岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

海外での女性の人身売買や
人権侵害、悲しい現実を、
大学生の時に知ったのが始まり。
みんなが働きやすく生きやすい社会を目指して


岐阜大学男女共同参画推進室 助教
落合 絵美(おちあい えみ)さん(岐阜市)

【2023年6月22日更新】

落合絵美さんは、岐阜大学男女共同参画推進室の専任教員として、学内外での授業のほか、岐阜大学における男女共同参画推進に向けた各種取組(育児・介護中で時間的制約を抱える研究者の支援、女性研究者の研究力向上に向けた助成、女子大学院生を中心とする若手研究者のキャリア支援など)や他大学、民間企業、自治体との共同プロジェクトの企画・運営、審議会委員などを担当しています。

海外の現実にショック
 社会学を専攻していた大学生のとき、アジアの学生と交流するサークルに参加しました。シンガポールやネパールで、現地の大学生と交流しながらいろいろな施設を視察しました。その活動の中で、ネパールからインドに人身売買された女性や子どもを支援するNGO団体を訪ねた時、自分と同じ時代に生きている同じ世代や、もっと幼い子が、貧困を理由に売られてしまう状況に衝撃を受けました。日本へ戻ってから、女性や子どもに対する人権侵害や国内外の取り組み、ジェンダー平等に向けた国連の動きなどに興味を持って自分で勉強するようになりました。
それまでは将来について、どこかの企業に就職する、くらいの考えで特に決めてはいなかったのですが、生まれた国や地域、環境が違うだけでこれほどまでに異なる人生があることを目の当たりにして、この問題についてもっと学びたいと思い、大学院へ進学しました。当時はまだジェンダー研究ができる大学も少なく、その分野の先駆けだった東京の大学院で博士課程まで進みました。
その後、研究員として京都、シンガポールで過ごしたのち、縁あって2018年から岐阜大学の男女共同参画推進室で働くことになり現在に至ります。ジェンダーはまだまだ一般的になじみがない分野かもしれませんが、日本は性別に基づいて役割分担をする傾向が強いので、まずは私たちの日常生活の中に、ジェンダーがどのように関係しているのかについて考えるとともに、ジェンダー平等な大学環境の確立に向けてさまざまな取組を展開しています。

ジェンダー平等への道
ジェンダー研究に出会って約20年になりますが、現在は岐阜大学の学部生に向けて、国内外の研究論文や国際比較のデータも用いながらワーク・ライフ・バランスや男女共同参画に関する授業を行っているほか、学内外の連携機関や研究者との共同プロジェクトの企画・運営に携わっています。
また、学生のキャリア形成やハラスメントについての悩み相談、出産・育児などで研究時間が削られがちな研究者のサポート、女子大学院生が県内の中高校生に向けておこなう出前授業のプレゼン指導、学内の現状やニーズを把握するための各種アンケート調査の実施・分析など、岐阜大学の多様な構成員がのびのびと学び、研究し、働ける環境づくりの窓口として、いろいろな取り組みをするのことが男女共同参画推進室の役割になっています。
学内の組織のほかにも、県や市など自治体の方や、学外の研究機関の方とコミュニケーションをとりながら仕事をする機会が多く、様々な立場の方と話したり意見交換しながら力を合わせてプロジェクトを進めていくことができるので、とてもやりがいのある仕事です。

オンライン導入と仕事
オンライン授業に関しては、何度も繰り返し授業動画を視聴できたり、体調不良の時でも、後で受講できるなど学生にとって良い面もありますが、人間関係を築くうえで対面で人と出会う場所があることはやはり大切だと感じます。学生たちは昔に比べると男女で区別されて育てられた経験が少なくなってきているからかもしれませんが、ジェンダーに関する発想がとても柔軟です。グループワークの授業でもさまざまなアイデアが出て、新しい知識を吸収し、社会の変化に対応しながら自分の未来について考えている様子が伝わってきます。LGBTQ+についても、最近はメディアで触れる機会も多く、自分事として身近に考えられる学生が増えているように感じています。
コロナの影響で、授業のほか会議やシンポジウム等もオンライン化がすすみ、働き方の柔軟性が高まりました。夫と子どもと暮らしていますが、平日は、今日はパパの日・今日はママの日と分担して子どもの世話をしています。家でも授業の準備や会議資料を作るなど仕事をすることが多いので、「ジェンダー」という言葉に関してどこまで理解しているかは別として、私がそういう仕事をしていることを子どもはわかっているようです。テレワークのおかげで公私両立もしやすくなりましたが、家に仕事を持ち帰ってしまうと週末に完全に休みをとることはなかなか難しく、オンオフのメリハリはつきにくくはありますが、スケジュールのコントロールはしやすく働きやすいのではないかと思います。息抜きとして、子どもとおいしいものを食べに出かけることが最近の楽しみです。

自分らしく働ける未来
まだまだ男女共同参画を意識して進めないといけないくらい、日本では様々な場面において男女比に大きな差がありますが、こういう組織がなくてもジェンダー平等でいられる未来になるといいなあと思っています。まずは、岐阜大学に関わる人たちが、働きやすい、研究しやすい、勉強しやすいと実感でき、出産・育児を経ても自分のキャリアを発展させていけるような環境を作っていくことが目標です。
昔、恩師が仰った「自由自在なドライバーになろう」は、私にとって大切な言葉です。どこへ向かうのか、自分の進む道を自分で決めて人生を切り拓いていこうという意味ですが、時に道に迷いながらでも、自分で決めた道で自分らしく生活していける社会になるように、微力ながらこれからもこつこつと活動を重ねていきたいです。