岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

障がいがある子の親という立場だからこそ
障がいがある人やその家族に
安心してすごせる場を作り
できる限り支えていきたい


特定非営利活動法人くわのみ理事
山邉智子(やまべ ともこ)さん(恵那市)

【2020年10月13日更新】

1969年より、小学校や中学校、養護学校(現特別支援学校)で教師として務めてきた山邉智子さん。NPO法人くわのみの理事として、さまざまな活動に携わっています。「恵那市障がい者の生活を豊かにする会」、放課後等デイサービス「りんごクラブ」、ふれあいホーム「こぶし」などを設立。障がいのある人とその家族の、日常生活サポートに力を入れています。

障がいがある子どもの
親としてできること

 私の子どもも障がいがあります。教員時代に、障害がある小中学生の将来を考える「恵那市障がい者の生活を豊かにする会」を設立しました。学校の生活で不便なところなどを、保護者と話し合い、改善に向けて取り組む会です。2000年、夫の父親の介護で教員を辞めましたが、しばらくの介護生活の後、2007年、恵那市発達相談の相談員に。しかし、話を聞いてアドバイスするだけでは駄目だ、実際に活動できる「場」が必要だと感じ、やめました。
 その後、2010年「障がい青年の余暇活動」を開始しました。作業所と家との往復で生活に潤いを失いがちになっている障がい青年が集い、レクリエーションを中心に、フリスビーやボーリングなどのスポーツや旅行、絵画、料理、餅つきなどのイベントを月1回行っています。
 さらに障がいがある子と母親の心中事件を機に、 2012年にレストハウス「みんなの部屋」を始めました。負のスパイラルに陥る前に、「もっと話ができる場所」や「つながり」があれば、との思いから立ち上げた場所です。第1土曜日、障害のある人もない人も、気楽に立ち寄れるサロンとして、今も続いています。

自分の考えが形になり
新しく意義ある場となる

 2012年には、特別支援学校が休みの期間、子どもを見てくれる人がいない、預ける先に困っている、といった声から試験的に恵那市中公民館の和室を借りて「夏休み障がい児学童保育」を10日間実施しました。「こども元気プラザ」へ出かけプール遊びをしたり、お昼寝をしたり。それぞれの子どものプロフィールや障がいの内容などを記したサポートブックを作り、ボランティアスタッフが対応しました。
 このことが、2018年に立ち上がった障がいのある子どもの放課後デイサービス「りんごクラブ」につながっています。「手厚く支えていこう」との思いから、小学校1年生から高校3年生までの、障がいがある子どもたちに、6~7人のスタッフがサポートしています。
 この仕事の魅力は、新しく意義ある場を作り出せること。ゼロから一つひとつ、自分の考えが形になり、目にみえるものとして現実に立ち上がっていくところが醍醐味です。

好きなことを
好きなようにやってきた

 現在は夫と息子の3人暮らし。娘2人は嫁ぎ、猫が家出中です。夫は元教員で校長でしたが、現職中から「どうぞ、好きにやってちょうだい」というタイプ。思い返すと、好きなことを好きなようにしてきた夫婦でした。今では夫も、私の帰りが遅い時は食事の用意をしたり、子どもの送迎などもしてくれています。
 公私両立しているというよりも、プライベートが直接、公につながっています。障がいがある我が子のためにも、積極的に公と関わっていかざるを得なかった、という方が正確かもしれません。
 趣味は、スポーツジムで水泳やウオーキングをすることです。レストハウス「みんなの部屋」に毎回、パンを焼いて持っていきますが、それも趣味の1つです。12月には、シュトレーンを焼きました。

障がいのある人が
安心してすごせる場を

 2017年には、ふれあいホーム「こぶし」がスタートしました。とにかく資金がなかったのでフローリングも知り合いに張ってもらったり、病院の払い下げやエコセンターに通い、机や棚、ストーブや冷蔵庫を揃えました。
 ここは週2回、夕方から障がいのある青年が自立に向けて食事づくりなどを仲間とともに学ぶ場です。家では包丁が危ないと挑戦させてもらえないようですが、自分でご飯を作って食べられることは必要不可欠ですから。さらに月に1回、宿泊訓練も実施しています。
 また「青年の会」では、音楽の先生に協力してもらい、楽団「きらきら星」を結成。トーンチャイムという楽器を練習し、頑張っている姿をみてもらえるよう、年1回文化センターロビーでコンサートも行なっています。
 障がいがある子どもの保護者には、こうして安心して通える場は必須です。ですが近々、道路の拡張で「こぶし」の立て壊しが決まっています。よろこんで通ってくれている人たちを、がっかりさせないよう、次なる場所をみつけなければなりません。
 持ち出しも多いし、身体も疲れる。でもこういうことに関わることが好きなんですよね。人とのつながりを大切にしてきたら、ありがたいことに「山邉さんが、はじめたことだから手伝うわ」といってくれる人が、たくさんいます。
 子どもたちが安心して生きていける場づくりは、くわのみだけでなく、地域やもっと大きくいえば国の問題です。「恵那市障がい者の生活を豊かにする会」をふくめ、どうやって後継者を作っていくかも課題ですね。