アトリエキク有限責任事業組合の「スノーウィー花酵母日本酒の保湿液」は、平成30年度「ぎふ女のすぐれもの」に認定されました。保湿力が高く、伸びも良いと、乾燥肌の方からも好評です。その開発に携わったのが薬剤師の中島しのぶさんで、「40代の私たちが使いたいスキンケア用品を作っていきたい」と話します。
「頼母子」で上田さんと出会う
化粧品作りに誘われて
私は大阪の出身で、郡上へは夫の転勤で来ました。こちらでは「頼母子(たのもし)」といって月に1回、気心の知れた仲間との集まりが受け継がれています。私も参加するようになり、同世代の人たちとも多く知り合いました。
あるとき、たまたま隣になったのが、今一緒に仕事をしている上田英津子さんで、彼女から化粧品の工房を起ち上げる話を聞いたのです。
大学を卒業して薬剤師の資格を取得しましたが、薬剤師としてどこかに就職はせず、研究や実験などの作業が好きでしたので、研究室に残りました。大学院の修士課程を経て、助手として3年ほど働いていました。
化粧品製造には統括責任者となる薬剤師が必要で、上田さんに声を掛けられたのです。郡上に来てからは働いていなくて、そろそろ仕事を探そうかな、と考えていたタイミングでもありました。当時、上田さんが自分用に石鹸を手作りしていると聞き、とても興味を引かれました。石鹸作りは油、水、アルカリを混ぜて化学反応させる、化学実験のようなものですから。こうして化粧品作りに携わることになりました。
既存商品の製造と開発の毎日
雑談の中に開発のヒントも
日々、商品の製造を行っています。大きな機械を入れていませんので、ほとんどが手仕事になります。商品点数、製造数量ともに多くないからこそ、作業一つひとつを丁寧に、を心掛けてきました。冬はとても寒くなるため、石鹸の原料である植物油脂が凍ってしまうことも。もちろん同じ品質になるよう、工夫して作業に臨んでいます。
並行して、商品開発にも取り組んでいます。上田さんとは同い年で、肌悩みなどを雑談している中、「こんな化粧品がほしいね」「こういう商品があるといいよね」という話から開発が始まって試作することも多いです。
訳のわからない成分は入れたくありません。シンプルでナチュラルな材料を使い、しっかりと機能してくれる商品を目指しています。そのために資料をいろいろ調べたり、ときには美容関連の講演会を聞きに行ったりもします。そして、イベントでサンプルを配るなどして、実際に使っていただいた感想を商品に落とし込み、作り上げていきます。
「ぎふ女のすぐれもの」に認定された「スノーウィー花酵母日本酒の保湿液」をはじめとする、花酵母日本酒を使った商品を発売して約6年が経ちます。花から採取された酵母で仕込む蔵元が地元にあって、普通の酵母で作った日本酒よりも美容成分が多く含まれていると言われています。化粧品の素材に使ってみようと注目したのが始まりでした。香りも良く、保湿液を作っているときなど、つい「飲みたいな」と思ってしまいます。
郡上おどりは夫婦共通の趣味
皆勤賞も4回獲得
郡上に引っ越してきた翌年に、約30夜のすべてを踊る「郡上おどり皆勤賞」の企画がスタートしました。夫も郡上の出身ではないので初めてでしたが、夫婦で同じ趣味を持つのもいいな、と踊ってみることにしました。始めると楽しくて、下駄を鳴らして踊るので、ワンシーズンで1足履きつぶしてしまいます。毎年この時季だけ会って話をする、名前も知らない方など、いろいろなひととの出会いも楽しいです。私は皆勤賞を4回取りましたし、2016年には娘も交えて家族全員で皆勤しました。
車の運転も好きですね。買い物もわざわざ遠くに出掛けたりします。自宅から工房のある高鷲町まで、車で片道50分ほどかけて通っています。この時間が公私の切りかえになっていて、今日の仕事内容や時間配分をイメージしながら走っていると、自然に仕事モードに入ります。帰りは、子どものことや夕食の献立を考えて運転しています。
大雪警報など、降雪時には車は危険ですから、工房を閉めます。家庭などに支障がないよう、職場環境を整えてもらっているのがありがいです。
長く愛用していただける
そんな化粧品を目指す
最初は手探りの状態でしたが、東海地方のイベントに出品したり、試供品を配布したりと、地道にやってきたことが、今のお客様に繋がっています。ネットショップも大々的に宣伝していませんが、多くの方にご利用いただいています。買ってくださった方が、また購入されるのを知ると、「お肌に合っているんだ、良かった」と、とても嬉しいです。
20年、30年と同じ商品を作り続けていきたいと思っています。ドカッと売れたいわけでなく、細く長く、気に入った方が使い続けていただけるのが目標です。ですから「愛用しています」というお声を聞いたときは、これからも頑張って作ろうと励みになります。
アトリエキクもいよいよ10周年を迎えます。今後はラインナップの充実も考えていきたいですね。