岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

みんなの暮らしに
当たり前に薬草がある生活
そんな日々を目指して、
薬草の魅力を
伝えています。


飛騨市役所  地域振興課 地域プロジェクトマネージャー
岡本 文(おかもと あや)さん(飛騨市)

【2022年8月15日更新】

地域おこし協力隊として飛騨市に移住し、市の『薬草ビレッジ構想推進プロジェクト』の中心となって活動してきた岡本さん。薬草の新商品開発、薬草商品登録制度の創設、薬草拠点施設「ひだ森のめぐみ」の立ち上げなどに携わり、現在は市の地域プロジェクトマネージャーとして、薬草の素晴らしさを広めるべく、公と民を繋ぐ架け橋を担っています。

薬草に導かれて飛騨へ
社会人になって最初の仕事は金融の営業でした。仕事にはやりがいを感じつつも体調を崩してしまいました。そんな時に癒してくれたのが植物でした。その後、ご縁があってフランスに渡ったのですが、日常に花のある生活に触れ、自分も花を飾る仕事がしたいと思い、5件の異なるスタイルの花屋で研修生として店頭に立ったり、カフェや城を飾ったりしました。帰国後も東京の花屋で仕事をしていたのですが、常に水に触れ、重いものを運ぶハードな仕事に、身体的な限界を感じてしまいました。
そんな時に出会ったのが1冊の本でした。その中の「飛騨古川に薬草料理を提供する老舗旅館がある」という一文に惹かれ、2018年8月に初めて飛騨市を訪れました。その時の料理は鮮やかでとても美味しかったです。『植物の力で体を整えて元気になりたい』と思いました。
 薬草のことを知るために少なくとも1年は飛騨市で過ごしてみようと心に決めた私は、薬草に関われる仕事がないものかとウェブで検索しました。するとある求人情報で飛騨市で『薬草ビレッジ構想を推進する地域おこし協力隊』を募集しているという記事を見つけました。ところがそこには「募集期間は終了しました」と書かれていたので、「もうすでに誰かそういう人がいるんだな」と思っていたのですが、その話を宿の主人にしたところ、その場で市役所に連絡を入れてくださいました。すると実はまだ該当者が見つかっていなかったことがわかり、あっという間に飛騨行きの方向へ進みました。あまりにとんとん拍子に進んでいったのと、飛騨の冬の寒さを乗り越えられるかと足踏みしていたのですが、最終的には市長からお電話をいただき、翌月の薬草フェスティバルに再度飛騨を訪れ、そのまま面接を受け、10月には移住していました。
飛騨の方々はみんな温かく迎え入れてくださり、こうして私の薬草のある暮らしが始まりました。

薬草を広めるため奔走
移住後は地域おこし協力隊として、薬草のことを勉強しながら、市内の薬草に関わる方々とお会いする日々が始まりました。飛騨市の薬草ビレッジ構想の一番の目的は市民への普及です。飛騨では昔から当たり前に生活の中に薬草が使われてきましたが、今では多くの人たちがそれを知らない現状がありました。
飛騨市の薬草の活用のポイントは「美味しく食べる」です。薬草というと、苦い、臭いというイメージがありますが、調理法によっては美味しく食べることが出来ます。そして、美味しくなければいくら身体によくても続きません。「薬草は美味しくて体に良い」ということを実感してもらえるように、薬草に触れられるワークショップを企画したり、薬草園にもなっている森のガイドや、首都圏でのオリジナル薬草茶づくりのワークショップなども行いました。実際に薬草茶や薬草料理を召し上がった方々が「美味しい!」と驚いてくださると嬉しくなります。私自身も日々に薬草を取り入れて元気になっていくのを感じています。

尊重し同じ方向を向く
薬草文化を守るために活動されているまちづくり団体は以前から市内にいくつかありました。それぞれの思いがあり、今までは個々で活動されていたのですが、各団体の目的や思いを尊重しつつ、「飛騨を薬草で元気にしよう」という同じ方向を向いて進んでいくことの重要性を感じ、協力し合える部分を模索してきました。
例えば、市内で広く薬草に触れることができる『飛騨市薬草フェスティバル』は1つの団体では実現できないことです。協力し合いながら、各団体の持ち味を生かせる方法を模索して毎年開催しています。
また、薬草の情報を盛り込んだ『ひだ森通信』という季刊通信を発行しています。これは、市民への薬草普及のためでもあり、各団体にお互いの活動を知ってもらうためでもあります。
『薬草商品登録制度』の創設もその一つです。地元に愛されている飲食店なども巻き込んで新商品開発に関わってもらえる仕組みづくりができないかと、薬草を美味しく食べたり、薬草を活かした商品を販売する店を増やし、その店先に共通のフラッグをかけて統一感を出しています。
そんな思いで、それぞれのやりたいこと、出来ることを、無理のない範囲で楽しみながら実現してもらえるよう、皆をつなぐ役割を担ってきました。
 そのような活動が実を結び、2019年には薬草の普及拠点である『ひだ森のめぐみ』を立ち上げることが出来ました。また、2020年にはこれまでの取組が認められ、『ぎふ女のすぐれもの』にも認定していただきました。これは私だけの力では決してできなかったことで、支えてくれる人たちがいることのありがたさを感じています。普段の暮らしにおいても、いつも気にかけてくれる人や、頂くものに対しての「ありがとう」という感謝の気持ちを飛騨に来てより強く感じるようになりました。

薬草を当たり前に
 地域おこし協力隊として3年間走り続けてきましたが、まだまだ道半ばです。卒業後の活動を考えていた時に、飛騨市で「地域プロジェクトマネージャー」の募集がかけられることを聞き、今までの活動を活かして、これからやりたいことを実現するチャンスをつかみたいと思って応募しました。それがかなって、2021年11月からは新たなポジション、新たな気持ちで、薬草普及の仕事をさせていただいています。
来年度は、市内の各地で定期的に薬草に触れられるイベントや勉強会を開催して、薬草で飛騨市をジャックしたいと思っています。また、薬草を広める活動に積極的に参加してくれる仲間も増やしていけたらと考えています。
 そしてゆくゆくは自分の拠点を作って、薬草好きが集まってものづくりをしたり、語り合ったりする場所にし、滞在型のツアーなどに繋げていけたらなと計画しています。最近古民家に住み始めたのですが、そこで理想の薬草暮らしができることを夢見ています。
 当面の目標は、市民の生活の中に当たり前に薬草がある豊かな暮らしを浸透させることです。私自身も、森や山を歩くのが日常になったり、身体の調子が良くなり、肌つやも良くなったと言われることが増えました。多くの方々を繋ぐ仕事は簡単なことばかりではありませんが、今後も大好きな植物に癒されながら、時々立ち止まることがあっても「やるしかない」と自分を奮い立たせて進んでいこうと思います。