831企画とは、恵那市・中津川市で農業に従事する、若手農家によるグループです。代表の中垣野歩さんは、夫婦でトマト農家を営みながら、農林水産省「農業女子プロジェクト」のメンバー、岐阜県の女性農業経営アドバイザーなどの顔も持ち、地元の農業を盛り上げようと、831企画の活動などを通して、農業の魅力発信に努めています。
仲間をつくろうと設立
夫が脱サラして、トマト農家「なかがき農園」を開きました。新規就農者で、一から勉強して始めたのですが、当時の私はスポーツブランドの販売業に携わっていました。お客さまをはじめ、多くの人たちと接する毎日を送っていた私にとって、田舎での農業は戸惑いばかりでした。
農園を手伝うようになって、家族のほかは、近所の農家の方としか普段関わることがなく、あまりにも農業の世界が閉鎖的という印象を、良くも悪くも持ったのです。私が悩んだり、楽しいことをだれかとやりたいと思ったとき、どうすればいいのだろう、と考えてしまいました。
純粋に仲間がほしいと思ったのが、「831企画」を立ち上げる、そもそものきっかけです。人との交流を求めて、積極的に動くタイプなので、ないなら私がつくろうと走り出しました。
地元の農家を応援する。農家の交流を増やす。農業の魅力を発信する。そんな思いに共感してくれる仲間が少しずつ現れてきて、現在はトマトやイチゴ農家を中心に、約10名が積極的に831企画の活動に加わってくれています。メンバーの大半が夫と同じ新規就農者です。コロナ禍でスタートを切ったため、まだまだ活動の機会は少ないですが、まずは自分たちが楽しみながら、今後を見据えていければと思っています。
消費者とつながること
私は広島の出身で、実家は本格的ではないものの、農業をしていました。ですから、小さい頃から土に触れる機会があり、抵抗はなかったです。でも、それを仕事にするとなると違ってきます。正直、最初は嫌だな、関わりたくないな、と思っていました。
しかし、夫の手伝いをしていくうち、私たちが生きていくうえで大切な「食」に携わる農業という仕事に、魅力を感じ始めました。同時に、私たちがつくったものを、最終的にだれが食べているのか、顔が見えないことが不思議でそれを知りたいとも思いました。
なかがき農園では、料理店や個人の方への直接販売もしていますので、配達したときに直に声が聞けます。831企画で出店したマルシェは対面販売で、ご利用いただいている方や消費者の方と直接会って話をすることは楽しく、「美味しいね」「あなたたちがつくっているのね」などの言葉をかけていただくことにやりがいを感じています。
夫の理解もあって活動
今年から新たにイチゴの栽培も始めました。シーズンになれば、公私の区別がないほどに忙しくなります。夫の両親とも同居していますので、助けてもらいたいときには、頼るようにしています。ありがたいですね。
中学2年生の長女と、小学5年生の長男の子どもがいて、小さい頃には楽しんで手伝いをしてくれましたが、最近はアルバイトという形も取っています。手伝いか、アルバイトか、を子どもたちに選ばせて、手伝いであれば5分でも構わず、1時間やるのならアルバイトとしています。
実家の広島へ時々ひとりで帰省したり、スポーツ観戦に出かけたり、831企画の仲間や友人たちに会いに行ったりと、外に出ていくことが好きで、息抜きにもなっています。夫はそうした私を理解して、快く送り出してくれているからこそ、831企画の活動など、いろいろとやれており、感謝しています。
農業女性の交流の場を
農林水産省「農業女子プロジェクト」の交流会に参加した際、全国の農業女性の方々と話して、地域が変わっても悩んでいることは一緒だなと感じました。田舎に嫁いできて、という境遇の方も少なくなく、そういう人たちと知り合ったことはうれしかったです。こうした交流の場が近くにあればな、と思ったことも、831企画を立ち上げた理由のひとつにあります。
最近、岐阜県の農業女性を対象にしたセミナーに出席しました。初めて出会う方が大勢いましたが、実際はもっと多くいるはずで、できれば皆さんと交流したいと思います。それでどうする、という具体的なものはないですが、たとえばネットワークのようなものができれば面白いと考えます。岐阜県は広いので、簡単に行き来はできませんが、県内の農業女性をつなぐ役を担っていける存在になれたらいいなと思っています。
831企画としては、トマト農家が多いことから、トマトに関する事業を検討中です。販売、商品開発、イベント開催など、まだ形は見えていません。地元の美味しいトマトを周知できるようなプロジェクトを、近いうちにやりたいと考えています。