白川町にてラオンジェナを運営する、服部充気さん。有機栽培のお米を使った湿式米粉や有機玄米100%のスナック菓子「かっか」の製造・販売、白川えごま搾油所での加工業務を行っています。安心安全な食品を届けるため、原材料や製造工程にもこだわっています。
お米は有機認証を取得
2011年から夫婦でお米の栽培をしています。白川町は2024年に有機農業を推進する「オーガニックビレッジ宣言」をしており、有機栽培をされている農家さんが多いです。私たちは栽培時のこだわりがパッと見ただけでお客さんに伝わるよう、有機認証を取得しています。
栽培したお米は組合に納めるのですが、毎年納める量は決められているため、当初は作柄がよいとお米が余っていました。せっかく栽培したお米をたくさんの人に食べてもらうにはどうしたらよいかと考え、米粉への加工を思いつきました。現在では組合への納品のほかに、お米の直接販売・米粉への加工・菓子への加工と広く行っています。
湿式米粉を全国へ
日本ではお米をそのまま粉に加工する乾式米粉が一般的ですが、韓国では水でふやかしたお米を潰して製造する湿式米粉も使われています。韓国の伝統のお餅は湿式米粉で作られていて、とてもよく伸びるのが特徴です。日本にはないものを販売したいと思っていたので、前職の調理師免許を活かして夫の故郷である韓国の伝統米菓子を作って販売しようと。田んぼの作業がない冬場の時期に、家族で韓国に2ヵ月間滞在し、米菓子の本格的な作り方を学びました。
日本に戻り、事業の準備を進めていたところ、ラオンジェナのホームページを見た在日韓国人の方から「湿式米粉は販売されていますか?」と問い合わせがありました。韓国のお餅には欠かせない湿式米粉ですが、日本で販売しているところはほとんどありません。うちでは湿式米粉を製造する専用の機械を導入していたため、その電話をきっかけに在日韓国人の方へ湿式米粉を販売するように。韓国料理の教室を開く先生が紹介してくださるなど口コミでどんどん広がり、お客さんが増えて行きました。お米農家が自分で栽培したお米を米粉に加工しているという製造過程のわかりやすさや、夫の故郷が韓国だということも、信頼していただけたのかなと思います。湿式米粉を求めるお客さんの90%は韓国にルーツを持つ方で、今では全国に発送を行っています。
安心安全なおやつを
新型コロナウイルス感染症が落ち着いたタイミングで、以前からやりたかった、有機玄米100%のスナック菓子「かっか」の製造をはじめました。「かっか」を作ろうと思ったきっかけは、子どもたちに素材の味を感じられるおやつを食べてほしいと思ったからです。私には子どもが3人いるのですが、長女の育児中から、市販のおやつはおいしいけど甘さが強い、かといって手作りのおやつを作る時間はない、とモヤモヤしていました。
その後、次女が1歳のときに、韓国にて砂糖・食塩不使用の玄米スナックを発見。私も作りたいと思い、韓国の工場へ見学に行くなどして研究・開発を進めました。事業計画を作り、国の6次産業化の総合事業計画の認定を受け、2023年に試作・製造・販売がスタートしました。
「かっか」は口溶けがとてもよいので、生後6ヵ月くらいの赤ちゃんから食べられます。玄米で作られているため、罪悪感なく与えられるのも魅力の1つです。
「かっか」はマルシェなどで販売しているのですが、口コミで広がり、いつもたくさんのお客さんが買いにきてくれます。今後は、苺など果物の粉末をコーティングしたり野菜を練り込んだりして、味わいのバリエーションを増やしていきたいです。
厳選したえごまを油に
2017年からはお米の加工事業に加えて、白川えごま搾油所でえごま油を作る加工業務を引き継ぎました。お客さんが持ってきたえごまの実を厳選し、専用の機械で圧力をかけて油を搾ります。
加工業務をするうえで重要なのは、えごまの品質チェックです。えごまは品質の維持が難しく、すぐに酸化したりカビが生えたりします。油にできる状態かを見極めるのは、なかなか大変な作業です。うちでは農家さんから一般家庭まで誰でもえごまを持ち込めますが、正しい保存方法を知らないという方も多くいます。来年により良いえごま油を作れるよう、洗い方や干す期間など保存方法のアドバイスもしています。


