岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

「もっと学びたい」と
スリランカから留学生として来日
土木・建築分野の仕事で活躍中
いつか故郷に役立つために


株式会社三栄コンサルタント 設計第2部
Withana Vethma(ウィターナ・ヴェスマ)さん(岐阜市)

【2024年9月 5日更新】

スリランカから来日して10年以上。流暢な日本語で取材に応えてくださったウィターナ・ヴェスマさん。岐阜市の株式会社三栄コンサルタントに勤務して主に道路、橋、河川の設計、点検を担当しています。ドローンを駆使しての災害ハザードマップ製作など、新技術(DX推進)を駆使して活躍中です!

スリランカで手に入らない勉強がしたい

スリランカ出身で、2012年4月に来日しました。スリランカでの高等教育を終えたものの、「もっと勉強を重ねたい」という想いが芽生えたからです。21歳の時に日本で学べる奨学金制度を利用して、東京外国語大学で1年間日本語を学びました。1年後に改めて、自分の希望分野を選択できる制度だったため名古屋大学の環境土木・建築学科に入学しました。
名古屋大学卒業後、減災館で働いたこともあり、ずっと建築分野、なかでも耐震技術に興味がありました。スリランカで学べない知識・技術を知りたいという思いで来日したためです。スリランカはほとんど地震が発生しない国で、現地では建造物に対する耐震技術という考えが希薄です。ただ、この先起きないとは限らない。そんな想いから耐震技術を学んでいくなかで、私の興味はやがて道路、橋、河川といった公共インフラ事業の設計へと移りました。

ドローンを使った橋、河川の設計・点検

 大学を卒業後、東京の不動産会社で働いた経験もあります。本来は建築、設計に携わりたかったのですが、外国語が話せるということで、主に海外の顧客対応を担当しました。1年弱勤務したのち、希望していた設計に携われるということから2020年、岐阜市の三栄コンサルタントに入社しました。
 社内で取り組んでいることは新技術をいかに橋、河川点検で活用できるかを考えること。たとえば橋、河川点検ではドローンでの撮影は欠かせません。入社後、ドローンを飛ばす資格となる「無人航空機操縦技能」の免許を取りました。ドローンに測量用レーザースキャナーを搭載することで、撮影したものを高精度3次元データとして使えます。測量用ですから、すぐに地点と地点を結ぶ距離も把握できますし、もちろん橋の裏側といった簡単に人が立ち入れない場所の撮影もできます。デスクワークだけでなく、時にはヘルメットを被り安全面に配慮して、河川に出向くこともあります。

講師として高校生に新技術を紹介

2022年、「一般社団法人GCCA(岐阜県建設コンサルタンツ協会)」が行う技術発表会に参加しました。そこでは仕事で携わった河川についての研究「水制工と落差工」について発表しました。私のような海外出身者が発表するのは2例目だそうで、すごく緊張しました。でも、会社のみんなが応援してくれて、私の発表予定の言葉もいろいろと考えてくれて感謝しています。発表は上手くできたと自信を持っていて、自分にとっても最高の成功体験だと思っています。
また、郡上市支社がある縁から、郡上市雇用対策協議会が主催する「郡上市高校企業ガイダンス」に講師として参加しました。郡上市内の高校1年生を対象に携わっている新技術(DX推進)について知ってもらおうと、スマートフォンで教室内を撮影して、すぐにパソコン上で高精度3次元データとして高校生に見てもらいました。話すだけではなく、実際の画像を見ていただいたことでみんなが興味を持ってくれました。アンケートには「海外の人に測量の新技術を教えてもらえて興味が湧いた」というものもあり、やってよかったと思いました。社内では今後、県内の大学生、高校生に向け、会社や仕事について知ってもらう場を設けようという動きもあります。

GIS(地理情報システム)を使った防災地図

 現在、一番力を入れて取り組んでいる業務が岐阜県内の行政機関から依頼を受けて行っている、GIS(地理情報システム)を使った「ため池ハザードマップ」の制作です。ため池が豪雨や地震で決壊してしまった場合、溢れた水はどの方向へと流れ、どれほどの水量が何分後に到達するかを地図に落とし込んだ防災マップです。
考えられる浸水地域、浸水の深さを知ってもらい防災に役立ててもらうものですが、これほど広大な防災地図作りは初めての経験。制作するなかで、住民の方にとって読みやすい文字の大きさ、書体を考える大切さを実感しています。私たちは河川についても勉強している専門家ですが住民の皆さんは決してそうではありません。地図を見て、危険な場所をいかに早く認識してもらえるかに重きを置いて作っています。
 私が興味を持った土木技術、設計の分野は新技術が急速に広まっていて、こんなに興味が持てる仕事に就けると思っていませんでした。まだまだ日本で仕事と勉強をしていきますが、いつか知識や技術がスリランカの役に立てばいいなという想いもあります。