家業の水道会社「桐山」を継ぎ、夫婦で営む須田真里さん。自らの子育てストレスの経験から、地域の同じような子育てママさんたちがホッとできる場所を作りたいと、コミュニティスペース「虹色テラス」をスタートさせました。会社の経理やスケジュール管理、営業など多忙な毎日を送る中、ママさんたちとの交流や、地元の中学校で職業講話を行うなど、地域おこしに力を注いでいます。
ママさんの交流の場を
株式会社桐山は祖父が開業し、50年の歴史がある水道工事とリフォームの会社です。子どもの頃から後を継ぐつもりはなく、将来は福祉の業界で働きたいと考えていて、ヘルパーの資格も取得しました。時間に余裕ができたら働く予定でいましたが、まったく違う仕事をしていた夫が会社を継いでくれることになり、あれよあれよと夫婦揃って職人の世界へ飛び込みました。家業にまったく興味がなかったので、会社を継いでから建設、水道に関しての勉強をし、リフォーム提案士の資格も取得しました。今は経理をしつつ、外に出てお客様と話すのが好きなので営業的な活動や困りごとの相談に乗ったり、現場への職人の手配などもしています。
「虹色テラス」誕生のきっかけは、自分が子育て真っ最中の頃のストレスフルな経験から。0歳と2歳の子どもを抱えていましたが、当時は子どもを連れて行く所がなく、話し相手もなくてつらくて、家に引きこもる毎日でした。自分が建設業界に関わるようになり、ママ会などに使ってもらえるコミュニティルームを作りたいと思いつきました。行き場がなくて困っているママさんたちの息抜きができる場所を提供できればと、SNSでの告知やチラシなどから口コミで広がり、人が集まるようになりました。お母さんたちの持ち込みランチ会や、専門の講師を招いてヨガやピラティスの会、子どもたちと触れあったり、親子に限らず年配の方にも利用していただいたり、オープンして5年になります。多いときは10組くらいの親子が集まるときもありましたが、コロナ禍以降は配慮して一度に集まる人数を減らして開放しています。
お母さんたちに認知されてきたこともあり、ここでウクライナ支援のために何か出来ないかと、インスタグラムで不要な服を募集しバザーを開催したこともありました。その時は来場者が外まであふれる行列になるほど。支援はすぐ終わる問題ではないのでバザーも定期的に開いていきたいと思っています。
母校での職業講話
もっと地域活動に力を入れたいと、中学生と一緒に行った地域清掃活動がきっかけで、母校の岩野田中学で年に1回、中学2年生が対象の、「職業講話」に夫婦で参加させてもらっています。依頼されてまだ2年目ですが、銀行員、飲食業などいろいろな職業の方が講師としていらっしゃって、その中で私たちも「建設業とは」というテーマで喋らせてもらい、貴重な経験になりました。工事専用の大きな工具を持参して、カットのやり方のレクチャーや、蛇口をひねって出てくる水が家に届くまでの過程など、子どもたちにこの業界を知ってもらうために話をしました。工具に触ってもらうのが一番説得力があるので、水道のパイプをカッターで切ってペン立てを作る体験をしてもらい大好評でした。意外にみんな素直に受け入れ真剣に聞いてくれて、少しは興味を持ってくれたかなと思っています。建設業ってつらいし嫌だなと若い世代には思われがちですが、モノづくりとして面白い世界だということをもっと知ってほしいです。
地域貢献に関しては、長良川を境に北側のエリアを、市街地に負けないくらい元気にしたいという思いがずっとあり、他にも何か出来ないかと考えています。
家族の協力で毎日元気
夫と、中学生の娘、小学生の息子の4人家族。父と母も健在で、同居ではないですが一緒に働いています。子どもたちも私の地域活動に一緒に参加してくれますし、両親も子育てを助けてくれて、家族みんなの協力があるから特に大変だと思うことはありません。気分転換は夜、ドラマを観ながらテイクアウトしてきたちょっといいスイーツを食べること。ホッとする時間に幸せを感じています。息抜きのために出かけることはしません。いい意味で鈍感なのかもしれないですね。
職人が働きやすい会社に
会社には年配の職人さんが多いのですが、現場にバリバリ出ている若い女性の職人が一人いて、彼女が働きやすい環境を作りたいと心がけています。まだ3年くらいのキャリアですが、仕事がていねいで繊細で、男性が気づかない部分に気づいてくれて、現場を上手に回してくれていると強く感じます。周りの協力が無いと難しいですが、彼女に続く女性の職人を増やしたいですね。性別で職をわける時代ではないですし、女性が結婚してからも男性と同じように働き続けられる職場づくりをしていきたいです。また、会社の雰囲気を良くするのも私の仕事だと思っています。2023年は住宅事業部を立ち上げたので、職人たちが仲良く、働きやすくいられるようにするのが使命だと感じています。そして、地域貢献にもっと力を入れ、ボランティアの中学生とも関わりを増やしたいです。地元の企業と一緒にごみ拾いなどの清掃活動から、地元をもっと盛り上げたいと考えています。