岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

地元名産、富有柿だけで作る
「柿みつ」が話題に。
何気ないアイデアを商品化
さらには会社立ち上げと
パワフルに行動!


合同会社 三藤 フードコーディネーター
関口 結香(せきぐちゆか)さん(池田町)

【2022年8月15日更新】

岐阜県池田町をはじめ、岐阜県内で栽培される、富有柿。収穫した富有柿の中には、規格外となり市場に出回らないものも存在します。加工して有効利用したいと考えたのが池田町出身の関口結香さん。毎シーズン、規格外の富有柿を手に入れ試行錯誤すること10年。自然の柿の甘さが料理や飲み物を引き立てる、「柿みつ」の商品化に成功しました。

アイデアだけを頼りに岐阜県の岐阜県食品科学研究所へ
 池田町出身の私にとって、毎年冬になると柿の無人販売が道路沿いに並ぶのは見慣れた光景でした。ただ、同時に規格外の柿が山積みされていて、市場に出回らない光景も目にしてきました。ある時、九州に柿を使ったお酢があることを知り、このアイデアを生かして規格外の柿を有効利用できないかと考えました。
私は早速岐阜県の食品に関する研究をしている「岐阜県食品科学研究所」に相談に行きました。当時いらした職員さんが「発酵には酢酸菌が不可欠ですよ」と教えてくれ、酢酸菌を分けてくれました。のちに知ったのですが、岐阜県食品科学研究所はあまり個人が出向くような施設ではないそうですが、この出会いがなければ「柿みつ」は生まれていなかったと思います。
研究所の職員さんは「リンゴジュースを水で希釈して、水面に酢酸菌を垂らせば、やがてお酢になるのでは」とアドバイスをくださり、早速、実行に移しました。

適正な酸度、柿の加工。想像以上の難題にも直面
 お酢には酸度があり、規定値を上回らないとお酢と呼ぶことはできません。リンゴジュースでの成功を経て、柿の汁でも試してみましたが、酸度が足りず、青臭さが残りました。視点を変え、青臭さを消すため柿で甘い汁を作り酢酸菌を這わせてみました。やはり甘いお酢はできませんでしたが、この液が柿みつの原型となりました。「発酵させてお酢を生み出すのは素人では難しいと、青臭さを消すため柿から出る甘い汁に酢酸菌を混ぜては」とアドバイスをくださったのも岐阜県食品科学研究所の職員の方でした。

「柿みつ」を思いつきました。
 酸度が必要なお酢ではないものの、「柿みつ」ができるまでに10年かかりました。1シーズンごとに規格外の柿を格安で譲り受け、柿の皮が薄くなるほど熟成させます。熟成が済んだらスプーンで中の果肉だけをくり抜きます。くり抜いた果肉を集めて冷凍、その後一度、火にかけて熱を入れて、再び冷凍します。その後、一晩置いておき、果肉からぽたぽたと落ちる汁が、「柿みつ」のもとになります。一晩置いておく最後の工程は、室温も大切です。寒くて果肉が少し縮んでいないと汁に濁りが出てしまいます。柿100kgあっても、柿みつ1本(180ml)の50本分も取れず、最初は作業の大変さにとまどうこともありました。

柿みつに欠かせない福祉施設や加工業者の協力
 柿みつの第1号は大垣にある「ソフトピアジャパンセンター」で開かれた「ママズフェスタ」で販売しました。瓶も自分たちでデザインした手作りでした。手ごたえを感じるとともに、よりきちんとした商品にしたいという思いが芽生え、母と妹と3人で合同会社 三藤を立ち上げました。
 課題だった作業量は、池田町にある福祉施設の「ふれ愛の家」に相談しました。果肉をくり抜く作業は刃物ではなくスプーンで行うという利点もあって、「ふれ愛の家」の利用者様が作業を手伝ってくれることになり、人手の問題を解消できました。
 また、柿を同時に効率よく熟させるため、果実加工の業者にも相談しました。それまで自然任せでしたが、一度に同じ量を熟成させることができ、効率が改善されました。

オリジナルレシピを生み出して認知を広げたい
 柿みつは通信販売のほか、「道の駅パレットピアおおの」でも販売しています。最初は1本180mlでしたが、もっと手軽に買えたらと考え、今は1本100mlの2サイズを用意しています。180mlでは1本で柿を15個使っています。柿みつはミルクに入れてもいいし、料理ならニンジンサラダのキャロット・ラペとサッとかけるのがおすすめです。ドレッシングの油、酸味にも合うと思っています。甘いものにも相性が良く、バタートーストにかければ、よりコクと甘さが感じられます。料理にどう使えるかをお客様に提案していくことがこれからの課題だと思っています。販売を始めて2022年で5年となり、これからは「柿みつを加えるからこそ完成するオンリーワンのレシピ」を考えていきたいです。