岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

東京から下呂に移住して、
美大生からトマト農家へ転身。
起業という夢をかなえた今も
次のステップへと歩み続ける。


株式会社トマトの丘 副社長
安保 美貴(あぼう みき)さん(下呂市)

【2024年8月30日更新】

東京都稲城市の出身で、都内の美術大学で日本画を学んでいた安保さん。卒業後の仕事として、自分の描いた絵を売り込んでお金に替えていくことに、自分は向いていないと感じていました。その当時アルバイトをしていた飲食店の店長山田さんが起業を考えていると聞き、自分も絵とは別の何か新しいことを始めてみようと思い、山田さんと共同経営という形で起業する夢を抱いて行動を開始しました。今ではトマト農家として法人化も果たし、山田さんとともに農業経営を行っています。

美大生からトマト農家に
大学卒業後、起業するにあたり資金が乏しかったので、給付金や助成金など、よりサポートの手厚い業種を探しました。そして新規参入者への補助や制度が充実していると感じた農業に決めました。場所は山田さんが岐阜県出身だったことから、岐阜県にしました。
 農業について右も左も分からなかったので、まずは岐阜県農業大学校で行われていた社会人研修に参加して農業の基礎、用語や作型、地域ごとに適した作物が何かを学びました。作物については、岐阜で作るならイチゴかトマトが新規参入しやすいことを知りました。
イチゴは大きな初期投資が必要となるので厳しく、トマトについては夏秋と冬春という二つの作型があり、冬春トマトを作る為には頑丈なビニールハウスや冬季の暖房代など投資金額が大きくなるので、より自然に近くコストのかからない夏秋トマトを作ろうと決めました。営農地は就農希望者に対する支援が充実していて担当者が親切に対応してくれたことから下呂市に決めました。国の「農業次世代人材投資事業」を活用して下呂市内の農家でトマト栽培を2年間学び平成30年に独立しました。
初年度は栽培面積16アールで始めました。10アール当たり10t収穫できれば上出来で8tあたりが平均と言われていましたが、初年度から14tの収穫に成功しました。この頃から新しい品種に変わって作り易くなったことも関係していると思います。その後も安定して14tの収量を維持することができました。

株式会社を立ち上げて
 令和5年の7月に山田さんと法人化し「株式会社トマトの丘」を立ち上げました。山田さんが社長で私が副社長、パートさんが常勤と非常勤を合わせて約10人という体制です。作付面積も就農当初は私と山田さん2人の農地を合わせて37アールでしたが、現在は1ヘクタールと約2.7倍まで広くなりました。
 就農後、徐々にパートさんを雇って"人を使う"という仕事が増えました。小さいお子さんがいる主婦の方や老後の体力維持のために働きたい方、休日だけ働きたいダブルワーク希望の方など、求められる働き方は様々あります。できるだけ本人の希望する働き方で働いてもらい、お子さんの体調不良など急な欠勤にも対応しています。栽培面積に対する人員数より多くの方に働いてもらい、欠勤が出てもフォローし合える環境にし、それでも出た不足を自分たちで補うようにしています。
また、パートさんの仕事内容についても、複数の選択肢があるような農場を目指しています。トマト栽培は手先の器用さや作業スピードが求められますが、ほうれん草や玉ねぎなど作物の種類を増やせば自分に向いた農作業が選べるようになります。それぞれのパートさんの働きやすい勤務時間や作業内容を叶えられる様な環境を作ることが大切だと考えています。今は収穫したトマトのほとんどをJAに出荷していますが、規格外のトマトを無人の直売所で販売したり、トマトジュースを作ったりもしているので、生産物の直販や加工品の販売といった仕事も大きくできれば、さらに色々な人が働ける職場になると思います。地元の人が「トマトの丘」で働きたいと思ってもらえるような農園にしたいですね。

農業という働き方
 農業の魅力は、自分の裁量次第で時間の使い方が比較的自由になることです。作物の成長段階によって忙しい時期もありますが、頑張って早めに作業を片付けたり、明日にまわしたりして時間を捻出することもできます。体を動かす仕事なので休日はのんびりと休息をし、雑草を食べてもらうために飼っているヤギと遊んだり、地元の人気ケーキ店に出かけたりします。過酷なイメージを持たれやすい農業ですが、面積や植え方次第で仕事と生活とのバランスを自分で決められる魅力的な仕事だと思っています。

一歩一歩、夢を実現
 ここ下呂市は有名な温泉もある観光地なので、将来は自分たちの農園で観光農園もできるようにしたいと考えています。観光客をたくさん呼び込み、より多くの雇用を生み出し、今まで手厚くサポートしてくれた下呂市の活性化に繋がれば嬉しく思います。今後も地域の方と手を取り合って「トマトの丘」を大きくしていきたいです。