岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

郡上の農産品を使い
郡上の特産品を作る
地元の生産者と二人三脚で
永続的な農業と雇用の創出を進めます


株式会社プラムナチュール 代表取締役
尾藤 恵里(びとう えり)さん(郡上市)

【2025年10月 8日更新】

尾藤恵里さんが代表取締役を務める株式会社プラムナチュールでは、昔ながらの製法にこだわった梅干や干し柿を中心に、地元の農産物を使った特産品の製造・販売を行っています。また、農業に関心のある人と地元農家とをつなぎ、遊休農地や後継者の問題に少しでも役立ちたいと取り組んでいます。

農業の振興と特産品の創出
全ては農業所得の向上と地域雇用の創出を目指した市の政策が始まりでした。農家に梅や柿の栽培を奨励し、加工所で梅干や干し柿にして販売するというものです。私はその政策に共感して、特産物振興センターの加工部で一から技術を学びました。
始めは収穫量が少なくて不足分は他から仕入れていましたが、200kgしかなかった収穫量も数年後には10tまで増え、生産量に見合った販売先もどんどん開拓して、作った梅干をその年で売り切るだけの販路を確保しました。
道の駅や高速道路のパーキングエリアはもちろん、各地のイベントにも出店して売り上げも右肩上がりで伸びてきたのですが、特産物振興センターが道の駅に変わるタイミングでこの事業にストップがかかりました。

撤退から再起と発展へ
売り上げも徐々に伸びていましたし、農家と生産組合も立ち上げて取り組んできたのですが、2年後に遂に加工部が廃止となりました。でも、このまま終わりにする訳にはいかないと、大きな借金をして私ともう1人で設備も在庫も全て買い取り、他のスタッフと共に自分たちの会社を立ち上げました。
先行きに不安を抱いていた農家の方たちも応援してくれて、私たちも中断していた新規開拓営業を再開しました。その後も農家と収穫量や品質の改善を続けて建物も増改築した結果、収穫量も増えて22tまで漬けられるようになり、全ての梅を地元産でまかなう目標もほぼ達成となりました。柿の収穫量も当初は100個や200個程度でしたが、今では1万個2万個にまで増え、干し柿は地元産100%を達成しています。

こだわり続けるために
おばあちゃんが家で作るような昔ながらの製法と、無添加、無着色にこだわっています。漬けた後に塩抜きや味付けをしないので、梅の栄養をしっかり残して保存料も使わない梅干が出来上がります。柿は一つひとつ手作業で丁寧に皮をむいて干し柿にします。市長が出張の手土産として購入してくださるなど、だんだんと郡上の特産品として定着してきた手ごたえを感じています。
製法だけでなく地元産を使う事にもこだわっているのですが、昨今の気候変動は収穫量への影響も大きく、今年の梅は例年の半分しか穫れませんでした。不足した年は他から仕入れていたのですが、今年は全国的に不作でどこからも仕入れる事ができませんでした。幸い過去3年ほどは豊作で多めに漬けていたので、その在庫で今年は何とか乗り越えましたが、来年も不作が続くとお手上げです。反対に柿は豊作でしたが、干し柿は梅干のように保存がきかないので、凶作に備えて取っておくことが出来ません。気候に影響されず安定した収穫をあげられるようにする事が課題となってきました。

明日に向かって
農家の後継者不足も深刻な問題で、取引のある生産者さんの中にも立派な梅の木があるのに継ぐ人がいない農家があります。地元産ではなく他所の梅を使うようになったら、地元の農産物で特産品を作るという思いからズレてしまいます。そこで農業に関心を持ってもらおうと、若い人たちに農園の管理を依頼したり梅の無農薬栽培に取り組んでもらったりしています。また、定年した世代にも農業で年金+αの収入や生きがいを手にしてもらえる取り組みをしています。
梅や柿の他にも、農家の皆さんが作った色々な作物や地域の伝統的な食品を、私たちの販路で都会に紹介して販売しています。農家の収入が増え、農業をやってみようという人が増え、地域の特産品が増えれば、農業の活性化と雇用の創出が実現します。
会社も娘が手伝ってくれるようになり後継者問題も解決しそうです。従業員も増えて地域の雇用にも微力ながら貢献できていると思います。始めた時の思いを忘れずに、これからも生産者である農家さんと二人三脚で走り続けます!