岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

厳しい訓練も、危険を伴う命に関わる現場も
大変でしたが、周囲の人たちに応援してもらい
9年続けてきた救急救命士。
今後も出来る限り現場に出たい


中消防署 消防士(救急救命士)
田口 香澄(たぐち かすみ)さん(岐阜市)

【2023年6月15日更新】

平成26年に採用後、中消防署及び瑞穂消防署において、主に救急隊員として災害現場活動に従事する田口香澄さん。育児休業を経て、現在は育児との両立を図りながら、岐阜市消防本部では初となる「毎日勤務の災害現場活動隊員」として活躍しています。市街地の消防署勤務で出動回数も多く、男性職員とともに走り回る多忙な毎日を送っています。

先輩に憧れて進路を決定
 中学から高校まで卓球部に所属していました。同じ卓球部に所属し、プレーヤーとしても人としても憧れていた2学年上の先輩が救急救命士を目指しており、その後を追うように同じ道を選びました。私の人生を決定づけた運命の人ですね。先輩も消防職員として勤務していて、出産後復帰し現在も愛知県で救命士を続けていますので、その存在は励みになっています。彼女に出会わなかったらこの職業に就いていなかったかもしれません。
 救急救命士の専門学校に通い資格をとり、採用後は消防学校へ入校した後、1年目は瑞穂消防署で警防隊として勤務しました。火災の時に着用する服を着てはしごを何回も登るなどの厳しい訓練や、水を通すととても重くなるホースでの消火活動は体力を消耗し、はじめは毎日バテバテでしたが、反復して訓練を重ね徐々に慣れていきました。消防は、女性の誰もが目指せる職業だとは思いますが、学生時代スポーツをしていたのはこの勤務にあたって強みだったと思います。力持ちではなくとも、体を動かすのが好きで、住民のためになりたいという強い気持ちで現場経験を積み、3年働いた後に中消防署へ異動し、救急救命士としての勤務が始まりました。

働き方を変えて復帰
結婚し、産休をとるまでは24時間勤務でしたが、1年半ほど育休を頂き、復帰した現在は日勤の救急救命士として救急車や消防車に乗って現場対応に当たっています。状況によっては火災現場にも出ますが、今は救急がメイン。多いときは昼間だけでも1日に6件の出動があった日もありました。
24時間サイクルで実際に働いてみて、勤務時間は長いけれどそのリズムは自分に合っていると感じていましたが、それでも子育てをするのに限界を感じ、復帰後は日勤にさせてもらいました。実は今まで、女性職員が復帰した場合、日勤なら事務作業中心に移ることが多かったのですが、まだまだ職歴が浅く、もっと現場に出たかったこともあり、その機会を作ってほしいと本部に直訴したんです。消防本部内では初めてのケースでしたが認めて頂けました。
女性の活躍を推進する取り組みでもありますが、これからは男性も介護や育児にもっと参画する時代となり、性別問わず日勤で現場に従事する職員も増えてくるのではないでしょうか。
 
女性だからこその立場
中消防署は、女性職員が多いほうなのですが、消防職員という職種で言えば圧倒的に男性が多い世界です。でも、男性ばかりだからこそ女性を大切にしてくれている職場で、子どものお迎え等で早退するときも嫌な顔ひとつされず、理解ある上司に恵まれたと感謝しています。
救急現場では、大柄な人を運ばなければならない時もあり、どうしても女性の力では足りない場合もあります。その時は積極的に男性隊員に力を借りて対応しています。力仕事ですし、男性が中心というイメージが強く思われがちですが、女性の患者さんがいた場合、女性である自分のほうがメンタル的に安心させてあげられると感じることも多く、それがやりがいにも繋がっています。
市民向けの救命講習に伺ったときも、救命士は男性というイメージがあったのに女性が来た、と、受講する皆さんから喜ばれたときはうれしかったですね。安心感を持たれるというのは女性職員ならではだなと実感できました。

恵まれた環境に感謝
 現在は、夫と2歳の息子と3人暮らし。夫も同じ消防職員なので、仕事に対しての理解が深く、家事も育児もお互いに助け合っています。職場でも家庭でも男性にバックアップしてもらえて、働きやすい環境がありがたいです。
土日は家族で過ごしますが、時には実家の両親に子どもを預けて友人とランチや買い物にも出かけます。人命に関わる仕事に就いていて、無意識に気が張っている面はあるかもしれません。休日はのんびりと過ごすのが、仕事を頑張れるコツなのかなと思っています。
今は仕事もプライベートもとても充実しています。子育てだけに集中するより、自分には仕事との両立が合っていました。緊張感はありますがやりがいもあり、働くことで子どもとの時間も楽しみが増しました。
この仕事に就いて、厳しい訓練を乗り越え、様々な現場を経験し、精神的に打たれ強くなりました。落ち込んでも、細かいことをいつまでも気にしていられませんから、すぐ立ち直ります。火災も救急も、何でも対応しなければなりませんが、辞めたいと思ったことはありません。
 座右の銘は「健康第一」。健康でなければ仕事も私生活も成り立ちませんし、現場活動するうえでも足腰が丈夫で元気でないとやっていけない職業です。昔は消防では、女性は24時間勤務ができなかったのですが、女性の活躍を推進する時代となり、だんだん変わってきています。女性職員を募集する消防本部も増え、いろいろなかたちで働けるようになってきました。子どもが大きくなったら、24時間勤務に戻りたいです。そのためにも健康に気をつけてこれからも頑張っていきたいです。