「山に入っている時が一番楽しいですね」と話す村瀬美紀さん。母から継いだ生花店と山の保全活動、竹林整備、グリーンツーリズムとパワフルに活動中です。「みたけのええもん認定」を受けた「和草のおくりもの~にこぐさのおくりもの〜」についても訊きました。
自然豊かな御嵩町で環境保全、人と動植物が共存できる里山を作っていきたい
私の母は三姉妹で30年ほど前に花屋を開業しました。20年ほど前に店名を花すずからGreen River 〜 nature flower 〜 へと変更。4店舗あったお店も母や叔母が歳を重ねたことで、徐々に生花店を閉めていくことを考えていたなか、2022年に私が乳がんと診断されました。病気もあり「実店舗は辞め時だろう」と考え、今は完全予約制でお花をお届けしています。
花、山と自然は大好きな一方で生花店はどうしても廃棄する生花が多く心苦しい思いがずっとありました。生花を活けたり、飾ったりする人も減り、このまま花屋を続けても大変だと思いました。
だったら夢を叶えたい!二十歳の頃に思い描いた山が欲しい!を実現したいと思ったのです。それは自然を残し動物たちが安心していられる場所があったらという想いからです。
魅力にはまった山の保全活動
生花店を完全予約制に切り替え、同時に地元の御嵩町で空き家を探していたところ、今の場所に出会えました。病気、生花店を閉めようとした転機と同じタイミングが重なりました。
グリーンリバーは山に囲まれた自然いっぱいの場所です。その場所を「和草の里〜にこぐさのさと〜」と名づけました。2022年は野草の勉強や野草散策イベントなどに沢山参加したり、企画していく中で、「やっぱり自分がやりたかったのはこれだ!」と夢中になりました。正直野草のことはあまりわからないまま始めましたが、知らない植物を見つけると、すぐに調べることの繰り返し。楽しくてあっという間に時間は過ぎてしまいます。
2020年アロマのイベントに参加し、そこで知ったのがハーブボール。その中に入っている葉っぱは御嵩町に沢山ある!その植物それぞれに効能があることを知り、保全活動で草刈りして終わりではなく、その草を再利用でき、地域循環ができる点に惹かれました。
保全活動から生まれる「和草のおくりもの」
ハーブボールは乾燥させた野草などの葉を布で包み丸めたもの。水で濡らしてから蒸し器や電子レンジなどで温め、肩などに当ててほぐすマッサージボール。香りにも癒されます。ハーブボールに興味を持った私はハーブボールアドバイザーの資格を取り、ハーブボールで施術できるセラピストの資格も取得しました。ハーブボールは和草の玉〜にこぐさのたま〜として販売しております。
蒸すのは大変な面もあるため、和草の玉はお風呂にそのまま入れてバスボールとしても使えます。水に濡らさないでそのままの状態のものを枕元に置くことで、その香りで落ち着いて眠れるという反響もありました。
2023年、御嵩町の「みたけのええもん」に「和草のおくりもの」として認定。和草のおくりものシリーズは、山の保全活動で取れる植物を材料にしています。草刈りをして一枚一枚の葉を、丁寧に水洗いして風通しの良いところで陰干しし、ゆっくり乾燥させることでより強い香りを残せます。
将来的には和草のおくりものシリーズが定着して、地域の皆さんに仕事を手伝ってもらえて、雇用をできる場所になれたらと。
シニア世代から山について学ぶ日々
山について、私にいろいろと教えてくれるのは御嵩町の地域の皆さん。特にシニア世代は知識豊富、保全活動の作業も丁寧です。御嵩町の保全活動に取り組む「水土里(みどり)隊」で活動中。山の保全草刈りや薪を切ったり、炭を作ったりと先輩隊員に教えてもらいながら、山で作業をしています。年配の男性が多いものの、少しずつ女性の割合が増加しています。
グリーンリバーは御嵩町の謡坂地区にある中山道の石畳を上がってきたところにあり、県の農林漁業体験施設に登録されています。海外の観光客もよく歩いています。中山道をもっと知ってもらいたいと思い、毎月1回、中山道勉強会を開催しています。地元の方に歴史を話してもらい、町内外の人の交流が生まれています。
また、花屋の方は私と同じように親世代から生花店を引き継いだ女性3人が集まり「F3(エフスリー)」という名前で活動を始めました。国内の「花離れ」が深刻とされていますが、ワークショップやイベント、あおき式園芸手法などでお花の教室を通じて、見て、触って、飾る喜びも知ってもらえたらと考えています。
そして、今はNPO法人竹林救援隊に入隊し竹を学び、御嵩町で『美竹の志〜みたけのこころ〜』として竹林整備を始めました。きっかけは中山道沿いの竹藪が荒れているのを整備したいという思いからです。整備した竹を炭にしたり、竹を使ったもので御嵩町をアピールできる商品を考え中です。他に野草・竹・花などの植物を使ったワークショップで沢山の人に自然の良さを知ってもらいたいです。人と動植物が共存でき、安全に暮らせる里山作りを目指してこれから活動していくのが楽しみです。