岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

銀行員から農業へ、
結婚が人生の転機に。
牛が元気で健康なことが幸せ。
末永く家族全員健康で
おいしい牛乳を届けたいです。


江崎牧場
江﨑 美咲(えさき みさき)さん(岐阜市)

【2024年8月29日更新】

令和5年秋現在、岐阜市内の酪農家はわずか2軒まで減少。そのうちの1軒「江崎牧場」を営む江﨑美咲さん。乳牛30~40頭を家族と飼育しています。美味しい牛乳を生産するために子牛の育成に日々奮闘しながら、岐阜県女性農業経営アドバイザーいきいきネットワーク会員、女性農業者ロールモデル、農業委員として次世代の女性リーダーの育成に尽力。民生児童委員としても地域活動中です。

未知だった酪農の世界
 
学校を卒業後、銀行に就職。仕事は好きでしたが、縁あって出会った夫の家業が昭和28年から続く酪農家で、結婚と同時に牧場経営に足を踏み入れることになりました。当時の趣味が軟式テニスで体を動かすのも好きでしたし、実家はいちご農家を営んでいましたから、農業に就くことに抵抗はなかったです。何も知識のないゼロからのスタート、酪農の研修会や勉強会にも参加し、夫と義父に牧場の仕事を教えてもらいながら3人の子どもを育て上げました。若い頃は牛の世話で朝早く起きるのが辛いとか、育児との両立が大変な時期もありましたが、慣れてしまえば特に苦労と感じることもありません。牧草の取り入れに大型トラクターが必要でしたので、大型特殊免許も取得しました。

牧場経営も家族で協力

うちの牧場では、遺伝子組み換えされていない餌を使って牛を育てています。毛並みや餌の食べ方、ふんの量、お乳の味の濃さなど、おいしい牛乳を届けるため牛の健康状態のチェックは毎日かかせません。
毎朝5時に起床して餌やり・草やりと糞尿の処理。搾乳は夫と義父の担当で、私は子牛の世話を担当しています。8時過ぎに集乳車が来るまでの約3時間は全員で集中して作業です。牛はいっぺんに食べさせると消化がうまくできないので、夫や義父と手分けして、一日中交代で餌を食べさせ面倒をみています。昼間は家事や経理など事務作業を済ませ、再び15時から3時間ほど牛の世話をするという生活サイクルです。通常の仕事に加え5月から9月くらいまでは河川敷でトラクターを使って牧草を取り入れる作業があります。取り入れた牧草をその日のうちにラップして、乳酸発酵させ、牛のごはんを1年分つくる作業が加わるほか、田んぼでお米も作っているので、稲刈りが終わるまでは目まぐるしい毎日が続きます。子どもたちが小さかったときは、家事なども義母にずいぶん助けてもらいました。
現在は2人の娘と息子も結婚し、牧場は私と夫、義父の3人で運営しています。義父は88歳になりましたが、足腰も元気で、現役でバリバリ働いていてとても頼りになります。息子は、将来のことを考えて、この牛舎の隣にハウスを建て、いちご農家で生計をたてています。動物と植物、育てているものは違えど、息子が同じ農業に携わっていて心強いですし、牧草の取り入れなど繁忙期は作業の協力もしてくれるので家族経営で回すことができています。私も息子のいちご農家に時折手伝いに行くこともあります。農業が好きだから、忙しくてもこなせるのだと思います。

人付き合いが気分転換

丁寧に世話をして牛が元気に育てば、お乳もおいしくなり乳量も増えます。私は子牛の担当なので、大きく育てる役目。牛の世話のため休みもなく長期の旅行も難しく、飼料の高騰など大変なこともありますが、健康な牛を増やすことは楽しみです。昔は30㎏くらいの重さの固めた牧草をトラックに積み下ろしなども人力でしんどかったですが、最近は機械を導入し楽になりました。
「酪農教育ファーム」の認証を受け、中高校生のインターンシップや大学生、生協の職員の方などが見学にも来られるので、乳しぼりや餌やりなどの体験の案内を夫と一緒に行います。ほかにも民生児童委員として親子ふれあい教室を開催しており、食の教育についてのお話や、紙芝居を使って牛乳を広めるための活動もしています。
趣味は特にありませんが、地域活動やアドバイザーの集まりで外へ出て人と話すことが気分転換になっています。この地域で酪農、農業を続けていくためには、農業を知ってもらう事が大事。いろいろな方々との繋がりを大切にしていきたいと考えています。朝の餌やりが終わったら地域活動に出かけて、終わったらまた仕事に戻る、という時間の使い方もうまくなりました。
 
これからも農業者として

 女性農業経営アドバイザーに就任した当初、私よりも年上の女性がみんな頑張っており、こんな風に年を重ねても生き生きと活動できるのはいいなと感じていました。その先輩のひとりから「色々なことにどんどんチャレンジしていきなさい。役職も臆さず受けていったほうがいい」と言われ、それをきっかけに役職を引き受けさせていただいたことで、自分も成長でき、たくさんの人ともつながりが出来ました。以来、チャレンジ精神はいくつになっても必要と心に留めています。
夢は女性の農業者を増やすこと。現在、岐阜県内では酪農、花や野菜、米農家など農業すべてに関わる女性のアドバイザーは約80人いますが、まだまだ男性の多い世界。役職についている女性は本当に少ないです。女性が農業業界でもっと活躍できるよう、道筋をつけていきたいと思っています。農業人口を増やすことは難しくても、まず減らさないこと。続けていれば誰かが代わりに継いでくれて、興味を持ってくれるかもしれないと信じ、若い世代との交流会や勉強会を続けています。これからも、安全で安心して飲んでもらえるおいしい牛乳を届けていけるよう頑張っていきたいです。