岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

ふるさとで、住む人が気持ちよく
過ごせるカフェを作りたかった。
周囲に助けられて夢を叶えました。
これからも自然体で、
末永くお店を続けていきたい


カフェ「cafe Ma Biche」経営
亀山 久美子(かめやま くみこ)さん(関市)

【2023年6月15日更新】

関市の商店街中心部で、小さなカフェを営む亀山久美子さん。関西の飲食店で13年働いたのちUターン。実家を改装し、焼き菓子メインのお店を開きました。かわいらしい店先に並ぶ、手作りのキッシュやマフィンは、毎日完売するほど地元の人々に大人気。子育てとカフェ経営を両立しながら、起業に関する講演活動や、地元の学生との交流など、忙しい毎日を送っています。

関西で修業しUターン
 関市生まれの関市育ち。中学生くらいの頃からお菓子づくりが好きで、友達のバレンタインのチョコを代理で作るなどしていました。都会で腕を磨こうと、大阪の製菓学校へ進学し、有名パティスリーがたくさんある神戸で就職しました。
 将来の目標はパティスリー開店でしたが、就職先でパン作りやレストランなどいろいろな現場を体験するうち、時間帯を気にせずトータルで食事が提供できる業態に魅力を感じ、いつか店を持つならカフェにしようと思い描くようになりました。神戸ではカフェの店長を任されるまでになり、充実した毎日を送っていましたが、祖父母の介護のため生まれ故郷の関市へ戻ることになりました。
 いろいろな年代層の人たちが気軽に集まれるお店を作りたい、という神戸時代から思い描いていたスタイルで、地元でのカフェ開業を決意。昔から楽天的な性格で、何の人脈もツテもない場所でも「腕があれば、お店はどんな土地でも出来る」という、「なんとかなるさ」の精神で、実家の庭先で移動販売車形式でのスタートを切りました。

人とのご縁で今がある
 10年以上離れた故郷での開業。知り合いもわずか、住む人の好みや人柄も関西とは違い、初めは不安もありました。ただ、実家を改装してカフェを始めたので、通勤時間もゼロ、家賃もかからないのは、自分のペースでいろいろやれてラッキーでした。カウンターだけの屋台カフェなど試行錯誤しましたが、業態を落ち着けて、今は夫とふたりで切り盛りできる規模に固めて営業しているので、大変だと思ったことはありません。
 カフェ経営に加えて、地域の人が楽しめることをなにか出来ればと、善光寺の境内をお借りして「おしゃべりブランチマーケット」を知人と立ち上げました。野菜、アンティーク雑貨、お菓子、手作りアクセサリーなどが並ぶ、平日開催の、のんびりとしたマルシェですが、おかげさまでリピーターも多く、地元の人たちに喜ばれています。地域おこしというより、そこに暮らす人が心地よいまちづくりをしたいという気持ちが強く、カフェもマルシェも、そんな自分自身の理想を形にしたものだと思っています。
 市役所の方やNPOの方から依頼されて、開業セミナーでの講師や、大学生対象の講座、座談会などにも機会があれば伺っています。私の活動に興味を持ってもらえているのと思うのですが、私の方こそ、関で過ごす学生や希望いっぱいの起業家の話を聞き、交流を持てるのがうれしく、楽しんで関わらせてもらっています。子どもの通う小学校の校長先生からも頼まれて、地域活性化の取り組みをしている市民としてお話をさせていただき、それがきっかけで児童がお店に遊びにきてくれるなど、地域の人たちと繋がる機会が多い今の環境はとても恵まれています。

趣味も仕事も自分流
 家族は夫、小学生の子ども、母、私の4人家族です。子育てしながらのカフェ経営がスムーズにできたのも、母の協力あってこそですが、自宅と職場が同じという環境は私にはとても合っています。自宅と職場を兼ねるのがいいのかどうか、という話は同業者の中で出る話題ですが、カフェの仕込みをしながら家事も出来ますし、公私両立は苦ではありません。一日24時間は限られているので、臨機応変に頭を切り替えて仕事とプライベートを混然一体でこなしています。若いころ、料理の修行でフランスに行ったとき、言葉が通じず不便な中、通じないならどうすれば伝わるか、これがダメならこうしてみよう、と機転を利かせてやってみた経験が、自分の考え方の基になっているのだと思います。
 多趣味ですが、いちばん好きなのはガーデニング。カフェの前庭も自分で手入れをしています。自己流ですが木の剪定もして、テラス席に落ちる木漏れ日が気に入っています。それ以外にもいろいろやりたいことが多く、家族で楽しむロードバイク、夏はボディボード、10年前からご近所でのんびりと習っているウクレレなど、自分の気分で選んで気分転換をしています。
 カフェ経営も趣味も、肩の力を抜いて携わるのが長続きの秘訣かもしれません。

地元で愛される店を
 今後はテイクアウトのお惣菜を増やして、関の働くママさんをフォローしていきたいという目標があります。また、ここでカフェを開いて15年、スタートの頃に来てくれていた小学生の子が、大人になって、子どもを産んでいたり、世代を超えて訪れてくれることがとてもうれしいです。おばあちゃんになってもこの場所で、小さくても老舗と呼ばれるようなお店をやれていたら理想ですね。
 座右の銘というほどではありませんが「百聞は一見にしかず」という言葉はずっと心にあるキーワードです。情報だけを鵜呑みにせず、自分の目と心で確かめて、地域の人と繋がりながらこれからも柔軟に、何事にも向かっていきたいですね。