岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

高山で生きる外国人も暮らしやすい
真の国際都市になるように
さまざまな活動に全力で取り組む
大変だけど、好きだからがんばれる


岐阜県多文化共生推進員・高山市風土記の丘学習センター 学芸員
糸田恵子(いとだ けいこ)さん(高山市)

【2020年10月13日更新】

日本語の指導をはじめ、暮らし方を教えたり、相談に乗ったりすることで、定住生活している外国人の生活支援を続けている岐阜県多文化共生推進員の糸田恵子さん。それだけでなく、高山市風土記の丘学習センターの学芸員や、ボランティア団体アニマルレスキュー飛騨の副会長として、多忙な日々を送っています。

教員、司書、学芸員と
さまざまな職場を経験

 私は東京都八王子市生まれ。小学1年生の時、高山市に引っ越し、斐太高校を卒業しました。京都が好きだったので、京都府立大学文学部に進学。中国文学を専攻し、和漢比較文学を研究しました。
 大学時に中学高校の国語の教員免許、図書館司書、学芸員の資格を取得していたので、卒業後はそうした資格を生かした仕事をしてきました。最初は両親との約束を守って高山市に帰り、市の文化財課で発掘調査員補助をしていました。1年ほど勤めた後、京都に戻って高校の国語教師として勤務。ただ、なりたかったのは図書館司書だったので、3年間で辞め、花園大学の図書館司書として1年勤め、滋賀県の琵琶湖博物館の図書室の司書にもなりました。いろいろな職場で働いてきて32歳で病気退職。次は何をしようか考え、国語教員の経験と中国語を学んだ経験を活かし、日本語教師を目指すことにしました。

日本語教師になりたいと
もう一度学校へ

 東京にある語学学校の付属教員養成学校に通い、日本語教師の検定試験に合格。海外で教えることも考えましたが、結局、結婚することを選びました。高山に戻り主人と結婚。そして、高山市役所に日本語教室がないか電話すると、ちょうど始めるところだったそうで、渡りに船でした。ただ、日本語講座は週に1日か2日しかなく、同時に高山市文化財課の仕事もいろいろとしました。資料の調査や古文書の整理などです。あと、10年ほど前から子ども向けの日本語講座や小中学校の日本語支援委員、高校の外国人適応支援委員もしてきました。

外国人が暮らしやすい
真の国際都市を目指して

 現在、日本語講座は毎週月曜日に実施。大人向けと子ども向けの入門クラスと、大人向けの初級クラスの計3クラスを受け持っています。講座は10人以下の少人数で行っています。
 日本語講座の目的は日本語の習得。しかし、それ以外に日本での生活の相談にのるのも重要だと考えています。講座に通う人の多くは日本語を話せず、自分のしたいことや思いが伝わらなくて困っています。それだけでなく、困っていることについて、愚痴をこぼす相手もいないんです。国際結婚をした人のなかには、家族ですらコミュニケーションが取れない時がある。それって悲しいですよね。そのため、講座を社会への入り口と考え、地域に溶け込めるように相談にのっています。
 市内の小中学校で外国人の子供の支援を始めたのは、日本の学校に入って日本語が分からず困っている子供の力になりたかったからです。海外から日本に来たばかりの子どもは、最初は学校に馴染もうと一生懸命過ごしていますが、だいたい半年で気分が下がってきます。そんな子どもが、なんとか乗り越えて日本語での生活に慣れ、楽しく学校に通ってほしいと願っています。
 そうした講座を長年続けてきて今では、来日した当時はまったく日本語が話せなかった人が幸せそうに過ごしている姿を見かけたり、「先生」と声をかけてくれたりします。ただ、なかには講座に通っていても、日本に馴染めずに帰国してしまう人もいます。1対多人数の講座には限界があり、本音をいうと最初は1対1で教えたいです。ボランティアで教えに来てくれる人もいますし、習熟度に合わせて一人ずつ教材を変えるなど工夫も凝らしています。地域で生活している外国人と関わることに興味をもつ日本人がもっと増えてくれるといいですね。
 高山市は毎年海外から多くの観光客が訪れる国際都市です。しかし、住んでいる外国人が幸せであってこそ、真の国際都市といえるのではないでしょうか。現在、岐阜県多文化共生推進員として交流イベントを開くなどの活動をしており、国際交流に興味を持ってもらえるよう力を尽くしています。

仕事に社会活動、趣味
多忙な日々を支える家族の存在

 ほかに、プライベートでの活動もあります。まずは動物愛護活動。アニマルレスキュー飛騨の副会長として、保護猫を預かったり、地域猫活動をしたりしています。この活動の目標は、「人にも動物にも優しいまち、飛騨高山」。ペットを飼い始めた人は、命を終えるまで愛情を注ぎ共に暮らす責任があります。そういう責任感を持った人が増えるようにしたい。また、野良猫に避妊去勢手術を行い、これ以上不幸な命が増えないようにする地域猫活動を広めたいと考えています。
 もう一つは趣味の活動ですが、学生時代からクラシックギターを続けており、高山市でもサークルに入って、年に1回発表会を開いています。長い経験を持つ人から大人になって憧れだったギターに挑戦という人など、レベルは様々ですが、みんなで曲を作り上げる合奏はとても楽しいです。
 仕事、趣味などで、本当に多忙な日々です。そんな日常を支えてくれるのが家族の存在。どの活動も家族の理解がないと続けてこられませんでした。まず夫が炊事や洗濯、高校2年生と中学1年生の娘二人の送迎など、なんでも進んで加わってくれます。日本語講座を開いているため、外国人の子どもがしょっちゅう家に来ますが、娘二人は誰が来ても平気で、「いつでも来て」と一緒に遊んでくれるんです。さらに、家族が全員動物好きですので、アニマルレスキュー飛騨の活動で預かっている猫の面倒を見ることも積極的に手伝ってくれるんです。
 家族に助けられながら、それでも大変な活動ばかり。ですが、嫌だと思ったことはありません。好きだからこそ、がんばれる。だからこそ、これからも全力でさまざまな活動に力を注いでいきます。