岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

いつもお客さまには
気持ちよく帰っていただけるよう
女将として心がけてきました。
人と人のつながりを
大切にしたいなと思っています。


岩村城址観光株式会社 岩村山荘 取締役・女将
堀井 あい子(ほりい あいこ)さん(恵那市)

【2023年6月15日更新】

日本三大山城のひとつに数えられる岩村城の登城口に位置する旅館「岩村山荘」。名物の「戦国料理」のほか、山菜、鮎、松茸、ジビエなどを囲炉裏で味わう季節料理が人気です。女将の堀井あい子さんは、食事メニューや宿泊プランの企画などにも携わりながら、心を癒やす旅館として日々、温かく丁寧な接客に励んでいます。

最初は戸惑いばかり
 夫とは紹介で結婚に至ったのですが、当時、私は名古屋でOLをしていました。出身も名古屋で、岩村のことは知りませんでしたし、旅館業についても全くの無知でした。振り返ってみても、いろいろなことに戸惑ってばかりいました。
 まず気候があまりにも違っていて、岩村の寒さに驚きました。名古屋では雪が積もることは、数えるくらいしかなかったためです。土地に慣れるまでに、少し時間がかかりました。また、昔から何代も続く家で、夫の両親や祖父母、妹さんなど、大家族に加わることも初めてでした。
 私が結婚した時代は、結婚後も働き続ける女性はまだ少なくて、友人のほとんどが専業主婦でした。その一方で、私は子育てをしながら働かなくてはならず、友人たちとの違いが辛いと感じたことも、かつてはありました。
 でも今では、頑張って続けてきて良かったな、と思っています。大家族ですから、子育ての面でもすごく助けていただき、子どもたちものびのびと育ってくれました。息子は会社を立ち上げて、自宅を拠点にしながら、東京へ行ったり名古屋へ行ったり飛び回っています。娘は就職して名古屋で暮らしています。土、日が休みなので、こちらが多忙のときは手伝いに来てくれて心強いです。

人との出会いが魅力
 小さな旅館なので、何でもやらなくてはいけません。経理は夫がしていますが、それ以外の現場の業務は、ほぼ女将の仕事です。お客さまの応対はもちろんのこと、季節に合わせたお料理の内容、献立を板長さんと相談して考えたり、宿泊プランをネットに掲載したり、掃除もします。接客は気遣い、心遣いがとても大切ですので、常に心して臨んでいます。
 いろいろな方と出会えることが、この仕事の魅力です。普通に過ごしていたら、これほど多くの方と出会うことはありません。NHKの連続テレビ小説「半分、青い」の放映時には、毎日100人くらいのお客さまが、お昼を食べに来ていました。今はネットをご覧になった新規のお客さまも増えましたが、うちはリピーターの方が多くて、支えていただいています。
 ただ、ネットは難しいと感じています。同じように接客をしていても、お客さま個々で受け取り方は違ってきます。それが口コミとしてネットに書き込まれ、誘客につながることもあれば、逆にマイナスになる場合もあります。本当に難しいと思います。
 当館のお土産に、手作りの「しそ味噌」があります。朝食でお出ししていますが、お客さまからの評判も良く、帰りに購入されたり、取り寄せられたりしていて、2022年11月には、恵那らしさを伝える特産品の詰め合わせ「発酵のまち大五味(だいごみ)セット」のひとつに選ばれました。

自給自足にあこがれ
 跡継ぎを早めに決めたいです。候補は長男ですが、今は自由にやらせています。何十年後には継ぐと本人は言っていますが、経験を積むためにも早いほうが良いと考えます。「継続は力なり」と自身に言い聞かせている夫の姿をよく見かけます。代々続く旅館に生まれた夫らしいと思いますし、だからこそ、これからも続いてほしいです。
 私は「笑う門には福来たる」を信条にしています。大病をした経験から、健康に気を配るようになりました。「笑うと免疫力があがる」と本に書いてありましたし、普段から笑っていると、健康面に限らず、すべてが良い方向に行っている気がしています。お客さまも、女将が笑顔でいるほうが良いですしね。
 自給自足の生活にあこがれていて、畑などをやってみたいです。自分で野菜を育てたいと思うのも、私が健康を意識している延長にあるのかもしれません。病気になって価値観が変わったと思います。小さなことでも幸せを感じるようになりました。

コロナ禍の変化に対応
 コロナ禍になって、お客さまの層が変わりました。以前はゴルフに来られたお客さまなど、4名程度のグループが多かったです。現在はご夫婦などのお二人連れが増えました。そうした変化に合わせて、お料理も囲炉裏料理は変わりませんが、団体向けの大皿で提供していたものを、今は懐石料理風に個別にしています。いずれは個別での提供を、と考えていましたので、コロナ禍が幸いしたとも言えます。
 実は、ひっそりとやっていきたい、という思いも私にはあります。気に入ってくださった方だけが来ていただける、そんなお宿になれば、と。アットホームな旅館として、お客さまが心身ともにリフレッシュできるよう、努めていきたいと思っています。