岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

地域経済の発展を担う
中小企業の経営力を高め
大好きな地元を
もっと盛り上げたい


JPコーチ&コンサルティング株式会社 代表取締役・経営コンサルタント
栗田 恵世(くりた やすよ)さん(大垣市)

【2022年8月15日更新】

総務経理や人事系のコンサルティング業務を経験し、2014年に大垣市内で経営コンサルティングを行う会社を設立した栗田恵世さん。これまでに300社以上の経営支援に携わっており、女性の創業支援については800件以上もの実績があります。2019年には一般社団法人ウーマンアントレプレナーズを、2020年には「不易流行 THE 実学実践会」を設立するなど、自身の専門性を生かした地域支援も積極的に行っています。

経営者の力になる
 短大卒業後、一部上場企業のグループ会社に就職し、総務経理を担当していました。22歳の時に結婚をしたのですが、当時勤めていた会社では女性社員の寿退社が企業文化として根付いていたため、周囲からは退職するものだと思われていました。しかし私は、仕事にやりがいを感じていたため、会社に「続けたい」と申し出、結婚後も勤務する初めての事例となりました。その後、25歳で長女を出産したのですが、当時の勤務先には育児休業取得者の前例がなく、再び私が初めての事例となりました。そして3年後に第二子を出産しましたが、「ここで働きながら2人の子育ては困難」と判断し、社会労務士事務所に転職しました。転職先を選んだ理由は、総務経理の業務経験を生かかすことができ、更にスキルアップにもつながる点が多く、魅力に感じられたからです。
 転職先の社会労務士事務所では、飲食店を経営していた自分の両親のように、事業の維持・継続に悩んでいる中小企業の経営者とたくさん出会いました。私は話を聞くたびに両親と経営者の姿を重始め、たとえ微力だとしても経営継続のためにお力添えができればといった考えが頭をよぎるようになりました。

約800件の女性創業を支援
 社労士事務所では約200社もの人事労務や経営の支援に携わってきました。この経験の中で私は、経営者が真の幸せを感じる瞬間はどんな時なのかを追求しながら仕事に尽力してきました。売上が上がったり、給与を多く支払えた時はもちろんうれしいですが、経営者は、描いたビジョンの実現に向かって従業員と力を合わすことができた時にいつも最高の笑顔を見せてくれました。私はこれこそ経営者が真の幸せを感じる瞬間だと気づき、「ビジョン型組織プログラム」を独自に考案しました。このプログラムを用いれば将来のビジョン、ミッション、提供価値を導くことができ、従業員と一緒になってビジョンを実現できる強い組織を形成することができます。そして私は、経営の問題を抱える地元の事業者を支援するため、ビジョン型組織づくりを提案する会社を立ち上げました。
 創業は今から約8年前のことです。希望を胸に独立しましたが、半年後に廃業の危機を迎えました。いくら社労士事務所で実績を積んでも、そこから飛び出した個人の私には実績がなく、どんなスキルを持った人なのかが伝わらず、クライアントの獲得ができなかったためです。途方に暮れていると、運転資金を貸してくれた金融機関が中小企業を支援したい専門家を登録できるサイトを教えてくださり、そこへの登録をきっかけに、自分を知ってくれる経営者が増え始め、少しずつ顧客の輪が広がりました。
 現在は中小企業の経営コンサルだけでなく、女性の創業支援にも力を入れています。私が独立した当時、岐阜県内ではワーキングマザーとして経営コンサルに取り組む女性は多くありませんでした。一方、地方でも女性創業の波が押し寄せつつあり、私にその支援の依頼が舞い込むようになったのです。さらに、岐阜県よろず支援拠点や三重県津市でも創業アドバイザーを務めさせてもらうなど、今日までで約800件の女性創業を支援してきました。

地元の発展に貢献したい
 日本にある企業の約9割は中小企業であり、地方都市にとっては地域発展の鍵を握る重要な存在です。そんな大役を務める中小企業の力になり、生まれ育った大垣をはじめ、西濃や岐阜県の発展に貢献したい、この使命感が私の中の原動力となりました。
 まだまだ事業承継に悩む中小企業は多いです。私が支援できる数は限られている一方で廃業していく企業も増えているため、このままでは地域全体が先細ってしまうという危惧がありました。そこで、地域の中小企業が一丸となり、未来に向かって地域全体の活気が続いていく「地域承継」を真剣に考えるコミュニティが必要だと思い、「不易流行 THE 実学実践会」を設立しました。その後、会員企業と地域課題をともに解決する事業を3つ企画し、岐阜県SDGs推進ネットワーク補助金を申請したところ、すべてが審査を通過しました。会員企業ともに新たなチャレンジができた事例となりました。

県外の中小企業にも注目する
社会労務士事務所ではフルタイムで働く多忙な日々が続いたので、独立した時はもっと子どもと接する時間を多く取りたいと思い、親子で料理教室に通い始めました。現在長女は大学生、長男は高校生です。すっかり料理にも慣れたので、毎週末は皆でキッチンに立ってご飯をつくり、それを家族で食べる時間がとても幸せです。
 また、長女は私の会社でインターンシップを経験し、さらにグループ会社の一般社団法人ウーマンアントレプレナーズの業務も一部担当してもらっています。自分の事業を通じて、社会に出る前に、子どものキャリア教育の場を提供できることはとてもうれしく思います。
 今後は、現在展開している「不易流行 THE 実学実践会」を通じて、岐阜県をはじめとする中小企業の経営者の方とともに、地域課題の解決に取り組み、全国の地域承継を支援していきたいと考えています。