飛騨市に拠点を構え、ネット通販支援を行う株式会社ヒダカラ。夫と共同代表を務めるのが舩坂香菜子さん。前職で培ったECサイトの運営ノウハウ、地方を元気にという想い胸に夫の故郷である飛騨へ。さまざまな飛騨の魅力を誇りおこし、全国にPRする手法が話題を呼び、多くのメディアからも注目を集めています。
夫の地元、飛騨高山へのUターンが転機に
私は奈良県出身で、京都大学教育学部を卒業しました。在学中に共感したのが「地方を元気にしたい」という楽天株式会社の想い。教育からは少し方針転換して、同社に入社。楽天では、事業者様に伴走しネット通販の売上を上げるサポートをする"ECコンサルタント"というお仕事をさせていただきました。東京、福岡、鹿児島、京都、神戸と、1年半~2年のスパンで多くの拠点を経験させていただきました。
転機になったのが、同じ会社で知り合った夫が地元・高山市にUターンすることを決めたこと。最初は戸惑いましたが、会社に籍を置いたまま「飛騨市に出向して、地方を本気で元気にしないか?」と会社から提案がありました。飛騨で働きながら暮らす間に、私自身、飛騨市の魅力にどんどんとはまりました。
株式会社ヒダカラは、夫と共同経営している会社です。私は前々から会社経営に強い興味を持っていたわけではありません。でも、常に考えていることが「みんなで夢中になって、楽しめるチームをつくりたい」ということ。出向中に沢山の事業者様とお話するうちに、既存の枠に囚われずに飛騨の魅力を発信するためにもっとチャレンジしたいという想いが強まり、2020年に起業。「飛騨のタカラモノを届けたい」という想いを込めて、ヒダカラという社名を名付けました。
考えに共感した仲間と地方を元気に
会社の所在地は飛騨市古川町。オフィスは閉店してしまった酒屋をリノベーションしました。広々とした空間のオフィスで14人、リモートで4人の社員が働いています。『飛騨を盛り上げたい、やりがいのある仕事をしたい』という想いを持ったメンバーが集まってくれています。
会社では情報共有とメンバーの相互理解のため、毎朝9時から30分は全員で朝礼を行い、コミュニケーションしています。そこでは直近の業績や、会社にとって重要なトピックスの共有をしたり、簡単なゲームなどを行ったりしています。一日いい仕事をするためのスイッチを入れる時間になっていると思います。
事業の柱は通販支援事業、小売事業ですが、最近では事業承継した豆富店での製造・販売も行っています。飛騨地域には魅力的な商材がたくさんあるのに、残念ながら通販やPRのノウハウがなく、いいものを作っても価値が伝わっていないケースが多いと思います。私たちの経験やノウハウをフル活用して、飛騨を元気にするお手伝いがしたいです。
知られざる秘境の天然鮎『飛騨のあばれ鮎』。地域を巻き込みブランド化
ヒダカラで販売を始めた商品のひとつが「飛騨のあばれ鮎」。これは鮎釣り界のレジェンド、室田正さんとの出会いから商品化に至ったものです。室田さんは飛騨宮川の鮎に惚れて移住された方。大自然の苔、水で育った鮎は釣った時、竿を曲げるほど暴れるということから、『飛騨のあばれ鮎』と名付けました。ネーミングやデザインだけではなく、販路を開拓したりPRを行ったりして、少しずつではありますが認知が広まってきています。鮎はどれも友釣りしたものを鮎釣り名人が目利きし、新鮮な状態で急速冷凍します。これも飛騨市、宮川下流漁協の協力があってできるようになりました。個人の方から料亭や居酒屋、そして豊洲市場にも販路を広げています。
商品を見つけるだけでなく、地域を巻き込んでブランド化をしていく。ひとつの形になったものが、「飛騨のあばれ鮎」です。
伝統食材「石豆富」の事業継承にも挑戦
新規事業として取り組むのが事業継承した豆富店の豆富と関連商品の製造販売です。世界遺産の白川郷で知られる岐阜県大野郡白川村で、伝統食材「石豆富」を作っている豆腐店を2021年9月に受け継ぎました。コロナの影響、先代の高齢化や売上減少で一度は閉店したものの、惚れ込んだ豆富を何とか復活させたいという想いでのチャレンジです。縄でしばっても崩れないほど堅いことから、石豆冨と名付けられた豆富は大豆の旨味がギュっと凝縮されている逸品。若い職人を中心に、白川村で手作りしています。
飛騨牛、米、桃、ジビエと伝えたい地場産品はたくさんあります。ふるさと納税運営代行、ネット通販支援など、さまざまな形で私たちは地域の事業者さんたちと一緒に飛騨の魅力を伝えていきたいです。