岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

置かれた場所で咲く。
田舎に住んでいることを
悲観するのではなくて、
ここにある良いものを
見つけてやっていきたい。


加子母森林組合
安江 愛子(やすえ あいこ)さん(中津川市)

【2023年6月15日更新】

加子母(かしも)森林組合が運営する「モクモクセンター」の店舗運営を担う、安江愛子さん。地域資源の活用にも取り組んでおり、ヒノキ葉の精油を使った商品の開発や、農泊事業の推進などにも携わってきました。また、観光地域づくり法人「Meets Nakasendo 合同会社」の創業にかかわり、地域の魅力を生かした事業の構築も目指しています。

違う分野からの転職
 加子母で生まれ育ちました。高校卒業後は名古屋の学校に進み、地域を離れました。就職も名古屋で、イベント関係の会社で働いていましたが、祖母が高齢になり、こちらに戻って実家から通うことにしました。往復約4時間をかけての通勤も、大好きな仕事でしたので、苦ではありませんでしたね。
 飽きたわけでも、嫌いになったわけでもないですが、薬膳を勉強したかったこともあって、ひと区切りつけようと退社しました。国際薬膳師の資格を取得しましたが、それを仕事にすることなく実家にいたところ、加子母森林組合が人材を募集しており、一度面接をと誘われたのです。
 木材のことなどまったく知識がないことを伝えると、当時の組合長は「分からないほうがいい。うちに欠けている部分を補ってほしい。分からないところは徐々に覚えてもらえればいいから」と採用され、勤め始めて8年目に入りました。
 組合直営の「モクモクセンター」で、木工製品などの販売を担当するほか、広報として外に出てPR活動やイベントでの物販などもしています。

多くの人たちと出会う
 名古屋の会社に勤めていた頃は、こちらに住んでいても、ほとんど知り合いがいませんでした。それがヒノキのエッセンシャルオイル製品の開発や農泊事業を進めていくなかで、いろいろな人と知り合う機会が増えていきました。「Meets Nakasendo 合同会社」も、中津川や恵那地域で活動されている方々と出会い、観光で地域がうまくまわっていくような仕組みづくりを考えていこうと、意気投合した6人で始めたものです。
 以前とはまったく異なる仕事に就いたので、ご縁も当時とは違う世界の方とつながっていくとばかり思っていました。ところが、イベントで使う木工製品の問い合わせが入り、20年ぶりくらいに、かつての仕事でかかわりのあった方と再会しました。そんな経験もたびたびあって、「ご縁はあまり遠いところに行かない」と聞いた話は本当だなと実感しています。人とのつながりができていくことが楽しく、大切にしたいと思います。
 出会いを機に協力してくださる方も多く、自分ひとりでは思いつかなかった形や、面白い方向に転がっていって、予想外に良い仕事ができることがあります。
 また、田舎では子育てなどでキャリアを止めてしまう女性も少なくなくもったいないですね。男性でも女性でも同じように継続して仕事をする環境が、もっと整っていけばいいなと思っています。

旅をするのが息抜き
 旅行や音楽が好きです。コンサートに出かけつつ、旅をするのが息抜きでもあり、情報収集にもなっています。旅行は仕事とまったく関係ない友人といっしょに、お互いに自分の時間も大切にしながら、旅を楽しむようにしています。コロナ禍で最近はあまり行っていませんが、海外にもよく行きました。旅先での体験、出会った方々、友人との会話など、それらすべてが今の私の引き出しになっています。
 普段の休日はできるだけメールは見ないようにしています。畑をやったり、山に入ったり、薬草を摘んでお茶にしたりと、ゆったりと過ごします。私は「まとめて休みを取ります」と宣言していますので、暇な時期を選び、仕事の段取りをして休んでいます。
 その人がいないとできない仕事は、仕事ではないと考えます。その人がやったほうがうまくいくことはあっても、いなくてもできる状態になっていないと、会社としては機能しないと、以前の仕事で学びました。必ず誰が見てもわかる仕事にすることが大切です。みんながレベルアップして、みんなで補えるようになればと思っていますので、部下のみんなにも「そうして休んでいいよ」と話しています。

持続可能な地域へと
 かつては好きなことを仕事にしていましたので、当初は木に興味がわくかどうか分からず、どこか自分のなかに壁を作っていました。どうしようかなと見回したとき、香りや観光などの突破口が見つかり、人と知り合うことも増えました。経験を生かせる点もあり、特別なことはできないかもしれませんが、それなりにいろいろな可能性があると今は感じています。
 100年後にも加子母という地域が地図に残っていて、人が住んでいることが切実な願いです。みんなが無理なく、楽しく生活できる形が残せるといいなと思っています。そのためにも、地域に雇用が生まれるような仕掛けを作っていきたいと、森林サービス産業にも着目しながら、取り組みを始めています。明治座の活用を含めて、文化的な要素も取り入れつつ、加子母に居ながらにしてにして楽しい場所にしたいですね。