恵那市の仲田菜那さんは地元の農業高校から岐阜県農業大学校に進んだのち、指導農業士による研修を経てトマト農家として就農しました。20アールの畑を2通りの栽培方法で使い分け、安定した収穫量を確保するための努力と工夫を重ねてきました。今では女性農業者のロールモデルとして県のホームページや冊子に紹介されたり、岐阜県青年農業士の認定を受けて母校の高校や大学校で講演を行ったりもしています。
トマトに導かれて
地元の県立恵那農業高等学校から岐阜県農業大学校に進学し、指導農業士の下で約1年の研修を受けたのち、トマト農家として起業しました。
実家には田んぼや畑があったので、子どもの頃から親や祖父の野菜作りを見てきました。いつしか農業に興味を持ち始め、もっと詳しく学びたいと思い、地元の農業高校に進学しました。高校時代にインターンシップでトマト農家へ行ったとき、地元がトマトの産地だと初めて知りました。体を動かす実習が自分には合っていたので、高校卒業後は、授業の半分が実習と聞き農業大学校に入学しました。はじめは農家になりたいとまでは考えていなくて、何か農業に関わる仕事がしたいなと漠然と思う程度でしたが、明智のトマト農家で1か月間の実習を受けた2年生のとき、自分の地元である明智でトマト農家になりたいと思うようになり、農家になる方法を本格的に調べ始めました。卒業後に研修を受けてから就農という道筋が良いとアドバイスをもらい、紹介してもらった研修先が高校のインターンシップで指導して頂いたトマト農家さんでした。今ではこの指導農業士の梅本さんが私のトマトの師匠です。
走りだせば何とかなる
農地は祖父に相談して実家の土地を20アール分けてもらいましたが、学生からすぐに農業へ飛び込んだので資金の蓄えがありませんでした。そこで、就農に向けた準備資金や就農後の経営開始資金などを支援してくれる国や市町村の制度をフル活用!ビニールハウスは分割で返済する農協の制度を利用して建てました。
初めは12アール分のハウスで土耕栽培をスタートさせました。数年後に夫が合流するタイミングで20アールに増設すると同時に、この地域で導入され始めた3S栽培を取り入れました。3S栽培とは専用の培養土を入れたポットに苗を植え、水を点滴のように与える溶液栽培のような技術です。土耕栽培は間隔を空けて苗を植えるのですが、3S栽培はポットをぎっしり並べられるので、土耕栽培と同じ面積でより多くの苗を育てることができます。でも、苗の本数が増えれば仕事量も増えますし、成長に合わせた手入れも土耕栽培より手間がかかるのですが、働き手が夫と私の2人になるので対応できると考えて決断しました。品質が均一な培養土を使い、栽培方法もマニュアル化されているので、安定した収穫量が期待できること、与える肥料の量と収穫量も数値化されたデータがあるので予想が立てやすいこと、そういった3S栽培の特徴も導入に踏み切れた理由です。今は土耕栽培と3S栽培を各10アールの計20アールでトマトを育てています。
大変なこともあるけれど
冬はトマトが終わって収入が無くなるので、私はレストランでアルバイトを、夫は寒天作りで有名な隣町へ働きに行っています。通年で安定した収入を得るために夏と冬で別々の作物を育てている農家さんも多く、私は椎茸栽培を始めてみようと考えています。私の農業の師匠である梅本さんも栽培しているので助言をいただけるのも椎茸を選んだ理由です。
両親は私が農業をやりたいと伝えたとき、賛成はしてくれましたが大変だし儲からないと忠告してくれました。「やりたいからやる!」という私を止める人もいました。農業を目指す若い人たちに対して、軌道に乗るまでの投資と、収入や通年の収支などを具体的なモデルで示すことができれば、安心して農業を始められるんじゃないかと思います。
農業の魅力を伝えたい
今の気分転換は帰宅後のゲームですが、以前は地元の中学校で卓球のコーチをしていました。出産したばかりなので今はお休みしています。生徒たちに指導しながら一緒に体を動かしていると息抜きや気分転換にもなるので、子どもが大きくなったら復帰したいと考えています。
数年前から、岐阜県青年農業士の認定を受けて農業に関する様々な情報を発信する活動も行っています。農業高校や農業大学校で自分の経験を語る機会をいただくこともあるので、私の考える農業の魅力「元気で自由な楽しい農業」を伝えていければと思っています。


