岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

人生行き当たりばったり。
そのときそのときは
勢いで突っ走っていたのが
あとで考えてみれば
すべて繋がってくるのです。


オフィスぼんぼり 代表
大橋 明日香(おおはし あすか)さん(飛騨市)

【2023年6月22日更新】

飛騨市の地域おこし協力隊に採用され、関東から移住してきた大橋明日香さん。協力隊を卒業後も当地に留まって、行政をはじめ地元企業や店舗などのマーケティング支援やデザイン業務に携わりながら、飛騨の魅力発信に努めています。2020年には、まちづくりの拠点施設「node」の立ち上げにも関わり、市から運営を委託されています。

偶然に募集を知って
 当時、東京でマーケティングの仕事をしていましたが、海外も視野に入れながら、広く転職先を探していました。たまたま求人サイトで、飛騨市の地域おこし協力隊の募集を見つけて興味が沸き、企業に就職するのでなく、こういった働き方もあるんだと、手を挙げました。
 実は、洋服のパタンナーや旅行の添乗員などを経て、ワーキングホリデーでカナダに行き、帰国後も商社の広報、マーケティング担当、メーカーの商品企画部と転々としてきたものですから、私の履歴書の職歴欄はめちゃくちゃです。そのため転職では苦労してきました。ですが、飛騨市は逆にそれを面白がってくださり、おいでよ、と採用していただきました。
 協力隊の任期は3年で、とりあえず3年間力を尽くそうと、2016年11月に引っ越してきました。それまで縁もゆかりもなかった飛騨市に来て、もう6年になります。四季を感じられる豊かな自然が魅力的ですし、地元愛が深い方も多くいらっしゃいます。また、私のように外から来て、ここに愛着を抱く人も少なくありません。
 現在は個人事業主として、この地で活動を続けています。マーケティングコンサルティングが本業ですが、チラシやポスター作りから、商品開発、イベントプロデュースまで仕事はさまざまです。ひとつひとつの仕事を頑張ってやってきたことで、今面白い場所にたどり着きました。ものづくりに携わっていたこと、添乗員で全国を回って観光したこと、マーケティングの仕事をしていたこと、それら全部の経験が飛騨に来て生かされているな、と感じています。

まちづくりも仕事に
 移住後は地域おこし協力隊として、飛騨市で初めて開催する着地型体験観光イベント「飛騨みんなの博覧会」を立ち上げ、観光振興に取り組むことが仕事だと思っていたのですが、まちづくりにも携わってほしいと言われました。ちょうど「ひだプラす」という、まちづくり団体を繋ぐ中間支援組織が設立されたばかりで、その事務局のような業務も手伝うことになったのです。
 まちづくりに関しては、知識も経験もありませんでした。組織のメンバーと一緒に「まちづくりとは何だろう?」と、学ぶところから始めました。みんなでまちづくりについて考えるイベントを行ったり、市内のまちづくり団体にインタビューをしたり、市外の先進地を視察したり。市内外でさまざまな活動をさせていただいた結果、市長から今後の飛騨市のまちづくりに関する提言を出すよう要請されました。そこで、メンバーとも相談を重ね、次のステップに向かうためには、人の出会いが生まれるような『場所』が必要だという話に至り、その旨を提案しました。市長と議会の承諾も得られ、2020年11月にオープンしたのが、飛騨市まちづくり拠点「node」で、施設の運営管理を委託されています。
 「node」はまちづくりの相談を受けたり、活動の場を提供したりするほか、ものづくりスペースを設けていますので、ワークショップの開催もできます。場所柄、観光客も多く、地元作家の作品を販売したり、情報コーナーがあったりと、市民に限らず、だれもが気軽に立ち寄れる施設となっています。
 最近は自社商品として地域の素材を使った商品開発にも力を入れており、地元の山中和紙や広葉樹の活用方法を模索しています。店頭には、広葉樹の端材を表紙にしたノートやキーホルダーなどの商品を並べてあります。広葉樹は木の種類によって色が違いますので、組み合わせるとカラフルな素材として生かせます。

仕事と趣味が同居
 こちらに移住してすぐ、勉強も兼ねて開業届を出しました。その半年後くらいから、いろいろなご相談を受けるようになり、協力隊と並行しながら、デザインやPRのお手伝いを個人事業主として始めました。
 まちづくりなどにずっと携わってきたため、市との繋がりもできて、協力隊を卒業後も引き続き「飛騨みんなの博覧会」の仕事を依頼されるなど、行政のお手伝いをすることも多いです。「node」では、「まちづくりコンシェルジュ」として、市民のみなさんのご相談も受けています。
 実家は茨城県つくば市で、今は飛騨市で一人暮らしをしています。趣味はものづくりですが、最近は、商品開発での試作品制作の時間が仕事であり、息抜きの時間でもあり、仕事と趣味が同居している感覚です。
 また、数年に一度、海外に行くことを楽しみにしてきましたが、この3年行けていません。長期の休みが取れたら大好きなニューヨークや、美術館巡りにヨーロッパへ、ぜひ出かけたいと思っています。

スタッフの育成が課題
 今の仕事をする中で、ご相談いただいた方からの感謝の言葉が一番うれしいです。会社員をしていたときよりも、それがダイレクトに伝わってきて、やりがいを感じます。そういうことを感じながら生活できるのは、すごく幸せなことだと思っています。
 今年から新たに「岐阜県地域おこし協力隊ネットワーク」の理事としての活動をスタートし、県内の協力隊を繋ぐお仕事をさせていただくなど、仕事の幅も広がって充実しています。
 次は、スタッフをどう育てていくか、です。まちづくりの仕事は、ただ知識を詰め込めばできるというものではありません。自分なりに勉強を続けてきましたし、経験も重ねてきました。その培ってきたものを、どうやって伝えていけばいいのかが難しく、目下の課題といえます。