岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

地域の子どもたちに
デジタルやテクノロジーの
楽しさを知ってもらおうと
新しい学びの機会を提供


holidaypark ROASTWORKS ウェブデザイナー
原房枝(はら ふさえ)さん(中津川市)

【2021年8月13日更新】

東京から家族で中津川市に移住してきた原房枝さんは、フリーランスのウェブデザイナーです。自身の仕事場を兼ねたコワーキングスペースの運営もしています。「ODEKO(オデコ)おとなとこどもをつなぐデジタルエデュケーション」という団体を設立し、ワークショップなどを開き、子どもたちにデジタルの楽しさを伝える活動も行っています。

中津川市の古民家を改修してカフェとコワーキングスペースを開業

 東京都内の制作会社でウェブデザイナーをしていました。その会社でフロントエンジニアをしていた夫と出会い、結婚しました。出産後に離職し、フリーランスとして働いていましたが、子どものことや今後を見据えて、夫の出身地である中津川市への移住を決めたのです。上の子が小学校に上がるタイミングで、引っ越して来ました。
 ウェブの仕事はこちらでも続けられますが、気になったのが家の中にずっといること。私は東京生まれ東京育ちで、周囲に人の流れがある生活が自然でした。ですから人に会うこともなく、黙々とひとり仕事をするのは耐えられないだろうと思ったのです。
 そこで東京時代に利用していた「コワーキングオフィス」を中津川に開こうと考えました。自分ひとりで仕事をしているより、誰かがやって来て作業し、ちょっとおしゃべりをして帰れるような場所にすれば、もしかしたら良い繋がりも生まれるかな、と。
 ご縁があって、中津川宿の街並みにある長屋の一角を借りることができました。いつの間にか珈琲教室に通い、焙煎を専門的に学び始めていた夫も、この店舗でカフェをやってみたいという話になりました。1階をカフェにして、2階でコワーキングのオフィスをやったら、美味しいコーヒーも飲める仕事環境ができて最高だね、と古民家の改修を始めたのが一昨年です。「holidaypark ROASTWORKS」のオープン後は、コワーキングの運営をしながら、リモートで自分の仕事をしています。

デジタルに触れる機会が少ない地域 子ども向けのワークショップを

 都会に比べると、この地域では子どもがデジタルに触れる機会は決して多くありません。私はウェブ系の仕事をしていて、比較的テクノロジーに近い大人なので、移住に際してそのことが気になっていました。ちょうど、小学校でプログラミング教育が必修になるというニュースが出た時期でもありました。
 地域の子どもたちにデジタルの面白さを伝えたいと思ったものの、指導経験がなかったので、移住前に東京の「CANVAS」というNPO法人のボランティアに参加し、子ども向けワークショップのノウハウを勉強しました。そして中津川で有志を募り、「テクノロジーにワクワクしよう」をテーマに掲げて「ODEKO(オデコ)」を起ち上げました。名前には「大人(O)とこども(KO)の真ん中を、デジタル(DE)でつなぐ」という意味を込めました。プログラミングでドローンを操縦したり、工作とプログラミングを掛け合わせるような内容のワークショップを、地域の小学校や子ども教室で開催しています。
 参加した子どもたちの反応から、毎回新たな発見があります。保護者さんから「この子はこれまで何かに打ち込むことがありませんでしたが、新たな一面を見ました」という感想をいただいたこともあります。学校では体験できないことや、世の中的にも新しいことをコンセプトに教材を考えているので、参加した子どもたちが何かしら刺激を受けてくれているのがとても興味深いです。

都会からの移住で心配もあったが子どもたちは毎日楽しそう

 土日はカフェの営業を主人に任せ、私は子どもたちと遊んでいます。子どもは2人で、上が小3の男の子で、下が年長の女の子です。中津川への移住で、大きく環境が変わることに心配していましたけれど、子どもたちはすごくのびのびと過ごしています。
 上の子は内気な性格ですが、小学校も少人数で穏やかなので、楽しそうに通学しています。下の子は都会では頻繁に耳鼻科通いをしていたのが、空気が良いせいか、こちらではピタリと症状が治まりました。私もデザインの仕事はこれまでと変わりませんが、気分転換に外に出たとき、目の前に美しい山が見える環境は幸せだなと感じています。
 以前は、仕事などでピリピリしたり、怒ったりしていました。最近はあまり自分の気持ちに執着しないよう心がけています。負のイメージや感情を忘れ、手放すような思考になったので、都会暮らしに執着せず、こちらに移住できたのかもしれないです。

子どもたちがもっとデジタルに親しめる環境作りを目指して

 中津川はフリーランスが少ない地域だと思いますが、コワーキングの利用者も徐々に増えてきました。地元で積極的に活動している人や都会から移住してきた人など、出会いや繋がりも生まれています。holidaypark ROASTWORKSは引き続き、人と人が繋がれる場所、地域の交流点にしていきたいです。
 「ODEKO」の活動としては、これまでは小学生にデジタルの「最初の一歩」を伝えていましたが、さらに進んだ内容を教えたり、中・高校生にも対象を広げていきたいです。将来的に、デジタルやテクノロジーを臆せず使える人材が地域に増え、未来の選択肢が広がっていけると良いなと思っています。
 個人的には、地域課題とITを掛け合わせるようなプロジェクトもやってみたいです。例えば義父も農業をしていますが、獣害は身近な問題なので、子どもたちと一緒に獣害対策のための監視カメラを作ったり。そういった、地域に以前からある課題を「テクノロジー」と「発想力」で解決するようなプロジェクトなどに興味があります。