岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

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丸新製陶有限会社 取締役
塚本玲子(つかもと れいこ)さん(土岐市)

【2021年9月27日更新】

無釉の陶器が適度に湿気を吸収し砂糖や塩が固まらない「さらさらキャニスター」。創業71年を迎える丸新製陶有限会社のオリジナル商品で、塚本玲子さんをはじめ、女性スタッフらによって企画・開発されました。令和元年度「ぎふ女のすぐれもの」に認定される他、土岐市の「ふるさと納税返礼品」になっています。

食器があまり売れない時代
新たな商品を女性目線で

 従来、商品の企画は男性、主に社長が担ってきました。近年、食器が以前ほど売れなくなり、何か違う商品を開発しようと、キッチン周りに注目したのです。そこでキッチンとは馴染みの深い女性たちが集まって、企画に乗り出すことになりました。
 私を含め、女性スタッフ5人ほどが話し合っていたとき、ひとりが「料理の最中に砂糖や塩が固まっていてイライラする」と発言したのです。そのひと言をきっかけに、砂糖や塩が固まらないようなキャニスターを考えてみては、と開発が始まりました。
 スタッフから湿気を吸収する赤土の存在を聞いて、その素材でどういう形や色にしていくか、意見交換や試作を重ねながら、進めていきました。固まってしまうかどうかの検証が、とくに大変でしたね。また、女性の使い勝手も重視して、大きさや重さなどデザインの検討も幾度となく行いました。
 こうして完成した商品「さらさらキャニスター」は、まずは身内や知り合いに使ってもらいました。「本当に塩が固まらないので、他の人にもぜひ紹介したい」という声が多く、とても嬉しかったです。

ミーティングする機会も増えて
女性スタッフによる新商品も

 「さらさらキャニスター」のヒットを機に、女子会を開くことも増えました。いろいろな商品のアイデアを持ち寄って、楽しく意見を出し合っています。今年1月の新作発表会にも、女性スタッフが企画開発した商品が並びました。
 例えば、陶器のディスペンサー。コロナ禍が続く中、消毒や手洗いをする機会が多くなったことから提案した商品です。一輪挿しも考案しました。両商品とも、玄関に置いても違和感なく、おしゃれなデザインにこだわりました。
 職人さんたちをはじめ、型、釉薬、製土の各メーカーにご協力いただいて、みんなでひとつの商品を作り上げていくのが、この仕事の魅力です。形や色、デザインを考え尽くしても窯から出てくると「違うなあ」ということは何度もありますし、一生懸命に手間をかけて作ってもコスト的に合わない場合も出てきます。そんな苦労も、うちの商品が購入されるのを見るたび、やって来て良かったという気持ちになります。同時に、これからも良い商品を作り続けなくては、と気が引き締まります。

休日の楽しみは夫とふたりで雑貨屋巡りやカフェへ

 親から直接、家業を継ぐよう言われていませんが、長女でしたので、頭のどこかに継がなくてはという思いがありました。夫とは学生時代に知り合って、今3代目の社長として頑張ってくれています。製陶は未経験の夫でしたが、もの作りも好きだからと家に入ってくれました。もし夫が来てくれなかったら、私は継いでいたかどうか、わかりません。
 自宅のすぐ隣が工場と事務所ですので、あまり公私のメリハリはないですね。母に家事を任せて、夜遅くまで仕事をしてしまうことも。普段の仕事は、現場での作業や事務のほか、2018年に特許を取得した独自の立体加工を施せる「ロゴデコ」の担当もしています。「ロゴデコ」は従来難しかった繊細な模様や文字も、美しく表現できるのが特徴です。さまざまな活用が可能で、その魅力の発信にも力を注いでいきたいと考えています。
 じっとしていられない性格で、休日には街に出かけます。「こんなものが作りたいな」と気になる商品を探すなど、趣味の雑貨屋さん巡りも仕事の延長みたいなものです。息抜きとしてカフェにもよく行くのですが、ついカップなどの器に目が行ってしまいます。
 出かけるときは、いつも夫と一緒です。「仲が良いですね」と従業員たちにもよく言われます。

「亀吉どんぶり」のように時代を超える商品を目指して

 現在、長男が後継者として家業に向き合ってくれています。別の仕事をしていた次男も手伝おうと言い始めていて、兄弟仲良く、会社を盛り立てていってくれると嬉しいな、と思っています。ぜひ創業100年を目指してほしいです。
 昨年の10月に丸新製陶の陶祖、塚本亀吉が作った「亀吉どんぶり」を、クラウドファンディングで復活させました。当時大いに評判となった器ですが、詳しいことは塚本家にも残っていませんでした。研究や試作を何度も積み重ねて、150年ぶりに私たちが現代によみがえらせたのです。
 そんな「亀吉どんぶり」のように、何10年後か、ぜひ復活させたいと思ってもらえるような商品を私たちの代で作るのが目標であり、夢です。