岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

防滑施工で安全性を高めて
現場の働きやすさも改善。
目標は女性がどんどんと
建設業界に進出してくれること。


株式会社日孝T&K 代表取締役
加来 真奈(かく まな)さん(可児市)

【2023年6月15日更新】

「女性にこそ建設業の魅力を知ってほしい」と目を輝かせて話してくれた加来真奈さん。
防滑施工を行う会社の代表であると同時に業界の魅力を女性に向け発信することに積極的です。
「情に厚く、女性社員を守ってくれる」と社員からの信頼も集めています。

建設業の魅力をPRしたい
 私は建設業業界で働いて20年以上経過しましたが、実は子どものころの夢はピアノの先生でした。某芸術大学 音楽学部でピアノを学び、卒業後は実際にピアノを指導していました。
 大きな転機は20代後半。結婚を機に、夫が住む可児市へと移り住みました。日孝建設有限会社を営む夫から「見積書を作ってほしい」と頼まれました。最初は軽い気持ちでのお手伝いだったのですが、見積書を作るための建設用語に悪戦苦闘。床堀(とこぼり)など、たくさんの建設用語を知るために、私は自分の考えで「言葉を覚えて、理解するためには、私自身が現場を見ないといけない」と思い立ちました。
 造成、外構、舗装など、いろいろな現場を周り、そこで働く人と話しました。年齢層は10代から70代まで幅広く働いていて、今は外国人の方も珍しくありません。年齢も国籍も違うけれど、力を合わせてチームワークでモノをつくる。そこに魅力を感じて、「自分もやってみたい」と思いました。水が合っていた、とはこのことだと感じています。

女性にこそ知ってほしい
 建物を建設するためには、更地にするための伐採、そして伐根から作業は始まっていきます。次に床掘をして生コンクリートを流す。その後に土を入れて造成へ。土台部分ができたら建物の基礎工事へ進んでいきます。簡単な説明ですが、これらはそれぞれの技術を持った職人さん同士が、現場で連携して作業にあたります。人間力が必要な仕事だと思います。
そんなところに惹かれて日孝建設有限会社で働き始めたものの、今よりも働く女性は稀な存在でした。「こんなにも魅力的な建設業を女性にも知ってほしい!」と考えた私は、可児市でのイベントにブースを出展。建設業界の魅力を伝えるために動き出しました。
 数年後の2011年、東日本大震災が起きました。後日、友人がとある記事を読ませてくれました。そこには東北の地元建設業が協力して、災害救助に派遣された自衛隊の方などが被災地に入るための道を整備した、ということを伝えるものでした。
建設業は普段から、いろいろな人と連携する仕事。だからこそ災害時に連携して、人や地域を守れる。当たり前にある道、家は建設業があってこそ。やっぱり魅力的だし、欠かせない仕事だとの思いを確信したできごとです。

女性がもっと建設業へ
たとえば造成工事があったとします。建物が通学路に面していれば、子どもの通学があるからと低木を勧められる、住居の場合なら干した洗濯物を視界から隠す遮断物を提案できます。建設業界には女性が働く場所、ニーズは必ずあります。
女性だからできることが建設業にはあります。可児市商工会議所が主催する「産業フェア」では重機を展示、可児市で高校生向けに行う「可児の企業魅力発見フェア」でも、女子高校生がたくさん質問に来てくれて、手ごたえを感じています。高校生からは「現場作業の時のお手洗いは」、「勤務中にメイクは直せますか」といった質問があり、私は「それをクリアすれば入ってくれるかもしれない」と前向きに捉えています。実は重機を展示してリアクションがいいのは、男性より女性。今の重機は窓ガラスには紫外線カット仕様、エアコン付き。昔に比べて働きやすくなっていて、私自身、重機を操縦しているとテンションが上がります。
岐阜県では、建設業で働く女性同士のつながりがとても深いと感じていて、それは自慢でもあります。時々、女性の友達と現場で会うと「わーっ」て、お互いにうれしくなって手を振り合うこともあります。そんな場面がもっと建設業の現場で増えてほしいです。

防滑への取り組み
私が代表を務める株式会社日孝T&Kは、防滑(ぼうかつ)について取り組む会社として2017年に設立した会社です。歩道橋、病院玄関やスロープ、通行路などで滑って転倒することを防ぐグリップの施工が主な事業内容です。もとは夫がある展示会で、瓦を扱う会社が滑り止め瓦を展示していたことに惹かれました。建設現場の近くを歩くと、鉄板を敷いてあることを目にしたことはありませんか。工事現場の鉄板も、特に雨の日は転倒の危険が高いです。業界も高齢化が進み、私は技を持った年上の世代が「歩くのが大変で、転倒も怖い」という理由で引退する姿を見て、何度も悲しい気持ちになっていました。技術を次に伝える場を失うことでもあるからです。
夫から展示会での話しを聞き、課題を解決できるのはこれだと考えました。代理店になるとともに、防滑だけに取り組む日孝T&Kを設立しました。ほかの業務と並行していたら進まない、自分を追い込む意味もありました。ですが、会社を設立した時も、どうやって滑り止め瓦の技術を応用できるかのプランはゼロ。でも、そんな時にいろいろな現場の人がたくさんアドバイスをくれました。みんなが困っていた課題でもあったのです。
その結果、滑り止め瓦に使う瓦材を粉末にして、そしてコンパネ(合板)下地に塗る方法を考案しました。こうして、工場や通行路、あるいは住居内部にも施行できる今の形が生まれました。
株式会社日孝T&Kは小さな会社ですが、私を含めて働くのは女性が主体。こうやって女性が主体の建設業界の会社があることで、少しでも入りやすいと感じもらえたらうれしいです。若い世代に、女性に、建設業界に興味を持ってもらうことが目標です。