岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

自分たちが住む市町を
より活発にしていくには、
思いつくこと、考えていることを
まず実行してみることが大切。


ey.connect・平田自動車
角田 悦子(かくだ えつこ)さん(海津市)

【2023年6月22日更新】

地域に根ざした自動車販売と整備事業を行う平田自動車。亡き夫が営んでいたこの事業所を角田悦子さんは、仲間の助けを借りながら切り盛りしています。実は角田さんは本業とは別に、「ey.connect」という住民グループを発足させ、市内の休耕地をヒマワリ畑として再生させ、そこにイラストを描いたドラム缶を並べるアート活動にも尽力。2022年の夏、咲き誇るヒマワリがSNSに投稿され、海津市平田町が注目を集めています。

思いつきが原点
 次男が大学に進学して実家を離れたことと、新型コロナウイルス感染症拡大による行動自粛が重なったことで、私ひとりが自宅で過ごす時間が増えました。そんな時、近所でガス・水道工事店を営む長谷川矢容衣さんと「一緒に市内のいいところを見つけよう」と意気投合し、休日の朝に散歩をするようになりました。
 散歩を楽しむ一方、自宅に植えてあった多肉植物により興味を持つようになり、栽培や寄せ植えを始めました。すると、友人やお客様が、植木鉢や多肉植物をたくさんくださったのです。そして私は、単なる思いつきから植木鉢に色をつけたり、文字入れやイラスト描きをするように。その流れで仕事場の工場に長く放置してあったドラム缶を「知人の片野さんが営む園芸店の看板に活用しよう」と考え、文字を入れて本当に看板にしてしまいました。これがドラム缶アートの原点です。
 
平田町を盛り上げたい
 引き続き、自分で植木鉢にイラストを描いてリメイク作業を楽しんでいると、その完成品を求められることや、制作に必要な鉢を提供される機会が増え、結果的に多くの人とのつながりが生まれました。それを機にグループをつくることになり、晴れて「ey.connect」が誕生。「悦子と矢容衣の散歩をきっかけに、多くの人とつながった」。だから、このグループ名がつけられたのです。以降、思いつくことにどんどんチャレンジして、50代からの人生をとことん楽しんでみようと決意しました。
 そんな折、市内に使われていない畑がたくさんあるとの話を聞きました。さらにそのタイミングで偶然にも矢容衣さんが「『はるかのひまわり』の種を知人からもらったよ」と言います。そこで私とグループのメンバーは、お千代保稲荷付近の畑を含む、町内計3カ所の畑を借りてヒマワリを咲かせる計画を立て、実行に移すことにしました。
 「ey.connect」は、利潤の追求を目的として活動する企業ではありません。単なる住民グループです。それなのに、なぜこのようなことをするのか。答えは、平田町を盛り上げたいからです。実は令和2年の国勢調査の結果を受け、旧平田町地域が過疎地域に指定されてしまいました。これは平田町の衰退をはっきりと認識させられる出来事です。「これから平田町での暮らしはどうなるのだろう」と不安に駆られましたが、落ち込むばかりではいけません。そこで、私とグループのメンバーは行動を起こしたわけです。

無理なく楽しむ
 ヒマワリを咲かせようとしていた畑は休耕地でしたから、まずは地道な耕作からスタート。続いて畝づくり、種まき、草刈りへと進みます。その様子はSNSを使って発信。私はもちろん、メンバーも皆それぞれ仕事をしていますから、「できる人が、できる時間に、できることをやる」というスタンスで無理なく楽しみながら畑の再生に取り掛かりました。
 ドラム缶アートを置いたのも、単なる思いつきです。イラストは全部で3パターンを考え、まずクルマの通行量が一番多いと思われるお千代保稲荷神社近くのヒマワリ畑に置くことにしました。続いて残りの2カ所にも置きました。最終的には合計7つを制作して3カ所の畑に設置しました。
 花の開花時には2社の新聞社とケーブルテレビ局の方々が取材に来られ、それをきっかけに多くの方々が訪れてくださいました。また、訪れた方のほとんどがSNSにヒマワリ畑の写真を投稿。「きれい」「笑顔になった」といったうれしいコメントを読むと、私たちも元気をもらうことができました。
 お千代保稲荷近くのヒマワリ畑は、シーズン終了後に刈り取りを行い、コスモスの種をまきました。秋には満開のコスモスが咲きましたが、ひそかに残っていたヒマワリの種も発芽し、コスモスとの競演という珍しい光景が。これにはグループのメンバーも皆驚きました。
 ドラム缶アートに関しては、ずっと畑に置いていて、さらに数を増やすことも考えています。また、町内の店からも「うちの看板に」と予期せぬ制作依頼が舞い込みました。それもやっぱり思いつきで描いているのですが、ありがたいことに来店客からは好評のようです。また、地元の小学校の花壇の札替わりになるよう、小さな缶にペイントをしたところすごく喜んでいただけました。

動けば景色は変わる
 旧平田町地域と同じように、過疎化認定を受けた町は、全国にいくつもあると思います。そのような町に住んでいる方の中には「何もない。だから、何もできない」と初めから活発化を諦めてしまっている人もいるかもしれません。
 私は、何もしないでただ後ろ向きな考えを口に出すのではなく、自分たちが住む市町をより活発にしていくには、思いつくこと、考えていることをまずは実行してみることが大切だと思っています。とにかく動く。大きな一歩でなくてもいいんです。動けば景色は変わりますし、手を取り合える仲間とも出会えるでしょう。その結果、ひとりではできそうにもなかったことができるようになります。私は 「ey.connect」の活動を通じて、そのような気づきを得ることができました。
 最近は、地元の企業や近隣市町で空き畑を活用した事業をされている企業などから、有益な情報を提供してもらえるようになったので、今後の活動の幅の広がりや新たな可能性を感じています。もしかしたら今よりも大きなことにチャレンジする日が来るのかもしれませんが、難しく考えずに取り組みたいです。