岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

完成品の研究や専門書の活用など
試行錯誤して技術を身に着け
移住先の多治見市で
サンドブラストを活用した
ガラス工房を開設


ガラス工房Tutti【ルビ/トゥッティ】 代表
長谷川渚(はせがわ なぎさ)さん(多治見市)

【2021年8月25日更新】

未経験ながら企業のサンドブラスト部門を1人で担い、独学で技術を身に着けた長谷川渚さん。
結婚を機に多治見市に移住し、「自分の居場所を作りたい」と、行政の支援を活用しながら、ガラス工房Tuttiを立ち上げました。
家事・育児と忙しい中でも、集中する時間を確保し、受け取った人が幸せになれる作品制作に取り組んでいます。

サンドブラストの技術を独学で身に付ける

 サンドブラストに出会ったのは、15年ほど前です。出身地である京都の会社から「サンドブラストの仕事をしないか」と声をかけてもらいました。未経験でしたが、もともと絵を描いたりものを作ったりするのが好きだったので就職。サンドブラスト部門を1人で担いました。教室は同業者お断りの場合が多く、受講できなかったので、本を読んだり、作品を買って研究したりと、ほとんど独学で技術を身に付けました。
 サンドブラストとは、ガラスに砂を吹き付けて絵や文字を施す技法です。当初はボトルにメッセージを彫ったり、試験管のメモリを打ったりという作業でしたが、オーナーに許可をもらい、オリジナル作品制作にも取り組みました。魅了されたのは色ガラス。サンドブラストでも色を付けられるとわかって、作品に反映させました。

市の支援を活用しガラス工房を開設

 結婚を機に多治見市に移住。せっかく身に付けた技術を無駄にしたくないという思いがあり、サンドブラスト部門を引き継ぐ人もいなかったので、会社に残っていたガラスなどの素材はすべて買い取りました。機材は持っていなかったので、子どもを連れて京都へ行って、会社の工房を借りて制作。持ち帰ってマルシェに出品していました。
 知り合いのいない地域での生活をなかなか楽しめず、「自分の居場所を作りたい」と、多治見市のあなたの「夢」実現セミナーを受講しました。そこで出会ったのが、BIのマネージャーです。安価で借りられる多治見市産業文化センターの起業支援ルームを紹介してもらい、子どもを連れての作業をできると聞いて入居を決めました。半年ほどの審査期間があり、約2年前にガラス工房Tuttiを開業しました。当時は3歳と1歳半だった子どもと一緒に出勤し、制作に励みました。「子どもが小さいこの時期に起業していいのか」と悩みましたが、夫が背中を押してくれて、踏み切ることができました。

多治見市での仲間が増え事業の幅が広がる

 多治見市産業支援センターには、たくさんの人が出入りします。地域の人との繋がりが広がり、街で声をかけてもらう機会も増えました。他の入居者とコラボ企画を立ち上げたり、起業の先輩や企業診断士からアドバイスをもらったりする中で、気づきもありました。
 最初のころはどれだけいいものを作っても、なかなか買ってもらえませんでした。続けるかどうか悩んだ時期もあります。しかし、SNSなどでの発信方法を変えると、一気に反応が増えたんです。変更前は作品を掲載するばかり。自分の思いだけが先行していました。アドバイスを反映して制作風景などの裏側も掲載。「どんな人がどのように作っているか」を紹介することで、親近感を持ってもらえるようになったと思います。
 現在は注文数が多いので、9時から16時半まで作業し、自宅で家事を済ませてから、夜は工房に戻ってまた制作をしています。家族との時間を大切にするため、土日は休みと決めています。息抜きは家事をしながらの映画鑑賞。ながら作業で趣味の時間を捻出しています。

最大限希望に応じて喜んでもらえる作品を

 作品の販売だけでなく、オーダーメイドにも対応。展示会にも参加しています。注文制作では「できません」といわないのがモットー。オリジナル作品では花や動物などの柔らかくかわいいタッチが多いので、般若のデザインで依頼を受けたときは戸惑いました。それでも、Tuttiらしさを失わないようにしながら希望に合う作品ができたと思います。ギフト商品として購入される人が多く、「相手の人が喜んでくれた」という知らせをもらうと、「やってよかったな」とやりがいを感じます。
 現在は起業支援ルームを卒業し、多治見市にあるオリベストリートの町家を改修して新店舗をオープンしました。新たなステージでも今までと変わらず、贈った人も贈られた人も幸せになれる作品を作り続けていきたいと思っています。