岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

夫と始めた小さな会社で開発したのは、
街にちらばるQRコードを使った
独自の地域活性化の仕組み。
これを使い、地域の持続的な発展に貢献する。


株式会社かけはし 代表取締役
今川 理恵(いまがわ りえ)さん(大垣市)

【2024年9月 2日更新】

株式会社かけはしは、QRコードを読み取るだけで、読み取った先のWEBページを保存・整理し、共有も行える独自のサービス「かけはしメモリー」を開発。近年はこれを活用し、地域が抱える課題を「無理なく」解決することで、豊かな時間の創出を目指しています。会社はまだまだスタートアップの段階。今川理恵さんは、夫の崇司さんと一緒に会社を盛り上げるため、営業や宣伝活動に尽力しています。

夫婦で起業

 株式会社かけはしは、当時、公務員だった私が夫と立ち上げた小さな法人です。私は、産休中に自由に使える時間が多かったため、中小企業診断士の資格を取得しました。ちょうどその頃夫がQRコードを使った新たなビジネスプランを検討しており、結果的に復職せず、共同で会社を立ち上げることになりました。
 新たなビジネスのはじめの一歩は、QRコードを使った新しいブックマークシステムです。これは、スマホでQRコードを読み取って、情報をクラウド上に保存するシステムで、チラシなど、手に取った紙の情報を簡単に管理できる便利なツールです。これを「かけはしメモリー」と名付けました。「紙の削減」は大きなテーマですが、単に紙を無くすのではなく、「紙の在り方を変える」ことが必要と考えており、そのための最初の仕組みとして提供しています。


さまざまな賞を受賞

かけはしメモリーは、2017年「ITものづくり等推進支援事業費補助金事業」に採択され、同年「起業家万博東海地区ビジネスプラン発表会」で「トーマツ賞」を受賞しました。2022年7月に正式サービスを開始し、2023年には岐阜県の「技術活用型スタートアップ支援事業プログラム」にも採択されました。 
2019年12月には、かけはしメモリーの仕組みを応用し、関ケ原観光協会が開設した「関ケ原ファンクラブ」の「武将札ラリー」を開始しました。これは、関ケ原ファンクラブの入り口にもなっており、訪れた方々が町内にある交流館で買い物をすると、関ケ原の合戦に挑んだ武将の情報が記載された「武将札」がもらえるという企画です。武将札にはQRコードが印刷されていて、読み込むと、ポイント(石高・軍資金)とともにスタンプがたまり、集めていくと、ランクアップをして称号などがもらえる仕組みです。札の裏面は関ケ原合戦図屏風の一部になっており、すべての札を集めて並べると屏風ができ上がるという仕掛けも施しました。デジタル技術による情報取得の利便性と、アナログアイテムのカードを収集する楽しさを掛け合わせています。
最初はスタンプラリー機能の提案のみでしたが、夫が特許を取得したQRコードを利用した仕組みは、非常に柔軟で拡張性が高く、QRコードだけで、さまざまな用途に利用可能にできているため、地域の事業に関わらせていただくうちに、少しずつ用途を広げていくことができました。ITは「業務効率化の用途に使われるもの」という認識が多いですが、効率化だけでなく「楽しさを演出する」ことを意識しながら作成しています。必要なのは来訪者に対して「そこだけにしかない価値」を感じていただき、継続的に訪れていただけるような仕組みづくりをすることです。まだまだ実現したいアイデアやビジョンがたくさんあります。今後は、今まで蓄積してきた経験や課題をもとに、解りやすい形にしながら、持続的に地域のお役に立てる仕組みを提供していきます。


イベントを大変革

 岐阜県東白川村では、毎年5月に「つちのこフェスタ」が開かれています。人口2000人ほどの小さな村に4000人が詰めかける人気のイベントです。近年では大量の違法駐車、受付の混乱などが発生し、参加者だけでなく、村人からもクレームが出てスタッフが疲弊する等オーバーツーリズムの問題が発生していたため、イベントを運営する会社からの依頼を受けて、つちのこフェスタの受付システムを再構築することになりました。
 まずは、参加者に事前登録と、駐車場の予約をオンライン上で済ませてもらい、参加証としてバーコードを発行しました。駐車場として使われたのは学校の校庭や体育館の駐車場などです。そこにPCを設置し、受付可能にすることで、駐車場や会場の予約、受付状況を可視化するとともに、スピーディに処理できるようにしました。
 加えて当日は、駐車場から会場周辺にスタンプラリー用のQRコードを設置し、それらを読み取ると、関ケ原ファンクラブ同様、集めたスタンプの数によりランクアップするという仕組みも導入しました。その他、デジタル抽選券も取得できるなど、他の仕掛けも導入しました。この仕掛けは来年度も利用されることになっており、当日の楽しみだけでなく、参加者と地域の持続的な関係性へとつながっていきます。このようにオーバーツーリズムを解消する方法は、東白川村の例だけでなく、ほかの地域にも転用できるのではないかと考えています。

PRをもっと強化

 会社における私の主な役割は、かけはしメモリーと関連するプロジェクトのPRです。会社が若く、サービス開始から日が浅いため、広く知っていただく必要があります。特に、自治体の町おこしや課題解決に関する成果を強調してPRすることが重要です。
 2023年の秋、初めて県外の大きな展示会に出展しました。こうした場では、会社案内などのチラシや冊子を配布するのが通例ですが、会社案内として武将札のような名刺大のカードを配布し、そこに印刷されたQRコードを読み取ってもらって、会社の情報をご覧いただくようにしました。実績紹介として武将札や、以前配布したSAKE札等を展示したところ、最新のデジタル情報や技術が集まる場で、カードというアナログアイテムが逆に目立つ結果となり、自治体関係者だけでなく、多くの企業から注目していただくことができました。
 有難いことにかけはしメモリーは、今までに様々な賞をいただいたことで、客観的にも可能性を秘めたシステムだと認められました。今後はいかにこれらをPRしていくかが大きなカギだと思っています。2023年には、作成・印刷・保存・配布・廃棄など、紙の配布物にまつわる手間やコストを激減できるデジタルツール「かけはしBiz」を開発しました。サブスクでのサービス提供になっており、この拡販も大きなミッションだと捉えています。