岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

落ち込むこともありますが、
失敗も学ぶことができたと
すべてプラスに捉えて、
次に生かしていけるよう
心がけています。


アーティスト
浦上 愛子(うらかみ あいこ)さん(大垣市)

【2023年6月15日更新】

大垣市でアーティスト活動をする浦上愛子さん。文字だけを使って絵を描く、独自の手法を「Moji Base art®(通称MojiBa®)」と呼んでいます。依頼を受けてペットの絵などをデザインする傍ら、環境問題への関心も深く、メッセージ性のある作品を発表し続けてきました。海外の展示会にも出展するなど、活躍の場も広がっています。

留学先でアートを専攻
 アメリカに留学中、高校と短大でアートを専攻していました。いつかそういう職に就けたらな、と思っていましたが、どうすればよいのかわからず、20代は英語の講師などをしていました。結婚して、子どもが生まれ、その子が保育園に入るタイミングで、やってみようかと思い立ち、夫に相談したら「やってみたら」と背中を押してくれました。とりあえずやるだけやってみて、もし形にならなかったら、そのときに考えればいいやと始めたのですが、結局これが自分にとってやりたいことだったんだ、と改めて感じています。
 絵を学ぶために留学したわけではありません。海外ではアートに力を入れている学校が多く、昔から絵や音楽、映画などの芸術全般が好きでしたので、基礎から学んでみようと思ったのです。今「MojiBa®」と名付けた、文字のみを使う技法で作品を描いていますが、学校で出された、ある課題の制作がきっかけとなりました。
 実家で暮らしているワンちゃんのことを思い、その名前の文字だけを使ってワンちゃんの絵を描きあげたのです。自分なりに手応えもあって、評価もされました。課題の主旨とは、少しずれていたみたいでしたが。

喜んでもらえる作品を
 現在は、ワンちゃんを飼っている方からの依頼で、その似顔絵などをワンちゃんの名前で描く仕事が多いです。ワンちゃんに限らず、動物を題材とすることにこだわってきましたが、最近は赤ちゃんから大人まで、ときには車も描くようになりました。人が好きと思っている何か、愛している対象なら、その人のために描けるな、と今は思っています。
 提供いただいた写真を元にして描いていきます。できあがった絵を見て、飼い主の方から「やっぱり、うちの子が一番可愛い」と喜んでもらえるのがうれしいですし、やりがいにもなっています。たとえば、ふわふわの毛のワンちゃんの場合は柔らかいフォルムのフォント(書体)を使ったり、密な部分を表現するために文字の間が詰まったフォントを探したりと、こだわって選んでいます。
 最初は白黒でやっていましたが、元々カラフルなものが好きなので、色を取り入れることにも挑戦し始めました。でも、どういうスタイルにしていくか、難しいところです。

子どもに気づかされて
 地球の環境問題などには、昔から関心を持っていたのですが、それをアートという形で発信していこうと思ったのは、子どもの言葉が大きかったですね。
 この話をすると、いつも涙が出てきてしまうのですが、うちの前に用水路があって、飛んできたゴミが落ちていることがあります。ある日、子どもがそれを拾い出したので、母親目線でつい「汚いから、そんなことしなくていいよ」と言葉をかけたら、「これが海に流れて行ったらカメが死んじゃう」と涙ぐみながら訴えてきたのです。
 以前、英語系のYouTubeを子どもに見せていたとき、カメが苦しんでいる場面が出てきました。なぜ苦しんでいるのか、子どもはわかりません。人間が捨てたゴミが海に流れ着いて、それを食べたカメが苦しみ、死んでしまうこともあるの、と教え聞かせました。そう話したことを忘れていたのですが、子どものひと言に気づかされて「ごめんね」と。
 そんな子どもがゴミを拾う姿を見て、私も行動しなくてはと、カメの絵を描き始めました。文字を使って描く作品ですから、そこにメッセージを込めることもできます。遠くから見ると絵ですが、近くに寄れば文字で描かれていることがわかり、そこにメッセージを見つけて、少しでも心に刺さってくれればいいな、と思っています。

親子留学が大きな夢
 子どもは男の子がふたりで、6歳と4歳になります。夫は土、日、祝日も仕事があり、休日に子どもたちの相手をひとりでするのは、なかなか大変です。子どもたちには、早いうちに世界を見せてあげたいと思っています。
 私は高校に入学したとき、卒業した先に何ができるのだろう、何になるのだろうという問いが自分のなかにあって、どこか馴染めないと感じていました。留学の話がたまたまあって、それでアメリカへ行きました。
 渡米してからは、自分にしかできないことをするためには頑張るしかなく、英語も本当に勉強しました。アメリカはやったらやっただけの結果が出る国です。学校の先生も教えるのではなく応援してくれる感じで、それが私には合っていました。
 そうした体験はできるだけ早いほうが良いと、子どもといっしょに親子留学するのが夢です。仕事の面では、文字だけでなく、廃材などを使って直に訴えかけるような作品もできたらいいなと思っています。個展も開きたいですね。