岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

花のある暮らしは
華やかな暮らしにつながります。
その方の人生がたった1輪で
華やかになれる、
それがお花だと思います。


フラワーショップあや メインデザイナー
柿本 亜矢(かきもと あや)さん(大垣市)

【2023年6月22日更新】

大垣市加賀野に店舗を構える「フラワーショップあや」。同店のメインデザイナーを務める柿本亜矢さんは、数々のコンテストでの受賞歴があり、公益社団法人日本フラワーデザイナー協会の本部講師としても活躍しています。現在は生花店やプロのデザイナー向けの講習、花資材の商品開発などにも携わり、花業界の活性化に努めています。

ドイツの生花店で修業
 花屋は母が開き、サラリーマンだった父も会社を辞めて、いっしょにやっていました。私は花屋を継ぐという意識もなく、OLをしていました。当時、フラワーアレンジメントがお稽古事の人気ナンバーワンだったのですが、母が教えてくれるというので、軽い気持ちで始めたのが、この世界に入ったきっかけです。
 その後、OLを続けながら東京のフラワーアレンジメントの教室へ月1回、通っていました。学びを進めていくうち、先生から「OLをやっていたんじゃ、花はうまくならないよ」と言われたことが心に響き、OLを辞めて花屋を手伝うようになりました。
 海外の花屋を巡るツアーに参加したとき、ドイツのある1軒の花屋に魅了されました。家具などの調度品がトータルコーディネートされたなかに花を置いていて、まるで美術館のような花屋でした。日本では見たこともないスタイルの花屋で、ぜひそこで働きたいという思いから、留学を決意しました。
 ドイツ語を勉強するために短期の語学留学をした後、その花屋に働かせてほしいと猛アタックしました。そして約1年半にわたって、現場の仕事を経験させてもらいました。クリスマスの時季は、ずっとリースを作り続けたこともあります。帰国後、フラワーデザイナーとして仕事に就きました。

お客さまの思いを形に
 花が好きと言うよりは、人が好きなんです。お客さまはどんな花を求めているのか、頭のなかを覗くことはできません。ご自身でもわからないような思い、言葉にできないようなイメージを形にしていくのが、私どもの仕事です。
 洋服のように、できあがっているものをコーディネートして見せることが、花の場合はできません。ですから、ヒアリングを大切にしています。具体的なご要望が示されない場合には、好きな花を聞いたり、特になければ実際に店の花を見てもらい、目にとまった花はどれかと尋ねたりしながら、作り上げていきます。
 ドイツの花屋で働き始めて、まだ言葉に不安があるとき、お客さまの目や顔の表情などの反応を見て、思いや考えを読み取っていました。おかげで、思いをくみ取る能力が人よりも磨かれたと思います。留学で身に付けたスキルのひとつとも言えます。
 そして花を仕上げて、お客さまが思う花をご提案、ご提供できたときに喜んでいただけるのがとてもうれしくて、それがこの仕事における一番の魅力ですね。

頭のなかの大半は仕事
 仕事は店舗運営と接客、販売をはじめ、講師の資格を持っていますので、店舗に併設しているスクールでの指導も行っています。そのほかに講習会、ワークショップ、個人の方、企業などでの講師活動、お花の先生や花屋さんなどプロ向けの指導もしています。お祝い事などのディスプレイのご依頼も多く、最近では岐阜県新庁舎の竣工式の花ディスプレイもさせていただきました。花資材の商品開発や提案、実演などにも携わっています。
 ずっと仕事のことしか考えていなくて、脳の99%は仕事でできています。ヨーロッパが好きで、以前はよく出かけていましたが、きれいな街並みを見ていても、花屋さんを見つけると入ってしまいます。YouTubeも家事や仕事をしながら視聴できるので見ますが、マーケティングの勉強など、ほぼ仕事のためのインプットに活用しています。すべてが仕事につながっていて、趣味と言えるものは特にありません。
 試練を試練と思わず、ポジティブに切り替える思考の方の著作や、さまざまな分野で活躍されている方を取り上げたドキュメント番組を見るのが好きです。何か起きたときに振り返ってみると、それは必然で起きたことだと思うようにしています。そのときはどうしようと戸惑うのですが、やるべきことは起こった原因を突き止めるのではなくて、それに対しての最善を考えることが大切だと心がけています。ピンチはチャンスなのです。

業界の未来を見据えて
 花屋が減少傾向にあり、生産者の減少も大きな課題となっています。だからと言って、花を普及させるためにどこかに無理をさせる、たとえば価格を抑えるよう生産者に負担を強いてはいけないと思います。お客さまも、生産者も、花に関わる業者の方も、そして従業員を含めた自分たちも、すべてが幸せになれるところを目指していきたいです。
 以前は大きな夢も抱いていましたが、大きくなることだけが良いのではなく、現状を維持するのもすごく大事なことなのでは、とコロナ禍で気がつきました。少しずつ、一歩ずつ、ゆっくりでも山を確実に登っていければいいなと思っています。
 お花はハードルが高いと思っている方が多いですが、1本から気軽に買える、一番身近なオーダーメイドなのです。若い人たちにも花に関心を持ってもらえればと、子どもたち向けのワークショップや、「高校生花いけバトル」の審査員などの仕事もしています。花に触れる機会を提案、提供していくのも、ひとつの使命と考えます。
 お店としては、ここに来れば気持ちが和らいで居心地が良い、というのが理想ですね。お客さまから愛され、100年続くような花屋になればと思っています。