岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

被災地でのボランティア活動で
防災・減災を広める重要性を痛感
防災活動がライフワークに
多くの人に防災の大切さを伝える


NPO法人防災士なかつがわ会 啓発グループリーダー 兼 相談役
黒田 ところ(くろだところ)さん(中津川市)

【2022年8月15日更新】

黒田ところさんは会社員として働きつつも、防災士や応急手当指導員の資格を取得し、中津川市を中心に小学校や中学校、子育て支援センター、学童保育所などにおける防災教室や応急手当講習会の講師を務めています。また、市内中学校の避難所マニュアル作成委員なども担い、「女性の視点」による避難所運営の向上に寄与しています。

防災の重要性を伝える
 NPO法人防災士なかつがわ会は2009年、前進である「防人会(さきもりかい)」として活動をスタートしました。その立ち上げメンバー7人のうちの1人が私です。途中「防災士なかつがわ会」に名称を変更し、2016年に行政とタイアップして活動していこうとNPO法人化しました。現在約100名超の会員が所属しています。「必ず来る災害」に備え、行政と協働した防災力の強化、人材育成を目的に、学童や子ども園、小学校や中学校をはじめ、企業や老人クラブ、民生委員会、社会福祉協議会などに呼びかけを行うなど幅広く活動しています。
 私が防災士の資格を取得したのは、中津川市が防災士の養成に補助金を出してくれたことがきっかけでした。さらに、2004年に起きた新潟県中越地震の際に、中津川市からボランティアとして現地へ向かい、震災の爪痕を目の当たりにしたことも契機の一つになっています。2011年に起きた東日本大震災の時も現地へ向かいました。とにかく、防災、減災を広める重要性を痛感しました。
 設立当初に目指したのは、さまざまな世代の人に防災に関心をもってもらうことでした。どうすれば関心を持ってもらえるか、講師として話をするだけでは伝えきれないのでは、と葛藤もしました。関心を持って聞いてもらった上で、帰宅後に家族間で話題にあげてもらうために、紙芝居を用いることにしました。以後、防災体験教室、避難所運営体験、模擬ガラス踏み体験、起震車による地震の揺れの疑似体験なども実施してきました。話す内容や言葉は年齢やレベルに応じて「簡潔に、わかり易く、具体的に」を心がけています。特に子どもが相手の時には、こちらがテンションを上げて向かわないと心に響かないようで「楽しく伝える」ことをモットーにしています。

自分の命は自分で守る
 何より、他人ごとでなく「自分ごと」として興味を持ってもらい、災害について考えてもらうことが大切です。「自分の命は自分で守る」を合い言葉に、命が助かるためには自分に何が必要か、普段からできる備えは何か、何が利用できるかについて考え、選択し、動いてみて、再び話しあうまでがセットだと考えています。命あっての物種と言いますが、命があってはじめて避難や生き延びるための行動が可能になりますし、無傷で動くことができれば、今度は他の人を助けることもできます。
 より具体的に想像するために、例えば「お風呂に入れない状況をどれだけ我慢できるか」「水はあるが食料がない状況をどれだけ我慢できるか」について考えてもらったりもします。そして何よりも重要なのは、実際にやってみること。災害の時、どうしたら簡単に料理ができるか、非常食も予め作ったものを提供するのではなく、実際に調理してもらいます。スーパーで段ボールをもらい段ボールトイレづくりを体験したり、子どもでも、自分にもできることがあると知ることが肝心なんです。

活動が報われる時
 コロナ禍に入ってから、これまでのように体育館などで多人数で集まっての訓練はできなくなりました。それでも小規模で換気をした上で、マスクを着用し講座を続けています。それでも、いつも通り「なぜ」「どうして」「どうすればいい」「何ができる」と質問をどんどん投げかけ、少しでも参加型になるように努めています。
 「助けて」と叫び続けるのは難しいけれど、笛一つを携帯しておくだけで命が助かるケースもあることを伝えたり、携帯の画面を見ずに連絡先を書き出す訓練や、鞄の中にあるもので役に立つものを確認しておくことも奨めています。また、家具転倒防止対策に協力したり、避難所運営マニュアル作成にも参加し、地域防災力の強化にも力を入れています。
 「子どもが家で防災の話をしてくれました」と保護者の方から報告があるとうれしいです。10年ほど続いている学童での活動では、年長さんが小さな子に率先して教えてあげる様子も見られるようになりました。「防災グッズを買ったら、一度背負って重さを実感してみてください」とも伝えるようにしているのですが、実際に確認してくれたお母さんから「とてもではないが、あの重さを背負ったまま、子どもの手を引いて避難所まで歩くのは無理だとわかりました。中身を分け、夫と子どもとでシェアしました」と聞いた時は、活動が報われたと思います。

好奇心を忘れずに
 子どもが独立して以来、自分のやりたいことをなるべくしていこうという意気込みで、ライフワークとして防災活動に携わっています。資料作りでは半ば徹夜になることもあり大変ですが、好きなことをやらせてもらっていると感じています。防災士としての活動は楽しく、それ自体が日常から切り離される時間になるので、他にことさら息抜きも必要としていません。
 この活動を続けていくのに不可欠なのは、自分自身が好奇心を持ち続けることだと思っています。「小さな光でもアルミホイルで反射させれば明るくなるんじゃないか」など、子どもの発想には驚かされることもしばしばです。子どもに負けないように、彼らが「なぜだろう」と思う前に私も「なぜだろう」と感じられる好奇心が重要になります。これからも、参加者のみなさんと一緒に楽しみながら、できる限り多くの人に防災の大切さを伝えていきたいです。