企業主導型保育施設を営む株式会社リリフル。代表取締役の金森律子さんは、看護師常駐保育所の開設や、ママの社会復帰を支援するプロジェクト「ママビス」の発足など、子育てしながら働く女性を応援する事業を手がけてきました。それらの実績が高く評価され、2020年には全国商工会議所女性会連合会が主催する「女性起業家大賞・スタートアップ部門奨励賞」を受賞しています。
看護師になると決意
小学生の頃、アニメの「キャンディキャンディ」に憧れて、看護師になると決意しました。高校を卒業後、住み込みで働きながら看護学校へ通う生活を送り、正看護師の資格を取得しました。田舎の小さな個人病院で勤務しているうち、先進的な治療ができる大きな病院で多くの命を助けたいと思うようになりました。その後、公立の大きな病院に移って7年間働きました。三交代勤務は大変でしたが、とてもやりがいのある仕事で、今でも大好きです。将来は、看護師としての社会貢献事業もしたいと考えています。
子育ては自分育て
長女の出産を機に大垣へ引越してきました。知らない土地で、身内も友だちもいないなか、何もかもが初めての育児は不安と戸惑いの日々でした。主人も朝早くから出勤し、日付が変わる頃に帰宅する毎日で、ワンオペ育児をしていました。子どもの様子や毎日の出来事を話すのもままならないくらい、すれ違いの生活が続きました。とても孤独な育児生活を送っていたのを、今でも鮮明に覚えています。
そんななか、いち早くママ友をつくりたいと、長女を連れて、さまざまな赤ちゃん向けの講座を受講しました。そのなかにベビーサイン講座がありました。まだうまく話せない赤ちゃんに、手話やジェスチャーを使って「お話し」する、親子のコミュニケーションツールです。実際に娘にやって見せると、すぐに覚えて返ってくることに感動しました。子どもの無限の可能性を感じるとともに、「子育ては自分育て」とも気づいたのです。
そこで、自分と同じような状況下で子育てをしている人のために、ベビーサインの講師の資格を取得し、講座を始めました。約10年間、講師を続けて、多いときには年間800組の親子さんたちに出会い、たくさんの経験と仲間を得ることができました。また市民活動団体として、不要なものを交換し合う「かえっこバザー」や子ども服のバザーを開催するなど、子育て世代のママたちに向けた、ボランティア活動もしていました。
女性の挑戦を応援
次女が保育園へ入園するタイミングで、10年ぶりに看護師として復帰。子どものお迎えにすぐ行けるよう、パートで働いていました。そんなある日、企業主導型保育事業の応募の話を聞き、思い切って申請しました。まさか自分が会社を設立して、保育所を経営するなんて思ってもみませんでしたが、子育ての経験やキャリアを生かせるうえに、何より赤ちゃんや小さな子どもが大好きなので、不安よりもワクワク感の方が強かったです。そして今、毎日小さな子どもたちに囲まれて、幸せです。
弊社では、かつて保育士に憧れていた人や、子どもに関わる仕事に就きたい人のために、チャレンジ制度を設けています。たとえば保育士受験料の全額補助や、受験のための参考書購入についても補助を行っています。
ダブルワークも認めています。女性は、働くことで成長し、働くことでより輝けます。得意なこと、好きなことを仕事にしつつ、弊社でも仕事をする。自身のライフスタイルに合わせて、うまくバランスをとりながら働いてもらいたいと思っています。
こうした職場環境の整備を進めてきたことで、2019年には岐阜県の「新はつらつ職場づくり宣言」登録事業所として認められました。さらに2021年2月、女性が働きやすい環境を整えてきたことに加え、保育アプリの導入などのオリジナル性も評価されて「岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業」に認定されました。
スタッフと娘たちと
私の日常は、スタッフと二人の娘たちに助けられています。
娘たちは、私がいない間、率先して家のことをやってくれます。私の仕事を理解し応援してくれていて、何より家のなかでは、仲良しな娘たちの笑い声が絶えません。精神的につらくしんどい時でも、子どもたちのやさしさと笑顔に助けられています。
保育所は私一人ではとてもできない仕事です。どんどん新しい保育所の姿を追求し、トライして、スタッフとともに成長していきたいです。また、スタッフ一人ひとりがより輝く会社へ飛躍できるよう、日々頑張っていきたいとも思います。
子育て支援は、保育所の整備だけではなく、さまざまな方面のサービスや支援が必要です。今後は新たな課題に目を向け、取り組んでいきたいと考えています。
2021年度に入り、弊社の保育所の提携企業さまと、SDGsの活動「マーブルクレヨンプロジェクト」を始めました。企業さまの要らなくなった廃材と、家庭で使わなくなったクレヨンを再生して、市内の子どもたちへ無料で贈る取り組みです。子どもたちが、自身の行動や体験を通して「もったいない心」を育む一歩になればうれしく思います。この大垣での取り組みがモデルケースとなって、全国に広がってほしいと願っています。