岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

理学療法士×だっことおんぶ×防災士
すべては繋がって日常になる。
毎日がいい日になりますように。


もりのわ(母と子のいのちの学び場)
谷口 美土里(たにぐち みどり)さん(高山市)

【2023年6月22日更新】

埼玉生まれの谷口美土里さんは、東京の病院で理学療法士として働いていましたが、震災をきっかけに岐阜県高山市に移住。理学療法士、結婚、出産の経験から、「もりのわ(母と子のいのちの学び場)を主宰。活動の幅は防災にまで広がり、現在は、大事な「いのち」を学ぶ活動を展開しています。

海から山へ
出身は埼玉県。東京の病院で理学療法士をしていましたが、震災を機に、自分の人生を考え始めました。以前から知り合いだった今の主人が岐阜県高山市に移住していて。いいところだなと思い、自分も移住し、結婚することになりました。東京で働いていた時はサーフィンが好きで海の近くに住んでいたのですが、気づいたら山で暮らすことになっていました。
 その後妊娠し、出産を経験しました。「だっことおんぶ」について考え始めたのはその時です。子育ての中で抱っこ紐を友人に借りたのですが、それがしっくりこなくて。違う友人に別のものを借りたのですが、今度は使い方がわかりませんでした。最終的に近くの助産師さんに教えてもらったのですが、抱っこ紐によって、こんなにも子どもとの密着度や身体への負担が違うのかと驚きました。いろいろと調べているうちに、「NPO法人だっことおんぶの研究所」と出会いました。「だっことおんぶ」について、自分のような経験をしているお母さんたちに伝えられることがあるではないか、理学療法士の知識も活かして体に楽な抱き方なども伝えられるのではないかと思い、「ベビーウェアリングコンシェルジュ」について勉強し、資格を取得しました。
 ベビーウェアリングとは、赤ちゃんを身にまとうようにだっこやおんぶをして過ごすことです。二人の重心がぴったり寄り添えると体への負担が軽減するだけでなく、赤ちゃんの身体的にも、情緒的にも自然な発達を促すことができると言われています。抱っこ紐の種類によってそれぞれ特徴があるので、正しい知識を知ってもらって、それぞれに合ったものを選んでもらえたらと思っています。

「大丈夫だよ」を伝えたくて
 現在は個人事業主として「もりのわ(母と子のいのちの学び場)」を主宰し、お母さん向けに「赤ちゃんの発達とだっことおんぶのクラス」を岐阜県の各地で開催しています。だっこやおんぶの楽しさ、心地よさを体験できるお母さんが増え、子どもと一緒に過ごす何気ない日常の時間が愛おしくなったり、気持ちが楽になる、そんなお手伝いができればと活動しています。
お母さんはちょっとした子どもの反応がわからなくて不安だったり、たくさんの情報の中からどれを選んだらいいのか迷ったり。たくさんのプレッシャーやストレスを抱えています。例えば、いつもと違う子どもの行動は、次の発達につながる大事な反応という時もあります。いつもと違うことは不安だけど、そうわかるだけで気持ちにゆとりができて、温かく見守ることができるかもしれない。理学療法士の知識とだっことおんぶの勉強を通して、そういったことをお母さんたちに伝えています。お母さんたちが「あ、これでいいんだ」とほっとした表情を見せてくれると、自分もうれしくなりますね。
 他にも発達支援の事業所や特別支援学校で、先生たち向けに理学療法士の知識を生かしたアドバイスを行ったり、近くの自治体で乳幼児健診のお手伝いをしたり、オンラインで全国の方々に向けにセミナーをしたり、仕事の幅はひろがっています。

守備範囲は防災にまで
 だっこやおんぶを学ぶ中で、災害時のことを学ぶ機会がありました。大人の備えや避難はたくさん情報がありますが、乳児や幼児を対象にした情報は案外少ないということを知り、防災にも興味を持ち始めました。避難するときにはどうやって抱いたらいいのか、どんな準備をしていたらいいのか。防災と聞くと、難しかったり怖かったり。大事だとわかっていても目を反らしたくなることもあると思います。でも、お母さんにこそ子どもを守るために知っていてほしい情報だと思ったのです。そこで、防災についても勉強し、防災士の資格を取得しました。現在は、高山市防災会議の委員を拝命したり、「清流の国ぎふ防災・減災センター」のお手伝いなどもしています。そして、今までの経験が重なり、子育て支援センターなどでお母さん向けの防災についてのセミナーをさせていただくなどもしています。防災って特別なことではなくて、日々の生活にいかに溶け込ませるかが大事なんです。ちょっとしたことを習慣にしてもらったり、自分にできそうなことから取り入れてもらえるようにお話しすることを心がけています。

公私の両立で日々是好日
 今は山に住んでいますが、趣味のサーフィンは続けています。運転は苦にならないのでロングドライブを楽しんで知多や伊良湖などまで出かけるのですが、息子も付き合ってくれて一緒に楽しんでいます。冬は雪山がすぐ近くなのでスノーボード三昧です。主人はスノーボードが好きで高山に移住したので、ウインタースポーツは3人で楽しんでいます。いつかは家族でサーフィンやスノーボードを楽しむ旅にも出かけたいです。
 最近はコロナの影響で地元の高山で行っていた、「赤ちゃんの発達とだっことおんぶのクラス」のクラスができなくなってしまいました。仕方のないことですが寂しいです。早く状況が落ち着いて、また高山でもお母さんたちの力になれたらと思っています。
 人生にはいろいろなことが起きますが、楽しむことを忘れずに生きていたいと思っています。好きな言葉は「日々是好日」。波があっても、なくても、いい日。「まぁいっか」「そういう時もある」と受け入れながら、時に抗いながら、やっぱり今日もいい日だったなと思いながら生きていきたいです。