岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

シェアキッチンを軸に
食に関わる人々を応援
夢を叶える瞬間に立ち会えるのが
何よりのよろこびです


株式会社Coneru 代表取締役
平塚  弥生(ひらつかやよい)さん(大垣市)

【2022年8月15日更新】

「食と人との繋がりを捏ね上げる」をスローガンに掲げる株式会社Coneru。大垣市内に2つのシェアキッチンを展開し、食に関わる人々を応援。代表取締役の平塚弥生さんはフードビジネスコンサルタントとして「何かはじめてみたい」と思った人の、チャレンジの一歩目を後押ししています。

食と人とをつなぐ場
 地元のカフェのメニュー開発や、大手チェーン店の商品企画開発、店舗オープンのための支援を行っています。最初のシェアキッチンは大垣市中心市街地の空き店舗を活用し開業しました。「カフェをはじめたい」「マルシェに出店したい」といった人のチャレンジの場として製造許可のあるキッチンを使っていただく仕組みです。食品を販売してみたいと考える人のための場なので、誰でも使えるという訳ではありません。試作品を持ってきていただき事前面談、オリエンテーションを受講した上で利用開始となります。
 各種製造業許可取得済みの施設なので、安心安全な商品をつくることができます。商品開発やキッチン事業の経験を生かしたコンサルティングで、飲食店はもちろん、ネットショップを開くために必要なことや売り上げを伸ばすためのサポートも行っています。

夢を応援するために
 専門的に料理を学んだことはありませんでしたが、父がシェフで母も料理に携わっていたので子どもの頃から料理は身近でした。一度は県外に就職しましたが、Uターンで戻ってからは大垣市内の製菓メーカーで商品開発やネットショップの立ち上げに携わりました。その後起業し、株式会社Coneruを設立しました。
 食が幼い頃から身近にあった分、食に対する矛盾、問題にも直面していました。両親は朝は早く、夜は遅くまで働き学校が休みの時は決まって店が忙しく、家族との時間が取れないでいました。
 また、製菓学校に入学するのは女性が多いのですが、職人として働きはじめても、結婚や出産で続けられる人が少ないという現状があります。また、重いものを運ぶ機会も多く、身体を壊してしまうケースもあります。そのため、食に関する場での労働の厳しさを私なりに少しでも改善できれば、という思いもあります。製菓学校を卒業後パティシエとして一線で働いていた人が、子どものためだけにバースデーケーキを作り、趣味としてのお菓子づくりをしているという人も多いです。そのような人の、再び誰かにに自分の味を届けたいという夢を応援するため、2018年7月にシェアキッチンをはじめました。
 シェアキッチンの立ち上げ当初は、わからないことだらけで手探りでした。県内でのシェアキッチンの前例がなく、行政や保健所との話し合いを幾度も重ね、正しく使ってもらえるルールを模索しながら作リ上げてきました。ただ、ルールばかりで縛るのではなく、利用者みんなでコミュニティを作っていく意識づくりを心がけています。

 
新しいことをはじめるには勇気がいるに違いありませんが、いつか子どもが大きくなったら、いつかお金が貯まったらなど、いつか〇〇と先送りせずに「いつかを今に変える」チャレンジの一歩目を踏み出す後押しができます。シェアキッチンの利用者さんが腕を磨いて成長し、夢が叶う瞬間に立ち会えることが何よりもの喜びです。実際、SNSで話題になったり、実店舗を構えた人もたくさんいます。「ここで試した経験があったから続けてこられた」と感想をもらうこともあります。シェアキッチンを卒業した後もイベントを一緒に出店したり、相談ごとを共有したりなど、つながりは切れていません。


食で賑わいを生み出す
 コロナ禍で緊急事態宣言が出た際は、予約のキャンセルが続出し売上がゼロになった月もありました。そこからビジネスモデルを切り替え、個人だけでなく、飲食店向けに対象を広げました。製造許可のある場所があること、また即戦力になるお菓子や料理が作ることができるシェアキッチンの利用者のネットワークがある強みを活かし、委託で製造を請け負うことにしました。お店の通常メニューをテイクアウト用に加工して卸したり、売上を補うためにネットショップを立ち上げたいというレストランに協力したり、臨機応変に展開してきました。そのおかげで、大垣市内にもう一つ、シェアキッチンを設けることができました。
また、製造目的の利用だけではなく、まちの人たちがみんなでご飯を作って食べるような活動もしてきました。そのなかで「食」は単なる栄養摂取の目的だけでなく、人とのコミュニケーションを維持するための役割もあります。一緒に作って食べることで、ちょっとした悩みや愚痴を吐き出す場となり、気持ちが軽くなり人と人の繋がりが生まれます。小さな活動でありながらも、まちのセーフティーネットとしての役割を担える可能性があると感じています。また、空き店舗を活用することで人の出入りが増え、そこから商品が生み出され、経済活動が行われます。食は人と人をつなぎ、地域コミュニティを醸成し、まちの賑わいづくりのためのメディアになると信じています。


より地域密着型に
 シェアキッチンを利用する人の多くは、マルシェなどのイベント販売が目的でした。しかしコロナ禍で開催が相次いで中止になり、それに代わる販売の場として、2021年の夏に焼菓子専門の自動販売機を設置しました。もちろん、品質管理は徹底し、今年は更に大垣市内に2箇所、この自動販売機を新設する予定です。
 私生活では、みんなでご飯を食べることを大事にしたいので、スタッフに賄いを作るのも楽ししみの一つです。食は生活に密着しているため、消費者の立場であったとしても全てが仕事につながっているという考えがもう、完全に公私一体型ですね。
 これからは、製造する場所というだけでなく、地域の人たちが食を通じて交流できるような空間として、より地域に密着したシェアキッチンにしていきたいです。各まちに、そういったシェアキッチンがあるのが当たり前になるといいですね。そうして、食を担う人の労働環境も改善していきたいです。人は食なしには生きられません。だからこそ、食を提供する人全体の価値を上げて、「食で人を幸せにする、素敵な仕事なんだ」と認めてもらえるような仕組み作りが必要です。