岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

ブランディングも大切にしながら
いぶきの商品であること、
込められた思いや物語も含め
丁寧に伝えていきたい


社会福祉法人いぶき福祉会 ブランドマネージャー
山本友美(やまもと ともみ)さん(岐阜市)

【2021年9月29日更新】

どんな障害の重い人も、安心して豊かに暮らしていける地域づくりに取り組んでいる「社会福祉法人いぶき福祉会」。自立的な生活を目指して、菓子やジャムなどの生産も積極的に手がけており、山本友美さんはブランドマネージャーとして、商品開発やパッケージデザインの分野で力を尽くしています。

フリーランスのデザイナーからいぶき福祉会の正職員へ

 実家はオーダーカーテン業を営んでいて、その仕事場が子どもの頃の遊び場でした。見本帳のお洒落な部屋の写真にときめたり、生地をもらってバッグや小物を作ったり。その経験から何かを作り出すこと、デザインすることに強く惹かれるようになりました。
 名古屋の事務所でグラフィックデザイナーとして働いていましたが、結婚、出産を機に退職して岐阜へUターン。子どもが保育園へ入園するタイミングにフリーランスで復帰し、いろいろな方のご紹介やご縁で仕事を任せてもらい、充実した日々を過ごしていました。
 そんなある日、いぶき福祉会のデザイン担当者が産休に入ったため、手伝ってもらえないかと声がかかりました。別の仕事もしていたので、週に1回応援に入ることにしました。
 「なんて温かい場所なんだろう」というのが、いぶき福祉会の印象でした。利用者さんは毎日とても楽しそうだし、スタッフは常に心を配り、優しい関係を自然と築いています。正規職員に、と誘われたときはためらいもありましたが、この素敵な場所で私の経験が役立てるなら、そして、ここで作られる商品をもっと興味を引くものにできたらと思い、転職を決めました。

広報とデザインの全般を担当
障害福祉への理解を深めるために

 いぶき福祉会では草木染めや手漉き和紙、農業、製菓など様々な活動を行っています。私の主な仕事は、これら商品の開発、パッケージデザイン、ウェブなどの販売促進ツールのデザイン、会報の制作です。他には、イベントの企画運営にも携わっています。
 約160人の利用者さんは、それぞれの個性に合わせた活動を行っています。重度の障害のある人も作業ができるように、道具づくりから工夫。一人ひとりが社会の一員として輝けるよう支えているスタッフ達にはいつも感服します。
 食品製造では、添加物や保存料を極力使わず、素材にもこだわっています。こうした真摯なモノづくりの背景も含めて丁寧に伝えるデザイン、発信をすることが私の役割だと思っています。
 携わり始めた当初、福祉に関して私は全くの未経験だったので福祉という場では当たり前の常識が分からなかったり、気付けなかったりしました。また、いぶき福祉会の良さを伝えるための知識が足りず歯痒い思いをして、力不足に悩むこともありました。しかし知らないからこそ、フラットな視点で提案できるのではないかと気付いたのです。いぶき福祉会の商品は、私と同じように福祉の現場を知らない方達にこそ手にとってほしい。純粋に商品の魅力を高め、いぶき福祉会のみんなが心を込めて作ったものを楽しんでもらう。その上で、商品をきっかけに福祉への関心が芽生えるなら、素晴らしいことだと思ったのです。知識を得る努力とともに、未経験だからこその視点も忘れず真摯に進もうと切り替えてから、自信を持って仕事に取り組めるようになりました。
 良い商品を作り続けていると、他社製品の製造やコラボレーションなどの話もいただきます。長良川温泉若女将会と共同開発し、平成30年度「ぎふ女のすぐれもの」に認定された「鮎果鈴」もそのひとつです。試行錯誤を重ねて商品化することは時に辛くエネルギーが必要ですが、そのたびに学びがあり成長してきました。そうして誕生した商品を通じて、障害福祉への関心や理解が深まっていると感じています。

いぶき福祉会デザイン室の立ち上げ
外部からの仕事も請け負って

 いぶき福祉会に入ってからもフリーランス時代につながりのあった方から、時々デザインを依頼されることがありましたが、最初はお断りしていました。しかし、今まで築いてきた関係も大切にしたいと考え、上司に打診したところ「やってみたら」と背中を押してもらえて、現在は外部のクリエイターと一緒に仕事をすることもあります。仕事を通していぶき福祉会のことを知ってもらう機会が増え、想像以上に福祉に関心を寄せている方が多いことにも気づきました。障害のあるないに関わらず、たくさんの人が気負わず交流し、自然とわかり合える場を作っていけたらいいな、と思っています。

料理、読書、サッカー観戦など好きがいっぱい
母はあこがれの人

 仕事人間な私は、忙しいとつい時間を忘れて没頭してしまいがちなので、夫や息子の理解があってこそと、感謝しています。
休日の楽しみは読書やゆるいガーデニングです。他にも人を招いて食事をしたり、インテリアを工夫して部屋を飾るなど、過ごしやすいように考えたり、昔息子と一緒にはじめたサッカーの海外リーグの試合観戦も楽しみのひとつです。
 癒しは母と過ごす時間。明るくて前向きで、いくつになっても学ぶ姿勢を持ち続ける母が大好きです。私もそんな人になりたいと思っています。
 実は、寮母さんとかシェアスペースのお世話係さんとかをするのが夢なんです。多様な人たちと、おせっかいを焼いたり気に掛け合ったりしながら過ごせたら。いつも誰かが気軽に立ち寄ってくれて笑って暮らせる老後が理想です。