岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

会社の壁を越えて
同じ業界の女性同士が集う
美濃焼おかみ塾は
私を前向きにしてくれます


山淳製陶所 美濃焼おかみ塾メンバー
伊藤瑛子(いとう えいこ)さん(土岐市)

【2021年9月28日更新】

手軽に熱燗を楽しめる「酒燗器」をはじめ、業務用の徳利や盃、湯呑みなどを製造する窯元に生まれた伊藤瑛子さん。家業に就いたばかりの頃にデザインした、たぬきシリーズが山淳製陶所の人気商品になっています。美濃焼おかみ塾では陶育やSNSを担当し、美濃焼文化の発信にも意欲を見せます。

家業を継ぐことを決意し大学卒業後、意匠研に入る

 敷地内に自宅があり、仕事場が遊び場でした。今は私の子どもたちが、作業する横で遊んでいます。小さい頃から粘土遊びが好きで、工作や絵を描くのも好きでした。高校3年生で進路を考えたとき、ほかに得意なこともないし、好きなことをしようと、名古屋芸術大学へ進みました。
 大学では陶芸を学んでいましたが、家を継ぐことはあまり意識していませんでしたね。ただ、ぼんやりとですが、家業をやりたいなという気持ちも、心の片隅にあったのでしょう。卒業を控え、継ぐ決心が固まったのです。
 しかし陶芸とは言っても、家業とは結びつかない芸術作品を作っていましたので、ちゃんと器の勉強をしなくてはと、意匠研(多治見市陶磁器意匠研究所)のデザインコースに入りました。当初はアートとデザインの考え方の違いが、しっかりわかっていませんでした。自分の好きなものを作るのではなく、求められているもの、時代に合ったもの、使いやすいもの、をデザインする意味や大切さを学びました。
 意匠研終了後、家業に就きました。その後、お婿さんとして夫に来てもらい、ふたりの子ども(長女と長男)を授かって、現在4人暮らしです。

家族4人で営む窯元ゆえに理解や協力が得られやすい

 子どもたちはまだ小学校低学年で、仕事よりも優先することが少なくありません。そこは家族だけでやっている窯元ですから、時間の融通も利きますし、何かと気も配ってもらえます。仕事も子育ても、家族の理解や協力があってこそなので、本当にありがたいです。
 新しい商品はすべて私がデザインしています。私の作りたいものがそのまま反映されるので責任は重大ですが、楽しいです。ただ近年は徳利や盃が売れなくなってきました。この先も低迷が続くと予想されます。発砲日本酒をワイングラスなど、ガラスの器で飲む形も出てきて、今後どんなお酒の器を考えていけばいいのか。新たな形を作り出すのは難しいですが、デザイナーさんとも相談しながら、答えを見つけていきたいです。

気づきも多く、美濃焼おかみ塾のメンバーとの出会いは貴重

 実は、家業に入ったものの「徳利など古くさいものを作るのは嫌だ。もっとおしゃれな器をうちでも作りたい」と茶碗や皿を試作するなど、迷っていた時期がありました。
 そんなとき土岐市の陶磁器試験場主催の、陶磁器関連企業に勤める女性を対象とした講習会に参加しました。いわゆる同僚という人がいないので、それまで相談する相手もおらず、また、自分と同じような立場で働いている女性が多くいたことにも思い至らず、皆さんとの出会いはとても新鮮で、刺激になりました。
 その講習会をきっかけに誕生したのが「美濃焼おかみ塾」です。発足して間もない頃、私はこんなものを作っていると話をしていたときでした。私の「徳利を作っています」という言葉に、「珍しいものを作っているのね」「面白そう」などの反応が多く、家業の魅力に気づかされました。メンバーと知り合わなかったら、今のように酒器の今後について考えることはなく、いまだに空回りしていたかもしれません。
 当初は集まっておしゃべりを楽しんでいましたが、そのうち女性目線で開発した商品の展示会、「陶育」と名付けた教育プログラム、ワークショップの開催など、美濃焼の素晴らしさを広く伝える、さまざま活動を展開するようになりました。
 おかみ塾の先輩おかみはみんな明るくて、笑いが絶えません。皆さん、自分よりもキャリアがあるし、自分よりも前向きにいろんなことに取り組んでいます。5年後10年後に、私もああなっていたらいいな、と目標にしています。おかみ塾で頑張っている私の姿を見て、長女が「私も大人になったら、おかみ塾に入ろうかな」と。うれしいですね。

女性が可愛らしく日本酒を楽しめるような器を目指して

 家飲みだけでなく、おかみ塾のメンバーや友人との飲み会など、お酒を飲むことが趣味です。特に日本酒が好きで、美味しいお酒と料理と楽しいおしゃべりが一番。子どもたちといっしょに公園に出掛けてお弁当を食べたりするのも、休日の楽しみです。
 女性が日本酒好きと言うと、男性っぽいイメージを持たれたり、お酒が強いと思われたりして、日本酒を飲む女性はまだまだ少数派だと思います。お店でも、女性がもっと気軽に日本酒を頼めるような可愛らしい徳利や盃など、新しい時代のカジュアルな「酒の器」をいろいろと提案していきたいと考えています。
 おかみ塾の活動としては、今年の夏までにホームページを開設しようと計画を進めているところです。新たな繋がりも生まれてくるのでは、と期待しています。