中学生のころから携わってきたボランティア、現在働く福祉施設(訪問介護事業所)。
経験を生かして、小林さんが取り組むのが福祉施設の防災力向上です。
所属するNPO法人 高齢者住まいる研究会では、ゲーム感覚で
防災について学べるゲームを次々に考案しています。
大きかった父の影響
いま、取り組んでいることは所属する「NPO法人 高齢者住まいる研究会」での防災啓蒙活動です。私は岡山県で生まれ、1歳の頃に父の実家がある大垣市に来ました。父は大垣市で長く消防団員として活動していたので、その影響も受けています。小さい頃は消防団で使う無線機が部屋に置いてあり、出動命令が頻繁に無線機から聞こえてきました。台風が近づけば、待機要請のため出かけていく父の姿を見て、災害やそれに備える防災意識が育まれていったのだと思います。
それに中学1年生~高校3年生まで、大垣市の中高生のボランティア団体「ジュニアリーダーズクラブ」でボランティアもしていました。6歳年上の姉がやっていたのを見て私も始めたのですが、その活動も楽しくて。防災への意識、ボランティアという活動は今にも続いています。
福祉、防災との出合い
高校を卒業後、看護の分野に興味があったものの福祉施設に就職し、働きながら介護福祉士の資格を取得しました。
それから、2011年、東日本大震災が発生しました。当時、所属していた「大垣市V.Y.S.」の仲間や大垣市の「NPO法人防災支援ネットワーク」の立ち上げメンバーだった父に誘われて、私も何度か被災地支援に向かいました。同じボランティアの皆さんとお話しをするなかで、私自身、防災について深く考え、知り合ったボランティアの皆さんと一緒に防災士の資格試験にもチャレンジして資格を取得しました。
防災への関心をより持った私は、岐阜大学で防災に関する勉強会(げんさい楽座)が行われることを知り足を運ぶと、そこに講師で来ていたのがいま所属している「NPO法人 高齢者住まいる研究会」寺西貞昭理事長をはじめとした皆さんでした。
福祉施設に落とし込む
それまでの私は防災=座学のイメージしかなく、「防災を楽しく学ぼう」という考えはありませんでした。岐阜大学の勉強会(げんさい楽座)で初めて見たのが高齢者住まいる研究会が開発した「災害想定ゲーム KIZUKI(気づき)」でした。地震直後のトラブルに対して限られた人、時間と備品のなかで、優先順位を決めて対応を考えるものです。チーム同士で対戦する仕組みになっていて、「こんなに楽しいなら自分も学びたい。働いている福祉施設で取り入れた研修がしたい」と考え、NPO法人の一員になりました。
私は早速、福祉施設に取り入れた研修がしたいと考えて、岐阜大学の高木朗義シニア教授の下、「減災教室~福祉施設コース~」の共同開発や「避難所運営ゲームHUG」の考案者、倉野康彦氏の「避難所運営ゲームHUG~社会福祉施設バージョン~」の開発をお手伝いしました。熊本地震で被災した福祉施設の方から話しを聞いたところ、地震直後には、「普段、デイサービスで施設を利用しているから助けてほしい」など避難者が次々と訪ねてきたそうです。「福祉施設には今いる利用者様だけでなく、想定していない避難者が救いを求めて訪ねてくる」、そんな可能性があることを想定して備えておくだけで、随分と変わってくるはずです。
避難所運営ゲームHUG~社会福祉施設バージョン~は、現場となる福祉施設の図面を置いてからスタートしていきます。災害発生後、最初にすべきことになる対策本部の設置場所はどこにする、押し寄せてくる避難者への対応は、今いる利用者様の人数に対して職員は何人いる、などなど。福祉施設職員に加えて、地域住民の方もゲームに参加して体験してもらうことで、福祉施設と地域の在り方、その連携を推進する狙いもあります。
オンライン研修も開催
NPO法人 高齢者住まいる研究会は、福祉施設などのBCP(業務継続計画)の策定支援を目的に活動しています。災害を想定したさまざまなゲーム以外に、希望する全国の福祉施設に向けて、オンライン研修でBCP策定方法をレクチャーしているのが「福祉施設防災学習交流会」です。私も自宅からでき、遠くの方とも簡単にコミュニケーションが取れ利点があるものの、いかに当事者意識を持ってもらうかが大切だと実感しています。オンライン研修には過去、熊本地震で被災された福祉施設の施設長に登場してもらったこともあります。現場の声を届け、自分ごととして捉えてもらう工夫をしています。
岐阜県内の自治体や福祉施設関係に対して訪ねて行うものが「防災ゲームを用いた研修」です。防災研修の導入編として減災教室や防災神経衰弱ゲームを用いたり、福祉施設を舞台に、巨大地震発生直後をシミュレーションします。私は講師として、時には参加者にアドバイスを送るゲームファシリテーターとしても参加しています。
NPO法人では年に数回、防災関連のイベントにもブースを出展するなど、オンラインとリアルの現場で防災啓蒙活動をしています。私も福祉施設職員の視点を大切に、全国の介護現場と連携を続けていきます。