「たせっこ会」は、田瀬小学校の閉校決定をきっかけに、廃校後の活用や、過疎化が進む地域の未来を考える仲間が集まって結成されました。総務省の「異能vationプログラム」への参加をはじめ、年々活動の幅を広げています。代表の伊藤実加さんは、ICTを用いた地域創生活動などにも取り組んでいきたいと意欲的です。
小学校閉校を前にして
私は田瀬に嫁いできて約20年になります。その間に田瀬保育園は下野保育園と合併、県立恵那北高等学校は県立中津高等学校と統合、そして2020年、田瀬小学校が閉校となりました。田瀬中学校は、さらに前に統合されています。
この先もずっと残ると思っていたものが、なくなっていく。私たちが残ると勝手に思っていただけで、地域から消えてしまう現実を目の当たりにしてきました。だからこそ、小学校の閉校が決まったとき、住民の力で何かできないかと、地域の未来について考えるようになりました。
田瀬はとても穏やかな土地で、人柄も良く、大好きな場所。そんな田瀬を守っていきたくて、同じ思いをもった地元の友人たち6人で立ち上げたのが「たせっこ会」です。閉校後の田瀬小学校の活用と、子どもたちが閉校をプラスに考えられるようにすることの2本立てで活動を始めました。
閉校に先立ち、子どもたちには「夢の田瀬小学校」と題して、自分たちが理想とする未来の小学校像を描いてもらい、その絵は1年を通して地域で展示回覧しました。
予算や防犯上の理由、立地条件などから、小学校の校舎活用はすぐには難しく、建物の老朽化も問題であるため、現在は廃校跡地の利用検討について、田瀬地区の役員として、田瀬小学校を含む4校統合跡地対策委員会に参加しています。
地元の神社の協力も
たせっこ会のテーマは「100年後もこのままで」です。平和で穏やかな地域性を守りつつも、時代の流れは止められません。無理矢理残すのではなくて、小さな変化を重ねていきながら、100年後も田瀬の良さがそのままであってほしいなと思っています。そのためにも、小学校のことだけに限らず地域全体に目を向けて、地域に浸透するような取り組みも大切だと活動の幅を広げてきました。
田瀬南宮神社との共同によるワークショップもそのひとつです。地域のためという、たせっこ会の活動に賛同していただき、神官さんの協力を得ました。ワークショップでは、地元のお年寄りに教えてもらいながら、子どもたちが竹あんどん作りに挑戦。後日、その竹あんどんを点灯して神社に飾る「竹灯りの夕べ」と「七夕飾り」を開催しました。
この秋に地元で開かれた「ふくおかふれあい祭り」にも初参加して、会の活動内容を紹介するパネル展示のほか、クラフト作家や商いをするメンバーの作品販売なども行いました。
家族へも活動報告を
経営コンサルタント会社の書類作成サポートや、一般社団法人ジバスクラム恵那などの仕事に携わりながら、たせっこ会の代表をしています。家庭や仕事先にも活動の相談や報告をしており、異なる視点からの意見や情報を交換することで、新たな発見やお互いに協力し合うことができると思っています。
高校生と小学生の息子2人、夫、夫の母との5人暮らしですが、子どもたちは、活動を見て、地域や社会についても関心を持ち始めたようです。新聞を読んだり、SNSのチェックをしたり、活動も手伝ってくれます。
趣味は読書で、好きな作家は宮部みゆきさん、池井戸潤さんです。池井戸さんの『ハヤブサ消防団』の広告に使われている風景写真は、田瀬の田園風景です。とても素敵なので、ぜひ一度ご覧ください。楽しみとしては、ペットも泊まれる宿泊先を探して、愛犬と家族旅行を楽しんでいます。
外へ発信する活動も
地域に向けた活動に加え、外への発信として2020年に「異能vationネットワーク拠点」に名を連ねました。「異能vation」プログラムでは、毎年さまざまなアイデアを募集するコンペティションが行われています。2021年には「ジェネレーションアワード部門」へ応募した結果、たせっこ会から5つのアイデアがノミネートされました。
プログラムへの参加が刺激になり、苦手なICT分野にも挑戦していきたいと思っています。仮想空間でアバターによって活動する「メタバース」を今勉強中です。
現在、たせっこ会のメンバーは12人。上は72歳から下は38歳と、幅広い世代の住民で構成されています。会では、旧田瀬小学校の清掃活動なども行っていて、メンバーの家族や地域の方々の参加もあり、活動が地域に定着してきたと感じています。