岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

新型コロナウイルス感染症で
誰もが「菌」の存在を気にするようになった時代
糀に出会い、発酵食のすばらしさを
知ったいま、「美味しい」を分かち合える
仕事ができることに感謝


米花bake 発酵パンクリエイター
小島 絵美(こじま えみ)さん(羽島市)

【2025年10月10日更新】

小島絵美さんは、生後7か月で発症したお子さんのアレルギーがきっかけで、本当に体に良い食材を追い求め独学で栄養について学ぶうち、発酵食と出会い糀の力に感動。コロナ禍で、除菌・滅菌と菌から逃げる暮らしが当たり前の世の中でも、菌のおかげで美味しくなる発酵食を届けたいと、米糀で発酵させたこだわりのパンの製造と販売を開始。発酵パンクリエイターとして活動をスタートさせました。

劇的な生活の変化
 デパートのパン屋でパン職人として働いていたことがあり、大手になるとどうしても製造が流れ作業になりジレンマを感じていました。その後結婚し、長女を出産。長女は軽いアレルギーがあり、炊飯器で出来る米粉のパンなどアレルギー対策を取り入れた食生活をこころがけていました。4年後長男が生まれましたが、生後7か月の時、重度のアトピー性皮膚炎を発症しました。娘のアレルギーとは全然違って、米、大豆、小麦、落花生など、あらゆるものがNG食材に。お医者様に「この子はこのままだと死んでしまうよ」と言われ緊急入院。それまで、ネットで見た食事などの子育て方法をまるごと実践していて、よかれと思ってやってきたのにと自分を責めました。現在の息子の様子をちゃんと見ないで、将来ばかり気にしていたと気づいてからは、これから私が出来ることは、ちゃんと目の前の子どもに食で寄り添うことだと意識するように。
そこからご縁がたくさんつながり、その中に「発酵食」を教えてくださる方、腸内環境など食育としての発酵について詳しい方、栄養カウンセラーの先生など、いろんな方との出会いがあり、聞いた話すべて挑戦してみることにしました。そこで、食はバランスが不可欠であると学び発酵食を実践していくうち、髪の毛も抜け爪もなくなるほどのアレルギーだった息子に、1週間、3週間、2か月というスパンで劇的な改善が見られるようになりました。
授乳中だったので私自身も食事制限を始め、お味噌や調味料もできる限り自作するようになったら、結果として自分も健康的に体質改善が叶いました。息子のアレルギーも、幼稚園に通い始める頃には改善。パン作りはアレルギーが酷かったのでやめていたのですが、私の中でいちばん発酵を手で感じやすかったのがパンで、さらに出会えたのが糀で発酵させる天然酵母パン。家族や友人に食べてもらっているうち、発酵食の良さをもっと世の中に伝えたいと思うように。
自分の生活と照らし合わせたとき、糀の手入れは時間がかかるし、これを商売にするとなれば手間だし、という躊躇はありました。でも日常生活の中に発酵があるおかげで、現在の私が穏やかでいられて、子どもに対して寄り添う私自身が心地よい、そういう「気持ちよさ」とはみんなが求め知りたいことではないか。コロナ禍で人との関係、人からの学びなどいろいろ遮断された中で、私にできることを広げていきたいと思ったのが活動の始まりです。
決心してから、個人でパンを製造販売している主婦の方や、パン教室のご紹介をいただき、人との出会いで私も「よし!やろう!」という勇気を得られます。父がかつて畑として使っていた土地に小さな工房兼店舗を建て、土地からもパワーをもらっています。

パン作りの面白さ
現在は発酵パンクリエイターとして週に1度の店頭販売とマルシェ出店がメインです。毎日同じ時間に仕込んでも同じ時間に出来上がることは一度もないし、理想どおりふくらまないことも日常茶飯事ですが、毎回違う仕上がりを良さと考えていて、それが面白いです。糀を使って発酵させる作業は温度管理がとても難しいので夏はお休みして、そういう期間に発酵調味料の料理教室や、コミュニティセンターで講座を開くこともあります。
今後はネット販売も力を入れようと考えています。グルテンフリー、ましてや無農薬の玄米を使用しているパンは少なく、全国から定期的に購入したいと問合せもあり、ちゃんとしたネットの販売サイトを立ち上げて販路を拡大してやっていきたいです。パンが大好きなのに病気などで食べられなくなった方からの「あなたの作ったパンなら食べられる」という声や、ここでしか買えないから長く続けてほしいという常連さんの応援も大事にしたいです。
素材もオーガニックと地産地消にこだわって探し、自分で足を運んで材料を買いに行き、パンに使うケチャップやマヨネーズも手作りです。こだわっているからこそ伝えたい思いなどはラッピングに込め、チラシや名刺など印刷物に至るまで、すべてひとりで請け負っています。そういう意味では大変かもしれません。ですが、ひとりでもたくさんの方においしくたべてほしくて、出来ることは自分でやろうと心をこめて作り続けています。

大切な人と過ごす時間
 家族は夫、小学6年生の娘、小学2年生の息子の4人家族です。夫は、息子や自身の健康状態の変化など発酵食の効果を体感しているためか私の取り組みをとても応援してくれていて、起業の際もポジティブな言葉で背中を押してくれました。マルシェの出店が重なる週末は、子どもの面倒や、出店準備の手伝いなど全面サポートしてくれて感謝しています。
 家族がいて、私の暮らしあってこそのパン屋ですので、公私の分け隔てはありません。3年間で約200種類以上の気まぐれパンを作ってきましたが、どれも基本的に、私が食べたいから。家のキッチンに立つとどうしても仕事について考えてしまい、時にはしんどくなるときもありますが、家族でキャンプにいくのが趣味で、山や川でキャンプ料理をすると本当に無心になれます。家族みんなで楽しめて、つながりを感じられる貴重な時間は、大きな気分転換になっています。それと、会いたい人に会うことが一番の息抜き。パンの発酵中で出かけられない日も多いので、友だちでも、尊敬する人でも、講演会でも、人に会って刺激を受けたりリラックスしたりこの人の話が聞きたい!と思ったら会いに行きます。

目の前の事を大切に
大きな夢として、私は伝えたい気持ちが強いけれど、全世界へとなると食だけでは難しいので、ことばで伝えられるように本の出版をしてみたいです。レシピなのか自叙伝なのかは決めていませんが、自分の中の根本にある思いを届けたいと思っています。
一番だいじにしている言葉は「今、ここに」。パンづくりは工程が重要です。前もって用意して次にやることを考えながら作っていきますが、まず目の前に集中するとより良いものが出来る。これは子育てにも同じことがいえました。今、ここに集中すればおのずと道は開ける、そんな思いを抱いています。