岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

「社会のために」という
思いを胸に刻んで
支援を必要とする人の
味方であり続けたい


朝日大学 法学部准教授
宮坂 果麻理(みやさか かおり)さん(瑞穂市)

【2022年8月15日更新】

宮坂果麻理さんは、2021年に創立50周年を迎えた朝日大学の法学部准教授です。日々教壇に立ち、学生に刑事法を教える一方で、瑞穂市の男女共同参画推進審議会の会長職も務めています。2021年には、男女共同参画社会づくりを献身的に行い、その功績が顕著であったことから「岐阜県男女がともにいきいきと暮らせる社会づくり表彰」を授与されました。

20歳の転機
 大学進学をきっかけに石川県から岐阜県に引っ越しました。当時は将来のことを具体的にイメージできておらず、例えるなら行き先がわからない船にひとまず乗り込んだという状態でした。入学したのは現在の勤務先の朝日大学法学部です。
 20歳の時に、ゼミの一環で刑務所参観を体験したことがきっかけで、犯罪や非行に関する刑事司法分野に興味を持つと、学びの姿勢が大きく変わりました。知れば知るほど、深部を探りたくなる刑事司法の世界。いつしか私は「非行少年も社会という大きな集団の被害者ではないだろうか」といった疑問を抱くようになり、もっと少年法を知る必要性を感じ、研究することにしました。今でこそ少年法という言葉は一般層にも認知されていますが、当時は、少年法を研究する学生もかなり少なかったです。
 少年法を研究していく中で、法の欠陥や矛盾に対して自分なりの見解を導き出せるようになりました。大学卒業後は「もっと多くのことを学びたい」という気持ちが膨れ上がり、大学院の博士前期課程(修士課程)に進みました。大学院での研究の成果として提出した論文のテーマは「少年再審問題について」です。

悩めるゼミ生に元気を
 当初、大学院生活は2年間の博士前期課程(修士課程)で終えるつもりでしたが、私の探究心は止まることがなく、結果的に博士後期課程にも進み、18歳で大学に入学してから10年間学生として学び続けることになりました。こうして博士後期課程を終えた時には28歳でした。大学院生が博士後期課程まで進むと、その多くは研究者として生きる道を選びます。研究に夢中で就職について強く意識することがなかった私も大学に残り、研究者を目指しました。
 博士後期課程を修了してからは、しばらく非常勤講師を務め、各地の大学や専門学校の教壇に立ち、ポストドクターとして朝日大学に籍を置き、研究も続けてきました。こうした活動の合間に専任講師の募集情報を探し、結果的に、縁あって朝日大学の専任講師になることができました。
 専任講師は講義をするだけでなくゼミを受け持ちます。私とゼミ生とのつながりは日増しに強くなりました。それに伴い、ゼミ生たちから様々な悩みを相談される機会も増え、彼らが生きづらさを感じている事実が浮き彫りになったのです。そこで私は、社会と接点を持ち、これまで学内になかった新しい風を感じてもらえれば、彼らに元気を与えられるのではないかと考え、ゼミ生と社会貢献活動を始めました。具体的な内容は、非行少年の立ち直り支援や地域における防犯活動です。ゼミ生は活動を通じて出会う大人とのコミュニケーションに楽しみを見出し、次第に苦悩の表情を見せなくなりました。
 活動が軌道に乗り始めた頃、私たちは日頃の取り組みの成果を発表するべく「社会人基礎力育成グランプリ」に出場。初めは地区予選を突破することもできなかったのですが、2017年度大会で最優秀賞を受賞し、その後の全国大会で準優勝に輝いたのです。この結果は優秀なゼミ生たちの努力の賜物にほかなりませんが、私も自身が行ってきた指導の成果を認めてもらえたような気がして、自己肯定感を高めることができました。

県からの表彰
 私は大学で教育・研究職を務めながら、瑞穂市の男女共同参画推進審議会の会長職を発足時から担当してきました。同会では、その名の通り、男女共同参画社会の実現に向けて、市民への理解活動を計画し実施するなどしています。これまでにも多くの計画を進めてきましたが、特に印象深いのは「瑞穂市と朝日大学との連携に関わる協定」に基づいて開かれたワールドカフェです。これは、学生と社会人が男女共同参画についてお茶を飲みつつ気軽に話し合う場で、2014年から開かれています。また、2016年には、ワールドカフェの定期開催を盛り込んだ「瑞穂市と朝日大学との男女共同参画・女性の活躍推進事業の連携に関する覚書」の締結において、主幹として携わらせていただき、継続的な意識啓発の機会を設けられるようになりました。さらに、朝日大学の法学部・経営学部生を対象に「男女共同参画学」を科目に加え、私が講義を担当し、学内で女性への暴力の根絶を訴えるパープルリボン活動も行ってきました。そして、とてもありがたいことに一連の活動の功績が認められ、2021年11月に岐阜県から表彰していただきました。私は社会人基礎力育成グランプリで準優勝した時のように、再び自己肯定感を高め、第二の故郷とも言える瑞穂市の発展に貢献できたことを喜びました。

休日もボランティア活動
 休日は夫の手料理を食べたり、喫茶店に出かけてのんびり過ごしますが、その予定がない時は仕事の延長といいますか、岐阜市更生保護女性会の部会長として、更生保護ボランティアにも従事しています。この活動では刑務所等を出所した人が身を寄せる施設に出向いて食事をつくったり、施設周辺の清掃活動等をともに行いながら交流を図ることで自立を支援します。また、2021年11月からは瑞穂市内の企業と協力して子ども食堂の運営も始めました。ありがたいことに忙しい毎日を送らせてもらっていますが、とても充実しているので生きる力がみなぎっています。これからも「社会のために」という思いを胸に刻んで、支援を必要とする人の味方であり続けたいです。