岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

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思いついたら即行動です。
これがあったから
今があると考えます。


みずなみ防災会 理事・女性部会長
中村 佐記子(なかむら さきこ)さん(瑞浪市)

【2024年8月27日更新】

2013年、防災士の資格を持つ有志によって設立された自主防災組織「みずなみ防災会」。中村佐記子さんは創設のメンバーで、現在は防災会の理事と女性部会長を務めています。瑞浪市社会福祉協議会の職員であることから、高齢者福祉、障がい者福祉の視点を取り入れたり、女性の視点を生かしたりしながら、地域防災に取り組んでいます。

子の病気が縁で福祉に
 
2人目の子どもが生まれたとき、酸素飽和度が80%以下で、すぐに総合病院へ運ばれました。しかし、ここではこれ以上の治療ができないと、救急車で別の病院へ。現在では新型コロナウイルスの治療で知られるようになった「ECMO(エクモ)」が使われました。
 治療には血液が必要でしたが、親族の血液では駄目とのことで、知り合いの方々に病院に足を運んでもらいました。毎日2人分の献血が必要とされ、皆さんがローテーションを組んで、献血に来てくださいました。
 なかなか回復しなかったのですが、幸いにも専門の先生に診てもらうことができ、心臓病であることが判明。すぐに手術可能な病院へ救急車で転院し手術を受け、数カ月後に退院できました。今はとても元気にしています。
 退院時に医師から、「ECMOを使用している赤ちゃんがこの病院まで来て手術台に上がれるとは思ってもみなかった」と言われたのです。改めて、多くの方々の力や思いに支えられて助かった命なのだと思いました。
 この経験から、少しでも人の役に立つことをしたいと考えました。中学時代から箏(こと)をやっていましたので、ボランティアとして施設で演奏したり、中学校へ教えに行ったりしましたが、もっと広く社会の役に立てないかと、社会福祉士の資格を取得して、社会福祉協議会に就職しました。

防災リーダー養成講座

 就職後は、生活困窮者や障がい者、ボランティア団体の支援に関わる業務に就いていました。社会福祉協議会には災害ボランティアセンターを設置し運営する役割があり、その担当になりました。しかし私自身、災害や防災の知識がないうえ、マニュアルなどもなく、どうしようかと思っていたところ開催されたのが、市の第1回防災リーダー養成講座でした。
 受講して防災士の資格を取り、災害ボランティアバスを企画したり、災害ボランティアセンター設置運営マニュアル作りなどに携わったりしました。当時、市内には防災活動を担うボランティア組織がありませんでしたが、組織をつくる際、私にも声がかかったのです。立ち上げに向けて何度も会議を重ねて、2013年に「みずなみ防災会」が結成されました。
 ほかの地域では「防災士会」と命名されることも多い中、「防災会」としたのは防災士の他、市の防災リーダーの方も入会できるようにするためでした。現在の会員数は100名ほどですが、高齢や仕事で活動に参加できない方も多いのが現状です。
 主な活動としては、自治会や団体などからの依頼を受け、防災訓練や防災講話などを行います。また、社会福祉協議会との協働で、高齢者世帯を訪問して家具転倒防止器具の取り付けもしています。

福祉と防災の連携を
 
次に異動した地域包括支援センターでは、高齢者の相談をしているうち、介護サービス事業所やケアマネジャーの方と関わる機会が増えました。災害時の高齢者の避難を考えたとき、福祉と防災がつながることの必要性を強く感じました。市内には浸水想定区域や土砂災害警戒区域が多いため、高齢者施設や福祉関係者に向けた防災講座の実施や、実効性のある避難確保計画やBCP作成にも取り組んでいます。
 また、被災地でのボランティア活動や「清流の国ぎふ防災・減災センター」のプログラムに参加し、防災関係の方とのつながりができ、学ばせてもらう中で防災会にも女性の視点が必要だと考え、2022年、「みずなみ防災会女性部会」を結成しました。女性に限らず、高齢者や障がい者、子ども、子育て家庭など、多様な方々に配慮した避難所の運営、防災訓練や講座の開催などに取り組んでいます。
 最初は3カ月に1回開催していた部会も、今は月1回のペースで開催し、その都度「女性部会便り」を発行し、情報共有にも努めています。
現在、女性部会は13名となりました。防災会も設立から10年になり、会員数が増えましたが、ここ数年はほぼ横ばいです。また、その間に災害への備えや対処法など、新たな防災対策への対応が必要となってきています。しかし、それに対するアップデートがあまりできていないことや、それぞれの会員が地域で活動できるという態勢ができておらず、検討すべき課題です。

草刈り女子にデビュー

 小学生の頃はフィギュアスケート、中学では剣道、高校では硬式テニスをやっていました。大学卒業後はコンサルタント会社に就職して造園施工管理技士、土木施工管理技士の資格を取得し、公園の設計をしていました。
 結婚後も仕事を続けていましたが、なかなか子どもに恵まれなかったこともあり、別のことに挑戦したいと看護学校に入学。うれしいことに子どもを授かり、一旦は休学したものの、子育てに専念したいと退学しました。そして次男の病気をきっかけに福祉の世界と関わるようになり、さらには防災にも。その時々、自分ができること、興味を持ったことをしてきました。そうした中、様々な経験や活動から多くの方とつながりが生まれ、多くの方の協力があり、そこからまたやりたいことが広がっていくのです。
 土岐地区まちづくり推進協議会が開いた「草刈り女子育成教室」で、電動草刈り機の使い方を学び、草刈り女子としてデビューしたのも、そのひとつ。今後は地域の新たな活動にも積極的に参加しつつ、これまで以上に福祉と防災と地域をつなげることにも取り組みたいと思っています。