中学校の同級生だった夫との結婚を機に、就農した髙田さん。直売所で販売する柿、梨には多くのリピーターがいるほどです。男性と同じように女性就農者も意見交換ができるようにと地位向上を目指し、ぎふ農業委員会、女性ネットワーク会長という要職を担います。
夫の考えに共感、教育と農業の向き合い方。
専業農家だった夫との結婚を機に、私も就農して夫や義父母らと働くようになりました。私は本巣市の出身で、短期大学卒業後、4年間、愛知県の小学校教員として勤務しました。夫とは、地元の成人式で再会し、まだ教員になる前でしたが、すでに農業をしていた夫と仕事について話す機会がありました。そこで聞いた夫の農業に対する考え、そして農作物との向き合い方は、やがて私が教員となった時の子どもたちへの向き合い方に似ていて、共感を覚えました。私も主人の考えと同じで、子どもはそれぞれ性格が違う、だからこそ、一人ひとりにあった対応をしていきたいと、考えていました。
就農した頃はもちろん、農業の経験はありませんでした。最初に夫と担当したのはキュウリのハウス栽培。髙田家では、私たち夫婦が担当するキュウリ以外に、義父母らが梨、柿、その他3.5ヘクタールの面積で水稲を栽培していました。今より今より規模も小さくて、複合経営を行う農家でした。
岐阜県女性農業経営アドバイザーへの挑戦が転機に
義父母、そして夫と農業をしながら、私が外に向けてもいろいろな活動をするきっかけになったのが、1997年に「岐阜県女性農業経営アドバイザー」の2期生に参加したことです。
就農してからは人前に立ったり、積極的に前へ出ることはしてきませんでしたが、岐阜県女性農業経営アドバイザー普及員の方から、「いろんな方と交流することは刺激になりますから」と勧めてもらい、参加しました。
「断るのは簡単。でも、やれば必ず自分のなかでプラスになる。迷ったら前に進もう」これが私の考えなのです。また、家族も「参加してみれば」と送り出してくれて、協力があってこそだと感謝しています。
研修では農業に携わる女性が集まり、意見交換をします。ひと言で農業経営といっても花卉を栽培する人、畜産業で動物と向き合う人もいてさまざまです。それぞれの悩みを聞き、意見を交換して、励ましあいました。
家族みんなで農業と向き合うなか、外に出て研修会でみんなとお話することはリフレッシュになりました。その後、2003年には100人ほどが参加している岐阜県女性農業経営アドバイザーの会長も任せてもらい貴重な経験となりました。
梨の豊水が自信作。直売所、通信販売も行っています
私たちが育てた梨、柿は直売所でも販売しています。直売所を開設したのは亡くなった義父のアイデアです。「髙田さんところの柿は甘いし、大きくておいしい」、「来年も買いたい」と直接、お客様から言っていただけることは喜びです。やはり生産者にとって、ダイレクトに反響をもらえることはうれしいこと。義父は亡くなるまで梨、柿を栽培してくれていました。栽培方法は私たちもそのまま受け継いでおり、梨や柿の味を褒めてもらえるのは義父のおかげです。
収穫前には毎年買ってくださるお客様にはがきで案内をしています。これは就農して手伝ってくれている長男のアイデアです。郵送で購入してくださるお客様には、私たち家族の写真を載せた感謝の手紙を添え、生産者の顔が見えるようにしています。
梨は「豊水」が自信作です。早めに収穫して追熟させるのではなく、お客様のもとに届いた時が一番おいしい時期となるよう、収穫することにこだわります。豊水は漢字の通り、ジュワッと汁があふれるほどみずみずしい品種です。汁気が多いのですが、我が家の豊水はさらに汁が甘くて濃い味と評判ですから、ぜひ食べてもらいたいです。
実は栽培を35年続けてきた梨畑が、都市開発の影響で作れなくなりました。「もう梨栽培は辞めようか」と考えましたが、お客様から「髙田さんが梨を辞めたら、どこで買ったらいいの」と言ってもらえました。梨は2024~2025年頃に栽培を再開予定です。楽しみに待ってくれているお客様には、栽培を始めたら手紙で案内を出したいと考えています。
女性目線のアイデアを農業に生かしたい
本巣市農業委員会としての活動のひとつに「キッズキッチン」という若者、子ども向けの食育イベントがあります。市内の園児に向け、夏野菜の苗をプランターに入れ、ナス、トマト、オクラを栽培します。冬野菜は大根、ニンジン、ホウレンソウ、9月に種まきをして、12月に収穫をします。子どもたちが野菜を調理して、県の栄養士さんの指導のもと野菜スープやさつまいも餅、小松菜のおひたしを作ります。野菜スープは塩だけの味付けですが、しっかりした野菜の旨味が出て、おいしいと人気です。野菜を食べる時、園児のみんなには「命をいただいているんだよ」と伝え、食べることへの感謝を伝えています。
ぎふ農業委員会 女性ネットワークでは、各市町にある農業委員会に向け、選任の際には女性の積極的な起用を促しています。男性視点とは違う女性目線も必要です。自立して農業に向き合う女性が少しでも増えていったらうれしいです。