岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

笑顔と出会いを大切に。
これまで出会った人たち、
これから出会う人たちを
家族のように思えるように


サックス奏者
松岡千華(まつおか ちか)さん(美濃加茂市)

【2021年8月17日更新】

美濃加茂市を拠点に演奏活動をする、サックス奏者の松岡千華さん。楽器の演奏体験を盛り込んだワークショップ兼ライブを開催するなど、多くの人たちに音楽の楽しさを伝えています。適応指導教室のメンタルフレンドとして、さまざまな理由によって登校できない子どもたちの支援にも取り組んでいます。

吹奏楽部でサックスに出会う
大学ではジャズの勉強も

 母がヤマハのピアノ講師で、私は3歳からピアノをやっています。とにかく音楽と体を動かすことが大好きでした。
中学校では吹奏楽部に入りました。入部したての頃、3年生の先輩が壁にもたれてサックスを吹いている姿を見て、もう一目惚れでした。楽器を決める際、猛アピールをしてサックスの担当になりました。
 多治見西高等学校の音楽科に進学しましたが、管楽器のコースがなくて、声楽科専攻で歌とピアノを学んでいました。小学校時代には合唱団に所属していて、歌うことは好きでしたが、サックスを吹きたいという気持ちが強くなり、名古屋へ月2回、レッスンに通っていました。
 名古屋音楽大学に入った当初は、辛い日々が続きました。中学までしか吹奏楽をやっていなかったので、カルテットもアンサンブルも数えるほどしかやったことがありません。初めて聞くサックスの曲も多く、戸惑いました。
 先生に悩みを打ち明けたところ、「歌って楽器が吹けるという他のみんなにはない力を持っているのだから、そこで勝負しなさい」と言われて、少し自信がつきました。
 4年生のときにジャズ科ができて、洋楽が好きだったので、ジャズの勉強も始めました。クラシックはしっかり音符を追い、1音間違えるだけで叱られます。ところがジャズには遊びがあって、先生から「そんなにかしこまって吹かなくていいよ」と言葉をかけてもらい、肩の力が抜けて、よりサックスが楽しくなりました。

留学よりも家族になることを選択
音楽には助けられてきた

 卒業後は留学を目指していました。留学資金を貯めるため、1年間だけ、美濃加茂市の双葉中学校の支援員として働くことにしたのです。そこで今の夫と出会い、夫と家族になることを選びました。
 2人目の子どもが生まれたときに、父が脳出血で倒れました。しばらく育児と介護で私自身も一杯一杯で、サックスを吹く気力もありませんでした。それでも周りの人たちが演奏してほしいと声を掛けてくださり、次第に元気を取り戻せたのです。サックスを吹くことが気分転換や息抜きもなり、音楽にはすごく助けられてきたと思います。
 3人目が生まれた2年後に、父が亡くなりました。父が一生懸命働いて買ってくれたサックスをずっと吹き続け、聴いた人々が元気になったり、幸せな気分になってもらえたらいいな、と思いつつ演奏に臨んでいます。

奏者と母親どちらの自分も楽しむ
家族は私にとっての癒し

 夫と娘3人(小6、小3、小1)の5人暮らしでしたが、新たに犬が加わり家族が増えました。
 子どもたちはピアノをやっていて、長女はサックス、次女はトランペットを始めました。夫はギターを弾きます。私にとって家族は癒しです。一番の味方で、一番のファンだと言ってくれます。
 奏者としての自分と母親としての自分どちらも楽しんで毎日を過ごしています。ライブ終了後にはテンションが上がってしまいますが、帰宅すると自然と母親の顔になります。
 趣味は、家庭菜園です。水やりと収穫は子どもたちの役目で、親子で楽しく取り組んでいます。

音楽に触れられる機会や場を
地域の中に作っていきたい

 普段は週に2回、美濃加茂市の「あじさい教室」という適応指導教室で、メンタルフレンドをしています。心に傷や悩みを抱えている子のケアなので、少しでも気持ちに寄り添ってあげられるよう、その日その日の顔つきや体調に気を遣って接しています。
 先日、私のバンドを初めて連れて行き、演奏したのですが、子どもたちはサックス奏者としての私の姿を見たことがなく、私にそっと近寄ってきて「かっこよかったよ」「すごいね」と声をかけてくれました。人とのコミュニケーションが苦手な子どもたちですが、バンドのメンバーに質問をしたり、積極的に太鼓を叩いたりするのを間近で見ることができ、音楽の力はすごいなぁと感じました。
 大学時代の先生に、「演奏家として活動していくのなら、地元を大事にしなさい」と教えを受けました。これまでも美濃加茂市内で演奏体験のワークショップを兼ねたライブを開くなど、地域密着型で演奏活動をやってきました。地域には音楽を聞く場や機会がまだまだ少ないので、身近に音楽に触れられる環境作りをしていきたいと思っています。