岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

方法はいくらでもある
そう思うことで
前向きに考えられるし
いっぱい工夫もできる


橋本行政書士事務所 代表
橋本あみる(はしもと あみる)さん(中津川市)

【2021年8月12日更新】

出身地である中津川市川上に行政書士事務所を開業した、橋本あみるさん。地域のために働きたいと、「自然と田舎を楽しむ」をテーマとし、野菜販売やワークショップなどを行う「Kmarché(ケーマルシェ)」を企画して、地元、川上の良さをみんなで共有しようと努めてきました。昨年5月には中津川市の教育委員に任命され、教育行政にも携わっています。

人の役に立つ仕事がしたいと行政書士の資格を取得

 小さい頃は警察官になりたいと思っていましたが、中学校で英語を習って、日本人以外のいろんな国の人と話せたらすごく楽しいだろうと、何か国際的な仕事ができればと考えるようになり、高校のときに留学しました。
 英語圏は人気が高くて、第2志望のスペインに行きました。留学先はスペインのバスク地方で、政治的な問題を抱えてきた場所です。同世代の子たちが政治について語り合い、国の未来をどうしたいかと熱く議論を交わす中、「日本はどうなの?」と聞かれたとき、何も答えられない自分がいました。
 言語はただのツールに過ぎなく、それを目的にすべきではないと、立命館大学に進学して政治行政を専攻しました。漠然と、地元に戻ろうとは思っており、地域の人たちの役に立つことができる仕事をしたくて、行政書士を目指したのです。
 実は「田舎の人たちはすごく困っているに違いない」「おじいちゃんやおばあちゃんたちを助けてあげないと」と、当時は頭でっかちに考えていました。ですから自分を駆り立てるように勉強して、資格を取得しました。
 京都の行政書士事務所で勤務した後、中津川市で開業しましたが、実際は幸いにもだれも大きなトラブルなどに巻き込まれていませんでした。

依頼は多岐にわたるので苦労もあるが、やりがいも多い

 行政書士の業務範囲は広いですが、農地転用、営農組織の法人化、建設業許可、相続手続きなど、田舎ならではの案件がメインとなっています。開業して10年。クーリングオフや離婚協議などの民事のトラブルよりも、新居を建てたい、新しく仕事を始めたい、というお客様のお手伝いが多いです。実現へのレールを敷いて、お客様の希望を叶えられたときはやりがいを感じます。
 一方、持ち込まれる困り事はさまざまで、パターン化できません。ときには何から手を付ければ良いのか、わからないことも。ひとりなので、どの方針で行くか決断に迷う場合もあって、苦労します。パワーも必要です。
 でも、地域のために働ける行政書士という仕事は、自分のライフワークだと思っています。しんどいし辛いけれども、辞めたくないです。

子どもが小さい頃は仕事と育児の両立に苦労した

 仕事柄、申請のために役所の窓口へよく行きます。子どもが小さいときは、おんぶして出かけたこともありました。申請中、子どもが泣き出してしまい、困っていたところ「子どもを見ていてあげる」と近くにいた方が言葉をかけてくれました。今でも感謝の気持ちでいっぱいです。仕事なのに子どもを連れているのが負い目でした。そういうのを受け入れてもらえたのはすごく励みになりました。地元の良さに触れた体験でした。
 なぜ市街地で開業しなかったのかと時折聞かれますが、理由は子どもが学校から帰ってきたときに家にいてあげたいし、何かあったときにはすぐに学校や保育園に駆けつけてあげたかったからです。仕事のために、子どもを犠牲にしたくないという思いを強く持っていました。
 現在は私の両親と夫、ふたりの息子(中1と小4)の6人暮らしです。子どもの成長に合わせて、少しずつ仕事の幅を広げてきました。少しずつ子どもたちも手が離れ、地域づくりの活動など、一緒にできることは協力してもらっています。
 土、日曜日はちゃんと休むように心がけ、子どものことをしたり、畑の世話をしたりしていると仕事を忘れます。いい息抜きになっていると思います。

地域のために働き始めたばかり これからも続けていきたい

 田舎を少し引け目に感じていましたが、今はすごく良いところだと思っています。自然が豊富で住みやすく、都会でなくても、ここで何不自由なく豊かに暮らしていけます。
 川上に住んでいるみんなも同じように田舎を楽しみ、誇りに思ってもらえるといいな、と考えたものの、どうすればいいのかわかりませんでした。とりあえず地元にあるものを活かして何かできないかと、2017年に「Kmarché(ケーマルシェ)」を起ち上げました。
 その年の「夕森もみじまつり」において、自然や田舎を楽しむイベントをいろいろと企画したのです。ママ友にも声をかけると、「川上のためなら」と賛同し、多くの人たちが手伝ってくれました。翌年以降もまつりに参加出店をして、野菜販売のほか、注連縄づくりをはじめとする工作や自然体験のワークショップなどを開いています。
 私自身、夢は叶っている状態だと思います。行政書士にもなれたし、家族もみんな健康で過ごせているし、微力ながらも地域のために働き始められてもいます。今目標を掲げるとしたら、これを続けていくことです。