知恵、作法などを日本文化から学んで「衣食住」に取り入れ、実践し、広めていくために、一般社団法人を設立して精力的に活動する眞﨑由宇さん。「衣」では天然素材でできた衣服の展示会、「食」では安全なお菓子の開発・販売など、数多くの活動を行っています。
一人ひとりが日常生活の質を向上させることで、「誰もがあたり前に助け合える社会」づくりをめざします。

日本人だからこそ日本文化
学ぶのは作法ではなく心

 日本文化にこだわるのは、自分が日本人だから。古来、日本という風土に根ざして発展してきた日本文化には、私たちがこの国でより豊かに生きていく智慧がたくさん散りばめられています。学ぶのは日本文化の形式ではなく、その奥にある「心」です。例えば食べるときに「いただきます」というのは、作法だからするのではありません。作ってくれた人や、食材にたずさわる人、さらには食材そのものに対する感謝の心が、手を合わせるという仕草となり、「いただきます」という言葉になるのです。

「衣食住」それぞれの分野に
こだわりの心を込める

 現在、衣服は驚くほど低価格で売られ、驚くほど短期間で使い捨てられていきます。それはとても悲しいと思います。大切に育てられた素材で、心を込めて丁寧に作られた衣類であれば、簡単には使い捨てられないでしょうし、決して使い捨てるべきではないでしょう。ひろがるいえで扱っている「うさとの服」は、天然素材で手つむぎ、草木染め、手織りで作られています。
 食の分野では、白砂糖・小麦粉不使用の無添加グラノーラや野草おやつバーなど、健康を考えて開発した商品を販売しています。また、老若男女問わず、食に対する興味喚起や自立支援のために「お料理教室」の企画もしています。
 「衣食住」の「住」は、「住居」という意味ももちろんありますが、わたしたちは「生活すること全般」をイメージしています。年中行事に込められた本来の意味を考え、先人から伝わるやり方を、できる範囲で再現し、実践していくことに意義を感じています。実践の場として「こよみあそびの会」などを企画しています。

ひろがるいえの根幹
そもそものきっかけ

 きっかけとなったのは、発達障がいがある長男の一言。「お母さんたちはいいね、ぼくたち障がい者はお母さんたちみたいに好きなことを仕事にするなんてできーへん」と淡々と話すその言葉に、わたしは雷に打たれたようにショックを感じました。確かに高校卒業後、いろいろな職を転々としました。でも、縁あって安定した職に出会い、息子なりに充実した日々を送っていると、私は勝手に思い込んでいたのです。
「幸せとは何か」「必要とされ、自分で考え自分で選び、決める」そして「喜びの中で生きる」こんなごく普通の日常が基本だと考えさせられました。すぐさま仕事を辞めさせ、旅行に行ったり、ゆったりとした時間を一緒に過ごしたりしました。
 息子は以前から、レシピ本を見て菓子作りをしていたので「やりたい仕事を見つけるまでの休憩」という気持ちで作った菓子を配り始めました。当初は頼まれたら焼いて渡すというスタイルでしたが、「ちゃんと世に出した方がいい」とアドバイスをもらい、工房を立ち上げました。2018年には、これまでやってきた様々な活動を集約させ、「一般社団法人ひろがるいえ」を設立。その後、「しあわせおやつ工房ひろがる」の実店舗を構えるに至りました。

家庭の基本が社会の基本に
居場所を作り、文化を繋げる

 大切なのは、日常生活の質向上です。たまに特別なことをしても、それは非日常でしかありません。質の高い日常を「あたり前」にできれば、幸せに暮らしていけると思います。
 一人ひとりの幸せが集まって、社会全体がより良くなっていく。それがわたしたちの理想です。そうした理想を実現していく発信源になれれば幸いです。
 今後は、古民家を活用したカフェの開設も考えています。知的障がいのある子は、どうしてもできることが限られてきます。学校を卒業してしまうと、自分を表現できる、遊べる場所が少なくなります。誰かの家だと気兼ねしてしまうので、みんながオープンに来店できる場所が必要。畑など人の営みが見える場所で、昔の人が生活の中で自然に伝えたように「手を合わせる」「靴をそろえる」といった作法の心を伝えていきたいです。